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大西洋横断ヨットレース「ミニトランザット」について学ぼう!

 みなさん、フランスの若者が挑戦するヨットレースをご存知でしょうか? 「ミニトランザット」はフランスからスペイン領カナリア諸島を経由してカリブ海まで、ひとりで大西洋を横断するヨットレースです。その距離は4050マイル(約7500km)。日本からハワイまで行くよりもはるか遠く、日本からオーストラリア・シドニーまでとほぼ同等。距離感はつかみにくいでしょうが、たったひとりで4050マイルを走ることの難しさは想像できるのではないでしょうか。ヨットレースであり、冒険航海でもあるミニトランザットは地球規模のヨットレースなのです。(BHM編集部)

大西洋横断ヨットレース・ミニトランザットのスタート(2021年カナリア諸島)。この大会には結果はもちろんのこと、安全に大西洋を横断できる一人前の外洋セーラーを育てるという意味もあります。前回大会は2021年に開催されました

◎ミニトランザット2023のコース
第1レグ
日程:2023年9月後半スタート
スタート:レ・サーブル・ドロンヌ(仏)
フィニッシュ:カナリア諸島 サンタ・クルス・デ・ラ・パルマ
距離:1350マイル

第2レグ
日程:2023年11月前半スタート
スタート:カナリア諸島 サンタ・クルス・デ・ラ・パルマ
フィニッシュ:カリブ海グアドループ・サンフランソワ
距離:2700マイル
※日程詳細は後日発表されます

コースはフランスからカナリア諸島までを第1レグ、カナリア諸島からカリブ海までを第2レグです。天候によってスタートを遅らせる場合があり(選手の安全を最優先するため)スケジュールはフレキシブルです

 出場選手の年齢層は幅広く20歳代の若者も多く出場しています。ジュニア出身のセーラーから社会人になってセーリングを覚えたセーラーまでさまざまで、日本人では1999年大会に岩名地 正さんが日本人初出場を果たし、2019年大会には、現在〈MILAI〉で世界一周レースに挑戦している鈴木晶友さんが出場しました。

 挑戦する目的はそれぞれありますが、フランスでは大西洋横断を経験したのちにフィガロやクラス40というクラスにステップアップ。その先には世界一周ヴァンデ・グローブ(IMOCA)という夢の目標があり、最終的には世界一周最短記録を狙うマキシトライマランが頂点となるのが、フランス外洋ひとり乗りレースの図式があります。ミニトランザットは外洋ひとり乗りレースの第一歩となるヨットレースです。

 また、ミニトランザットはクラルルールにも特長があります。出場する船は全長6.50メートル(21フィート)の小型クルーザー/ミニ6.50。外洋レースに特化しているとはいえ、エンジン搭載は許可されず、地図が表示されるGPS機器は使用禁止(数字のみ可)、通信機器はVHFのみ。インマルサットなど衛星通信禁止。天気予報はラジオ(仏語・英語)から情報を得るというアナログなヨットレースです。

スタート地のレ・サーブル・ドロンヌ。さん橋には所狭しとミニが並びます。レースビレッジはスタート前から開放され観客や子どもたちが見学に来ます
ミニトランザットの種目は「プロトタイプ」「シリーズ」に分けられます。シリーズは制限のあるプロダクション艇、プロトタイプは制限なしのオリジナル艇。プロトタイプにはフォイル艇も登場しています

◎ミニトランザットに出場するためにはマイルを稼がなければならない

 2年に一度開催されるミニトランザットは人気のヨットレースで出場枠(上限80艇)が設けられています。そして出場するにはいくつかの出場条件をクリアして資格を得なければなりません。その条件とは、

・過去5年以内でレースに出場し、500マイルレースを含む合計1500マイルを走っていること(うち2レースは一人乗りでなければならない)
・1000マイルの単独無寄港航海を経験しなければならない
・ミニトランザット開催年のレースに出なければならない
・ミニトランザット開催年に進水した船は出場が認められる
・ヨーロッパ以外の国にワイルドカードで出場が与えられる

 などの条件があります。出場は今年12月の時点で資格を得た順番で決まる、いわば早いもの勝ちです。スタートの2年以上前から「エントリーのための戦い」が始まっているのが実際で、特に開催1年前のいまが激戦期間となっています。もし、資格を得るのが遅れてしまったらどうなるのか? 待機リストに回されて出場できない可能性も出てきます。

DMG MORI セーリングチームはプロトタイプ2艇体制で活動しています。スキッパー候補は三瓶笙暉古とロール・ギャレー(仏・27歳。上写真)の2名。ロール選手はすでに1000マイルを完了し、現在開催されている「レサーブル・アゾレス・レサーブル」(往復2600マイル)に出場しています

◎三瓶笙暉古、ただいま1000マイル単独航海に挑戦中!

 ミニトランザットを目指すDMG MORI セーリングチームも他チームと同様に、経験を積みながら出場資格を得るため積極的にレースに出る必要があります。

 8月5日、三瓶笙暉古(26歳。さんぺい・ふぇでりこ)が1000マイルの単独無寄港航海に出発しました。これは出場条件のひとつをクリアするためで、必ず乗り越えなければならい第一関門。今年7月、1000マイルに挑戦しましたが、バウスプリットの破損、ハリヤードトラブル等により一時寄港したためクリアできず、今回は再チャレンジです。※三瓶は日本選手ですがフランスで活動しているため欧州以外の選手に与えられるワイルドカードは使えません。

 1000マイルチャレンジの位置情報はトラッキングで確認できます。コースはフランス・ロリアンから北上。イギリス西方からアイルランドのファストネットロック周辺で折り返して南下。フランス・ラロシェル周辺までくだってロリアンまで戻る1000マイル。レースではないので、完全にひとりだけの単独航海になり、その間に六分儀を使って位置を測ったり(天測)、ログブックの記入、チャレンジ後はGPSデータや写真の提出が求められます。三瓶選手の帰港は6日後になる予定です。

1000マイルチャレンジに挑戦している三瓶笙暉古。DMG MORI セーリングアカデミーでスキッパーとして経験を積みミニトランザット出場を目指します。1000マイル終了後はバルセロナで開催される大会に出場しレースマイルを獲得する予定
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