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フロリダ州サラソタ少年死亡事故に学ぶキルコードの着用

 昨年11月、米フロリダ州サラソタで起きたユースセーラーの死亡事故をご存知でしょうか。操船者が落水して無人となったボートが選手を襲い、練習中の選手2人が負傷。病院に運ばれましたが1人の少年(10歳)が亡くなりました。(BHM編集部)

エンジンキーとセットになっていることが多いキルコード(キルスイッチ)。これをつけていないと大惨事につながります

 報道記事によると事故は土曜日の練習中におこりました。全長8フィートのディンギーで沈をした少年の救助に向かった18歳の若者(コーチ)が、近づいた際に足を滑らせて落水。落ちるときに身体の一部がスロットルにふれて前進に入れてしまい、無人のボート(20ft)が走り出してしまいました。

 無人ボートは止まる術なく暴走。ボートはまわりのディンギーを襲い、エンジンのプロペラに巻き込まれた2人の少年が被害にあいました。セーラーのみなさんなら、この現場がどれほど怖いか想像できるでしょう。

 2月4日、このボート事故を受けて、フロリダ州で26フィート未満のボートにはキルコード(エンジンの安全遮断装置)着用を義務付ける法律を採用することが発表されました。また、アメリカでは7つの州で同様の法律が施行されていて、2021年には米国沿岸警備隊でも採用されるとのことです。

 アメリカでは2015年以降、ボート操船者が船外に落水した報告は95件あり、そのうち79件が負傷、または死亡事故につながっています。

 キルコードについては、これまでバルクヘッドマガジンでも記事にしてきました。日本のボート運転に関する資格や規則、罰則は海外と違っています。ボート免許の必要のない国もあれば、イギリスのように複数の資格が必要な場合もあります。

 これは全国を取材してきた編集長の個人的な感覚ですが、日本ではキルコードの着用率は高くないように思います。ライフジャケットと違いキルコードの着用は法律で義務付けられていません。

 でも、海にいる時間の多いセーラーに「規則にないから良いでしょう」という理屈は通りません。わたしたちは危険か安全かを刻々と変わる海の状況を踏まえて判断しなくてはならないし、陸上と違って命と直結する場面が多くあるからです。

 コーチ、保護者、選手、セーリング関係のみなさん、ぜひキルコードの着用を。運転するとき身体のどこかにコードをつける、というそれほどむずかしいことではないのですから。

RYA(ロイヤル・ヨッティング・アソシエーション)によるキルコード着用推奨ビデオ。無人のボートは旋回し続けるため、落水者と衝突する可能性があります
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