ヨットレース繁盛記。パールレース前編
日本を代表するロングレース「第54回パールレース」が、7月26〜28日に開催されました。繁盛記のスミコ姉さんは、ナビゲーターとしてガイアチームに合流。〈ガイア〉は2012年大会の総合優勝チームで、スミコ姉さんはチームを優勝へ導いたナビゲーターでもあるのです。〈ガイア〉の時間軸に沿ってパールレースレポートをお届けします!(BHM編集部)
今回の出演者はガイアチームの面々。初島ダブルハンド(女子ペア組)で一緒に乗ったマッキーも一緒です。写真はスタート直前、志摩ヨットハーバーにて
第54回 パールレース・前編
夏!と言えばパールレースです。三重県五ヶ所湾口をスタートして、伊豆諸島の利島をまわり、神奈川県の江の島のまで180マイル。雷雨、突風、満点の星空、夜明けのずぶ濡れハイクアウト、強烈な追い潮と、今年も色々なドラマがあったけど、元気に江の島にフィニッシュしました!(文・写真/石丸寿美子)
7月26日(金)、朝9:30、スタート海面の五ヶ所湾口に向かいます。今年もまた、あんまり(というか全く)役に立たないのに、葉山マリーナヨットクラブの僚艇〈ガイア〉(Sydney36 CR)に乗せていただきます。
11:00、南東の風の中、53艇がスタートしました。まずは、7.2マイル先の最初のウェイポイント(編注:目的地)まで軽風の上りです。今年は神ノ島の外をまわらなくてよいので、最短コースは布施田水道の南側の岩礁エリアを抜けるルートです。スタートしてしばらくすると、徐々に風が後ろにまわり始め、目標ルートの入口に向けられるようになってきました。
状況に応じて通り道は4パターン。オンデッキで避険線(編注:危険物を避けるライン)を書き込んだ手書きルート図と、ハンディGPSとをにらめっこしながら、最短ルートの入口にアプローチします。
チャート上は水面下にも浅いところが結構あるのに、何となく雰囲気でその上を通過しているような艇もいて、ローカルナレッジ乏しくチキンなわたしにとってはかなりヒヤヒヤです。変な汗をかきながらCOG106度(編注:COG=Course Over Ground。対地コース)、上りいっぱいでなんとか通過。ふー、これでへっぽこナビの仕事は半分終わったようなものです。
第2レグは利島まで東へひたすら走る124マイルです。沖出しのコースをとる先行艇が良い走りをしているようなので、沖の風を取りに行くことにします。
午後になり日が傾くにつれ、太陽の動きを追うようにお約束の南西風がしっかりと入ってきました。ラムラインより3マイル程南に出しているけれど、この先しばらくは、ほぼラムラインと平行に走れそうな感じです。ウホ!っとジェネカーで頭を出していきたいところです。
18:00のロールコールでは、先行した大型艇らしき数艇を除き、第2グループは団子状態の横並びのようです。その後、再び風が振れ、ジェネカーでは上りきれなくなりました。
このまま行くとラムラインをクロスして北側に出ますが、周囲を見る限り岸はあまり風が良くないようです。南側のポジションをキープするのが得策と考え、ジブにチェンジして再び上り気味に沖出しを開始。
26日午前11時スタート!photo by 第54回パールレース実行委員会
水深の浅い危ない場所を避けるため、あらかじめ海図に安全なコースを引いておくのです。そしてGPS画面とにらめっこ
雷ゴロゴロ。そして突風
あたりが薄暗くなり始めた頃、雷がゴロゴロ鳴って雲行きが怪しくなりました。そのうち雨とともに360度あちこちで稲妻が光りはじめます。コワイ〜。
不気味な気配にビクビクしながら、あれ? ヒューっと冷たい風が来たね、なんて言っていた矢先に突風に見舞われます。ひゃー! セールがバサバサ暴れるけれど、どっちにもはらみません。ダウンバーストみたいに上から下りてきている感じ。なす術なくブローチング1回。
ドタバタしたけれど、突風はそう長くは続きませんでした。その後、風がまっっっったく定まらなくなり、悲しい角度でしばらく右往左往する羽目に。
0:00、御前崎の手前、掛川の経度線あたりでロールコール。依然艇団の中だけど、少しだけばらけてきたようで、〈ガイア〉もまずまずの位置に付けているようです(でもこれは、あとでロールコール情報がプロットされたグーグル・アースを見てわかったことで、夜の間、同じクラスのライバル艇の動向はイマイチ把握できていませんでした)。
深夜、御前崎沖の位置関係はこんな感じでした。ガイアはいい位置につけてます
流れ星シャーにうっとり。ロマンなのですよ!
長ーい夜の間、一時的に北東の風が吹いた時間帯がありました。やっぱり海の上でも陸風って爽やかなんですねぇ。サラサラした乾いたそよ風が最高に気持ちよく、落っこちてきそうな満点の星空の下を、夜光虫をかき分けながら進みます。
時々、流れ星がシャーっと斜めに下りて行きます。寒くて眠くて何かとツラいことが多い外洋レースだけど、こんなに広い海の上をヨットに乗って風を受けて進んでいくなんて、やっぱり、なんていうか、ロマンっていうか、日常のちっぽけな出来事なんてどうでもよくなって、自分はもっと大きい人間でいうよう、なんて思ったりして。わはは。
その後、空白の時間を経て(寝たとも言う)、風はおおむね220度くらいで安定し、追い潮をガッツリもらい、SOG9〜10ノット(編注:SOG=Speed Over Ground。対地速度)のジェネカーセーリングでぐいぐい走ります。一時ラムラインから8マイル近く以上沖に出ていましたが、落とせる時に落として行くということでヨシとします!
夜が明ける頃、徐々に風があがってきて、気づけばジブで上り一杯になりました。ラムラインの南にいた艇団はこれで大きくゲインしたはずです。
風速はどんどん上がり、あっという間に28ノットくらいまで吹き上がり、今回初のフルハイクになりました。早朝から波をかぶってビッチョビチョです! どうせ濡れちゃったし、寒くないしで、もう開き直って歯を見せながらスーパーハイクアウトです!(ずぶ濡れのまま後編へ続く!)
◎ヨットレース繁盛記
(16)ティンバーランドレガッタ・熱海レース
(15)初島ダブルハンドヨットレース・後編
(14)初島ダブルハンドヨットレース・前編
(13)「小田切杯」ガテン系セーリング?
(12)「SHUGYOKU CUP」毛根から脂汗が噴出
(11)大島レース・後編
(10)大島レース・前編
(9)「京急カップ」春の珍事なのです
(8)「テーザースプリングレガッタ」春テーザーに久々参戦
(7)「SportsCode CUP」ブローチング祭りだ!
(6)「MUSTO CUP」春っていいよね!
(5)「HMYC会長杯」春の嵐で退散です
(4)「SAILRACING CUP」クラブレースで悲鳴
(3)「Sailors for the Sea Cup Clean Regatta」心臓が剛毛で覆われる
(2)「新春烏帽子岩レガッタ」烏帽子岩へゆく!
(1)新連載「ヨットレース繁盛記」スタート!
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