英伝統のロレックス・ファストネットレースに白石康次郎が出場!
来る7月22日、イギリスで伝統あるヨットレースのひとつ「第50回 ロレックス・ファストネットレース」が開催されます。1925年に始まったこの大会は、ワイト島カウズをスタート、強い潮流で知られるソレント海峡を抜けてイギリス西方からアイルランド沖のファストネットロックを回航してフランス・シェルブールまで、695マイルを競う外洋ヨットレースです。(BHM編集部)
英国では「このレースを完走することが、船乗りになるための通過点」と言われるほどのヨットレースで、記念すべき50回大会には449艇、約30カ国から約3000人が出場します。
出場する船のサイズは33から72フィートまで。373艇が出場するIRCをはじめ、ウルティム、IMOCA、オーシャンフィフティ、クラス40などのクラスがあり、29艇のビッグフリートとなるIMOCA(二人乗り)には、白石康次郎/ティエリー・デュプレ・ドゥヴォルサン(DMG MORI セーリングチーム)が出場します。
昨年末から今年6月までボートのリフィット(改造)をおこなっていた〈DMG MORI Global One〉には重要な一戦であり、白石選手にとっても約8カ月ぶりとなるレース出場です。ファストネットレースを控えた白石選手にバルクヘッドマガジン編集長が質問しました。
◎DMG MORI Global Oneのリフィットについて白石康次郎へ一問一答
編集長:〈DMG MORI Global One〉はずいぶん長い間リフィット作業をしていましたね。海に出られない期間も長かったようですが、ひさびさにセーリングしでみてどうでしたか?
白石:感覚的に「いいな」と感じています。細かいことは、データを集めて検証していくことになるけれど、今回のリフィットの目的は安定性能の向上。スピードの速い過激な船になったわけではなく、広い風域で平均的なスピードがアップするための改造ができました。
編集長:今回のリフィットした部分は大きく分けて2つ。フォイルとバウの改造と聞きました。まずフォイルはどう変わったんですか?
白石:これまでのフォイルは二世代前のものです。形そのものが違うけれど、古いタイプは面積が小さく直線的な形でした。これだと安定性に欠けてしまう。実は、DMG森精機の鳥人間コンテスト優勝チームに翼(フォイル)のことを相談しました。翼は真横になるのがいちばん浮力が得られる。でも、浮力は不安定になる。ある程度、カーブしていた方がいい。いまヴァンデを目指すほかの船も同じようなフォイルの形になってきています。
編集長:つまり、DMG MORI Global Oneのフォイルは、実際にセーリングしていてどんな特長があるのでしょう?
白石:ものすごく変化する、というものではないけれど、以前よりもより低速で浮き上がるようになって走りが安定する。あたらしいフォイルで船のパフォーマンスはあがることは間違いありません。
編集長:バウはどのように改造したんでしょうか?
白石:分かりやすく言うと、、、バウの前から4メートル部分をぶった切り、あたらしい設計のバウを取り付けました。バウ形状を変更した理由は、これまでダウンウインドで波を越えるのが難しく、波に突っ込んでしまうことがあった。最新のクラス40のようにボリュームを持たせることで、波に突っ込みにくく、乗り越えやすくなる
編集長:最新の外洋艇は波を乗り越えるため、バウがスコウタイプになっていますよね。フォイルも最新になり、DMG MORI Global Oneの走りに期待します。ファストネットレース、がんばってください!
【こぼれ話】白石康次郎は世界一周オーシャンレースをどう見た?
「オーシャンレースであれだけ船が壊れてしまうと、チームの負担が大きすぎる。次回もIMOCAを採用するようだけれど、このままで参加チームが増えるかどうかは疑問。あとスケジュールの問題もある。ヴァンデは4年に一度開催されるけれど、その合間にオーシャンレースが計画されている。ほかに、IMOCAはルートデュラム、ジャックヴァーブル、ニューヨーク・ヴァンデがあり、ヴァンデ・アークティックも組み込まれ、ほかにマイレージ(ヴァンデ・グローブ出場資格)を稼ぐためのレースに出場しなくてはならない。オーシャンレースに出場した船はヴァンデの出場権を与える、とか出場したくなるアイデアを出さないと、参加艇を増やすのは難しいのではないか」(白石)
- ロレックス・ファストネットレース(公式)https://www.rolexfastnetrace.com/en/