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ミニトランザットは夢のある挑戦です。女性スキッパー、ロール・ギャレー・インタビュー

 今年9月にスタートする一人乗り大西洋横断ヨットレース「ミニトランザット」。小型クルーザーMINI6.50による冒険航海は、若い世代に人気のフランスのオフショアレースです。この大会にDMG MORI セーリングアカデミーに所属する三瓶笙暉古、ロール・ギャレーの2名が出場します。バルクヘッドマガジン編集長がロール・ギャレー選手をインタビューしました。(BHM編集部)

Laure Galley(ロール・ギャレー)。フランス・オレー出身。28歳。フランスのベルフォール・モンベリヤール工科大学で機械工学とデザインの学位を取得し、造船技師として働いた後、DMG MORI セーリングアカデミー研修生に選抜。インショアとオフショアの両方でセーリング経験のあるセーラーです

編集長:ロール選手は、昨年からMINI6.50のレースに出て好成績を残し、ミニトランザット優勝候補のひとりにあげられています。ロール選手はいつセーリングを始めたんですか?

ロール:両親がセーリングをしていたので、わたしは生まれて8カ月でヨットに乗っていたようです。歩く前から、ですね(笑)。オプティミスト級にも乗りましたが、正直にいうとあまり好きじゃなかった。しばらく乗らない時期もありましたが、お父さんに誘われて週末にクルージングするのが好きでした。セーリングの基本はお父さんに学んだんです。

編集長:たのしいセーリングですね。オフショアレースに興味を持ち始めたのはいつごろから?

ロール:大学でメカニカル・エンジニアを学んで、イギリスやニュージーランドに留学していたときヨットレースに出るようになりました。卒業後、フランス・マルセイユの造船会社で働くようになり、そこでJ/70やJ/80、それにオフショアレースにも出るようになりました。地中海のヨットレースです。ジラリア(サントロペからジェノバ)にも出場してオフショアにも興味を持つようになったんです。

編集長:ミニトランザットを意識するようになったのはその頃ですか?

ロール:わたしにはフィガロ(Solitaire du Figaro。ベネトウ・フィガロ3による一人乗り外洋レース。数々の有名オフショアセーラーを輩出)に出場したいという夢があります。その頃にDMG MORI セーリングアカデミーの募集を見て、オフショアヨットレースを学ぶチャンスだと思ったんです。それに、ロリアン(DMG MORI セーリングチームの本拠地)は、生まれ故郷のブルターニュへ戻るにも好都合でした。

編集長:フィガロによるヨットレースは、日本でほとんど知られていません。どんなところに魅力を感じているんですか?

ロール:わたしはワンデザイン・ボートが好きなんです。フィガロはワンデザインボートでおこなうヨットレースで、セッティングが細かくできるし、それを追求していくのが好き。レースに出場するスキルで戦えるのが性に合っていると思います。これはエンジニアの考え方かも。ミニトランザットにも通じるところがあります。

艇番1048〈DMG MORI SAILING ACADEMY 2〉のロール・ギャレー。三瓶笙暉古と同型プロトタイプでミニトランザットへ挑戦します

編集長:去年の4月に船(DMG MORI SAILING ACADEMY 2)が進水して、その直後のレース「PLASTIMO LORIENT MINI 2022」「Trophee Marie-Agnes Peron」で立て続けに優勝しました。その理由は?

ロール:ひとつは船がとても良い仕上がりでスピードがあるということ。セッティングは勉強することばかりなのですが、スピードがあるのでほかの船においていかれることがありません。それと、事前のレース準備をしっかりしていることだと思います。レースの前に戦略を立てて、どうやって戦うのかをイメージしています。戦略については、まだまだ勉強中なのですが。

編集長:ミニトランザット本番では優勝を狙っていますか?

ロール:わたしのなかでミニトランザットに出場することは、単に大西洋を横断することではなくなっています。できれば優勝したいし、周囲の期待にも応えたいです。

編集長:9月のスタートまでに課題にしているのはどんなことでしょう?

ロール:いまあたらしいセールを制作しています。セールメーカーと設計段階から相談しているところです。また、これまでは数日間の短いレースでしたが、ミニトランザットは1カ月も掛かるヨットレースです。荷物の収納なども考えないといけません。それに船をもっと熟知したいし、気象についても研修しています。やることはたくさんあります。

編集長:MINI6.50のグループで女性は男性に比べたら少ない存在です。そのなかで活動することについて、どのように感じていますか?

ロール:まわりからは女性が活躍することでよろこんでもらえていますが、わたしとしては男女の関係なく、ひとりのスキッパーとして前を走り、先にフィニッシュしたいという気持ちでいます。セーリングはフィジカルが必要ですが、それだけではありません。別の強さを発揮できるすばらしいスポーツですから。

編集長:フランスの女性セーラーとして、クラリスの問題をどう感じていましたか? ※クラリス・クレイマー(2020-01ヴァンデ・グローブで女性1位。女性単独世界一周モノハル世界記録を樹立)が、妊娠を機にメインスポンサーから解雇されたことで社会問題に発展。現在は、あらたなスポンサーを見つけて2024年ヴァンデ・グローブ出場を目指して活動しています。

ロール:情報が公になる前にロリアンではうわさになっていました。クラリスが解雇されることは信じたくないことでした。すべての理由は当事者にしか分かりませんが、妊娠したことで解雇されるのは残念です。ただ、あたらしいプロジェクトが動き出していて、それが見つかって良かったと思います。

編集長:日本ではロール選手のようにオフショアレースで世界に挑戦するセーラーは少ないのが現状です。フランスでは女性のこうした活動は普通のことなんでしょうか?

ロール:いえ、そんなことありません。同世代から見たら普通のことでないと思います(笑)。ただ、ロリアンに来てからは、選手もショアクルーにも女性はたくさんいて、男性、女性の違いはありません。成績が良いことで注目されて、いろいろ声をかけてもらえるのはすばらしいことです。ミニトランザット、そしてオフショアレースは夢のある挑戦だと思います。

編集長:ありがとうございました。ミニトランザット本番の活躍をたのしみにしています。

フィニッシュ後のロール・ギャレー選手とお母さん。「家族は皆セーラーなのでわたしの活動を応援してくれています。セーリングの苦労も分かってくれて、家族の話題になってもらえるのがうれしいです」

◎ロール・ギャレー戦歴
2022年
4月 PLASTIMO LORIENT MINI 1位/17艇
6月 Trophee Marie-Agnes Peron 1位/14艇
6月 MINI FASTNET 6位/19艇
7月 LES SABLES – LES ACORES – LES SABLES 1st leg 5位/12艇
8月 LES SABLES – LES ACORES – LES SABLES 2st leg 7位/12艇
2023年
4月 PLASTIMO LORIENT MINI 4位/25艇
4月 PORNICHET SELECT 2023 2位/29艇
6月 Trophee Marie-Agnes Peron 2位/25艇
6月 MINI FASTNET 5位/30艇

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