最短記録更新、45日間世界一周を達成
※サンケイビジネスアイ紙で連載していたコラムを紹介します。記事は2012年1月時点のニュースです。
45日の世界一周記録を達成したBanque Populaire。フランスの銀行がバックアップしている。撮影 B.Stichelbaut / BPCE
コラム(76)
最短記録更新、45日間世界一周を達成
1872年、フランスの小説家ジュール・ヴェルヌは、鉄道、蒸気船、帆船などを使って世界一周に挑戦する「八十日間世界一周」を書いた。主人公のフィリアス・フォッグが、友人との賭けをすることになり、たった80日間で世界一周を試みる冒険物語だ。
この物語をもとに企画された「ジュール・ヴェルヌトロフィー」というヨットイベントがある。これは相手と競うヨットレースではなく、世界一周記録への挑戦。ヨットの大きさ、種類、乗員数を問わず、風の力だけで何日間で世界一周できるかに挑戦する冒険企画である。
2012年1月、ジュール・ヴェルヌトロフィーに挑戦していたフランスの〈Banque Populaire〉(リュイック・ペイロン艇長)が世界記録を更新した。記録は45日間13時間42分53秒。これまでの記録を保持していた〈Groupama 3〉の記録を約3日間も短縮する成功を遂げた。
1993年にはじまるジュール・ヴェルヌトロフィーは、当初、80日という小説の記録を破ることが目標とされた。いまでは物語の記録が大きく塗り替えられ、いずれ80日間の半分で世界一周をしてしまう日も近いだろう。しかも、動力にはエンジンを使わず、自然エネルギーだけで走るのである。
世界一周のコースは、スタート地点のフランス・ウエサン島の灯台とイギリスのリザード岬を結んだ仮想ラインを出発して、大西洋を南下。南アフリカの喜望峰をまわってインド洋へ。最短距離で走るため、南氷洋を可能な限り南下してオーストラリアから太平洋へ向かう。南アメリカ・チリの南端、ホーン岬を回航してから大西洋を北上。スタート地点に戻り、ここがゴールとなって世界一周となる。〈Banque Populaire〉の走った総距離は2万9002マイル。平均速度は26.51ノットだった。
世界一周最短記録はヨットの進化とともに塗り替えられているが、今も昔も同じく、世界一周航海は過酷なものだ。2008年に挑戦した〈Groupama 3〉はニュージーランド沖で転覆事故の惨事に見舞われた。このジュール・ヴェルヌトロフィーだけでなく、ヨットレースは高速化が進んでいる。
ボルボオーシャン世界一周レースでは、スタートしてすぐにマストが折れ、船体破損するなど3チームがレースを中断することになった。昨年おこなわれたイギリスの外洋レース、ファストネットレースでは、ヨットのバランスを保つキール(竜骨)が抜け落ちて180度転覆するという事故が起きている。
事故の理由はさまざまあるが、ヨットの軽量化、高速化に相反する構造上の問題は否定できないだろう。ヨットが速くなるほど危険度は高くなる。それでも、スピードや記録を求めてしまうのは、セーラーの性分なのかもしれない。(2012.1 文/平井淳一)
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