同志社大、早稲田大が個人戦勝利! 全日本インカレはいかに?
11月1日、蒲郡・豊田自動織機 海陽ヨットハーバーで開催された「2021年度全日本学生ヨット個人選手権 兼 2021年全日本シングルハンドレガッタ」最終日は、レース数が足りず大会が成立していないため、あせりと緊張感を持って始まりました。(BHM編集部)
軽風が予報された最終日は、スタート予定を1時間早め、さらに終了時刻を遅らせることで、可能な限りのレースを実施したいという試みです。海上は当初風が弱く、長時間の風待ちになりそうな気配でしたが……。午前中に予想よりも早い時間で東から西へ風がまわり、沖(三河湾南西)から風がそよそよと入ってくるのが見え始めました。弱めながらもこの風が続き、最終日は3レースを終えることができました。
470級は最終日に順位の変動がありました。前日トップの小木曽/海老沢(慶應大)が第3レースで順位を落とし、優勝争いは小柳/久保田(日本大)、平井/富士元(同志社大)、藤原/竹澤(関西学院大)に絞られてきました。
勝負は最終レースに持ち越され、平井/富士元(同志社大)がスタートから飛び出して第1上マークをトップ回航。この順位をフィニッシュまで守り、全日本インカレ個人戦初優勝を飾りました。平井は2019年大会で1位(田中美紗樹/新井健神 早稲田大)と同点で準優勝となり悔しい思いをしましたが、その雪辱を果たしました。
「ぼくたちはどちらかといえば軽量ペア。弱い風が味方してくれました。風のシフトを読めたわけではなく、スタートの部分が大きかったと思います。スタートでうまく前に出られたので、行きたいコースを引きやすかった。大会が始まる前は、他大学との差を気にしていましたが、「十分戦える」自信を持てました」(平井)
クルーの富士元は、高校時代 サッカー部で活躍。大学からセーリングをはじめ、今年からレギュラーとしてレースに出場するようになりました。また、平井がヨットをはじめたのは高校(清風高)に入ってから。3年間クルーを務め、西村宗至朗(早稲田大)と組んでインターハイ優勝、藤原達人(関西学院大)と準優勝を経験。スキッパーをはじめたのは大学に入ってからです。
「スキッパーを始めた頃は、高校時代のペアに追いつきたい、勝ちたいという気持ちでがんばってきました。ぜんぜん実力は達していませんが、今年は最後なのでトコトン行こうと死ぬ気でがんばりました。でも、(優勝の掛かった)最終レース前は吐きそうなほど緊張しました(笑)。優勝できてうれしいです」(平井)
スナイプ級は、前年度全日本インカレで圧勝した早稲田大がパワーを見せつけました。個人戦で1位から3位までを独占、さらに10位以内に4艇が入るという爆発ぶりを発揮しました。優勝戦線は同校対決となり、1年生スキッパーの服部陸太/芝崎鉄平(4年)が追い上げるも、蜂須賀晋之介/河崎元紀には届かず。蜂須賀/河崎が優勝を飾りました。
「基本を忠実に守ることに徹しました。高い場所からスタートしてシフトバックを取りやすくする。アップウインドではロング(タックの長い方)を走りきりやすいポジションで走る。艇を気にするよりも風に合わせて走れば、悪い負け方はしない考え方です。リフトを走ることを優先して、逃げタックせず、がまんして走らせました。今回はがまんの走りばかりでした。風が弱い時はアウトサイドをキープした走りをします。シフトが来れば上位になれますが、そうでない場合も多い。自分が行った海面でトップを取るように心がけました。1上の順位は10番台ぐらいです。そこからの追い上げは、なにかを仕掛けるわけではなく、シフトにあわせた正しいコースを走ること。相手がミスすることで、自分の順位があがるという流れでした」(蜂須賀)
クルーの河崎は、高校時代に陸上部で活躍し、大学からヨット部へ。今年からレースに出場するようになり、蜂須賀の要求に応えるべく練習〜課題〜克服を繰り返していると話しました。
「団体戦へ向けて、チーム間の情報共有を確実にしてコミュニケーションをしっかり取っていきたい。やるべきことを全部やって、最後、気持ちで勝負できるところへ持っていきたい、と考えています」(蜂須賀)
第86回全日本学生ヨット選手権(団体戦)は、個人戦と同じく豊田自動織機 海陽ヨットハーバーで開催されます。日程は次のとおりです。バルクヘッドマガジンは引き続き、現地からレポートします。みなさん、おたのしみに。
第86回全日本学生ヨット選手権
11月3日(水) 受付・計測・主将会議
11月4日(木)10:00 470クラス最初のスタート予告信号。3R予定
11月5日(金)10:00 スタート予告信号。3R予定
11月6日(土)10:00 スタート予告信号。3R予定
11月7日(日)10:00 スタート予告信号。2R予定
※全11レース予定。3レースで大会成立
※1日のレース予定は変更あり
※11月7日は12時1分以降にスタート予告信号なし
◎2021全日本学生ヨット個人選手権 上位成績
470級 参加54艇
1 平井徳輝/富士元進歩(同志社大)26p
2 小柳倫太郎/久保田賢人(日本大)31p
3 藤原達人/竹澤千里(関西学院大)34p
4 木村颯太/青木武斗(中央大)49p
5 倉橋直暉/松本健汰(早稲田大)54p
6 小泉凱皇/田中丸 武/上園田明真海(早稲田大) 66p
スナイプ級 参加54艇
1 蜂須賀晋之介/河崎元紀(早稲田大) 23p
2 服部陸太/芝崎鉄平(早稲田大)35p
3 大久保優輝/川合大貴/鶴岡由梨奈(早稲田大)56p
4 内貴航路朗/篠原璃音/今村晃大(同志社大)58p
5 磯村麟之介/佐藤紘大/佐藤一真(慶應大)59p
6 谷 望/小河寛和/大熊友梨香(立教大)63p
シングルハンド 参加13艇
1 伴 俊弥(日本大)7p
2 若林幸輝(三重大)16p
3 岡村太暉(名古屋大)17p
【コラム】コロナにより地方予選に出場できず。大学4年間、最後の大会
全日本インカレ個人戦が終わり、多くの大学は11月4日から始まる団体戦のため引き続き蒲郡に滞在しています。しかし、この個人戦が大学ヨット部の最後の試合になった選手もいます。
鹿児島大学の浦 哲郎選手は、大学4年間、スナイプ級で活動してきましたが、九州予選を突破できず全日本インカレ個人戦のシングルハンドクラスに出場してきました。最終学年となった今年はコロナにより大学から活動を禁止されたため、団体戦九州予選に出場することもできませんでした。
編集長と浦選手は、彼が海に出られないため練習のひとつとして始めたeSailingを通じて知り合い、毎週のように一緒にレースしていましたが、本人と対面するは初めてです。明るい話しぶりから純粋にセーリングが好きなんだな、という印象を受けました。
海上練習できていないのですから、上の成績を望むことはむずかしいでしょう。それでも蒲郡へ遠征したのは、自分なりのヨット部活動のけじめだったのかもしれません。
今年はコロナのため多くの選手が十分な活動ができませんでした。浦選手と同じような事情でセーリングできずに引退する選手がいたことを改めて思い出されました。また、1999年から続くシングルハンドクラスの意義も別の視点から考えるようになりました。
昨年、今年と、学生選手はコロナにより大きな打撃を受けました。これから立て直しをしなければならないヨット部も多いと思います。現役選手が動き出すのはもちろんですが、OBOGのみなさんも自分の母校を気にかけ、お手伝いしていただけるようお願い申し上げます。
- 2021年度全日本学生ヨット個人選手権https://www.ayf.jp/race/11479
- 全日本インカレ個人戦 トラッキングデータhttps://www.tractrac.com/event-page/event_20210811/2137
- バルクヘッドマガジン・フォトギャラリーhttps://junhirai.photoshelter.com/archive