仮想東京五輪2020。本日470メダルレース最終日
2021年に延期された東京五輪。本当ならいまの時期にオリンピックが開催されていました。開催されるはずだったセーリング競技の日程は7月26〜8月5日。8月5日最終日は、470級男女の決勝メダルレースがおこなわれていました。まぼろしとなった2020年東京五輪で、日本がどんな活躍をしていたのか予想してみます。(BHM編集部)
もし、今年オリンピックがおこなわれていたら、どんなコンディションで大会がおこなわれていたのでしょうか? 今年は梅雨明けが遅く、関東地方は8月1日に梅雨明け宣言が発表されました。前半7日間は曇天・雨、後半5日間が夏空が広がる快晴です。
気象庁が発表した気象データをみると、7月後半の江の島は北東〜南東で軽風中心。天候は典型的な梅雨空で雨、曇り。この値は海上で計測されたものではないので正しい数値といえませんが、28日こそ吹いたものの、そのほかは軽風中心で、この時期には珍しい北東風(陸風)が吹いていました。
8月に入って2日間は、梅雨明けしたにも関わらず北東の軽風が吹き、残り3日は典型的な夏の風で、実際の海は、午後から南風(海風)10〜14ノット入る好条件です。
◎北東の軽風、不安定な状況でおこなわれていた東京五輪
ここから先は、あくまでバルクヘッドマガジン編集長の経験に基づく予想ですが、梅雨時期の前半は風が弱く安定せず、予定通りにレース実施するのは難しかったと考えます。レース開始予定時間は予選で12時スタート、メダルレースは14時30分。予選は予定時刻にレースが始まるのは少なかったのではないでしょうか。
こうした気象条件を加味すると、今年の東京五輪はレース数が少なく、かつ軽量選手、またはライトウインドを得意とする選手がトップ10に連ねていた可能性があります。
また、レース結果に波乱もあったのではないかと予想します。レース数が少なくなれば、逆転の機会も減り、1回の失敗が命取りになるのはご存知のとおり。不安定な北東風(陸風)ではコース変更も頻繁におこなわれるので、レース運営の采配も影響してくるかもしれません。
日本が期待する470級男女はどうなっていたでしょう? もし強風シリーズになっていたら男子はオーストラリア、スペイン、スウェーデン、ギリシア。女子はイギリス、フランス、吉田 愛/吉岡美帆(ベネッセ)らが上位に入る可能性が高い。
しかし、微風を含む軽風シリーズになったとき、まず、オーストラリア、スペイン、スウェーデンは変わらずメダル争いを繰り広げますが、軽風を苦手とするギリシアが落ち、岡田奎樹/外薗潤平(トヨタ自動車東日本)が上位に加わってくるでしょう。
これまで編集長が数々の国際大会を見てきた限りでは、470王者であるオーストラリアが優勝を逃すのは、微軽風シリーズで最終日までにトップにリードを広げられた時だけです。それほど強い。
序盤で勢いつけたなら、風の振れ(シフト)のある軽風域で走る岡田/外薗やスペインが、するりと金メダルを取る可能性も考えられます。もともとスペインは軽風で爆発するチームでした。リオ五輪から東京までの期間に苦手とされた強風域を克服し(日本チームの沖縄・座間味合宿にも参加しました)、確固たる地位を築いています。
女子の場合、強風の予想は簡単ですが、軽風になると混沌としてきます。吉田/吉岡、イギリス、フランスといったベテランチームに、スペインなど若手チームが絡んでくるからです。
これまで吉田/吉岡は、軽風戦で耐え、風が吹き上がったらポイントを稼ぐという戦いが見られてきたので、軽風場面でどう対処できるかが鍵になるでしょう。
また、北東風が吹いた場合、日本にチャンスが巡ってくるとも考えられます。陸風は地形の影響を大きく受けるので、単調な風となる海風とは特長が異なります。江の島で練習を重ね、風の傾向を掴んでいる日本選手に有利に働くのは間違いありません。
いま日本チームは国内練習に時間を費やしています。欧州では各国が集まりトレーニングを始め、地域大会も予定されています。日本は参加できていませんが、逆に海外チームは、オリンピック時期に江の島でセーリングできない、という不利な状況です。そう考えると日本チームしか得られない経験と情報をストックできるいまの状況は、決して悪いわけではありません。
いずれにしてもコロナ禍の非常時です。選手たちは、この先、制約の多い中でトレーニングせざるをえません。1年間の延期は選手の実力が大きく変化するほど長い。来年のオリンピックは、延期された期間、どんな練習をしたのかで決まる、といえるかもしれません。