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ヤンマー・モスワールド【選手紹介】日本モス界の生き字引、2人のシニアセーラー

 5月23〜29日、ジュニアからオリンピック、キールボートセーラーまで、セーリング各界から熱い視線を集める「ヤンマー国際モス級世界選手権」が葉山沖で開催されます。今回は、世界のトップセーラーが集うこの大会で注目を集める、2人の現役日本人シニアセーラーを紹介します。(レポート・写真/西朝子 モスワールド実行委員会)

モスビルダーであり、リペアの達人であり、知識の宝庫でもある古谷元洋選手(72歳)。頼りになる大先輩です。photo by Junichi Hirai

 今やフォイリング艇の代名詞となったモス級。同艇が誕生したのは1928年になります。なんと、今年で米寿(誕生88年)を迎える長寿艇で、ワールド開催は今回で81回を数えます。

 オーストラリア生まれのモスは、全長3.3mと小型で、デザイン制限がゆるいこともあり、速さを追い求めるセーラーたちの様々なアイデアを取り入れながら、独自の進化を遂げてきました。その結果、20世紀の終わりに水中翼を備えたフォイリング艇が登場しました。

 そのモスに乗り続けてまもなく半世紀になるというのが、セールNo.1258の古谷元洋さん(72歳)と、セールNo.3874の橘 直美さん(66歳)です。古谷さんは1975年に日本(沖縄)で初めて開催されたワールドにも出場した、日本モス界の生き字引、橘さんは水中翼艇のモスで初めて飛んだ日本人蛾族(モスセーラー)です。

「最初に飛んだのはいつだったかな? 2000年ぐらいかな? 当時は水中翼のキットが売っていてね、それを買って自分の艇に取り付けて走ったのだよ。今のようにコントローラーなんて付いていないから、飛んだらもうどうしようもない。ウワーっとなっちゃって、着水方法が分からないから、パッとメインを離してドーンと落ちる(笑)という感じ。仲間と一緒に乗って、最初は10m飛んだ!とか、いや俺は100m飛んだ!とか、そんなに飛ぶわけない!とか、そんなレベルだったね」と橘さんは笑います。

「モスの魅力は自分で造れたことかな。全長3.3mだから、六畳もあれば造れた。自分で設計して、自分で造って、自分で乗るなんて、ほかのヨットじゃできないでしょ。しかも昔はベニアの合板で造っていたのだからね。ベニア1枚300円、フネだけなら5000円もあればできたよ。階段の踊り場で造ったとか、部屋の畳を上げて造りながら自分は押し入れで寝た、なんていうのも珍しいことはなかったよ」と話す古谷さんは、今大会も自作艇に構想3年のメカニズム(世界初)をセットして出場する予定です。

「今のモスは常に前から風が来て、ずっとハイクアウトしていないといけないから、とてもトップセーラーと同じ走りはできないよ。だから成績はビリでもいいの」と口を揃える2人。フォイリングモスの洗礼、激しいバウ沈による名誉の負傷も経験済みです。それでもモスに乗り続ける理由があります。

「フォイリングを始めてフッと浮き上がるでしょう。その瞬間にスピードが加速し、ピッチングもローリングもしなくなる。スプレーも浴びない。音もスーッと消える……。あの感覚はほかのヨットじゃ絶対に味わえないよ。麻薬だね。もちろん、ちょうど良い風の時だよ!」と破顔した古谷さんでした。

 老若男女を惹きつける魅惑のモス。全日本選手権は5月21〜22日、世界選手権は23〜29日に葉山沖で開催されます。

国内フォイリング第1号セーラーであり、今も現役モス乗りでもある橘 直美選手。photo by Junichi Hirai
モスの話をしたら止まらなくなる橘選手。改造ブーム、テコ式バングで挑みます。photo by Tomoko Nishi
古谷選手のモスは自作オリジナル。ダガボードケースの位置を調整しています。photo by Tomoko Nishi
ダガーフォイル(フラップの形状)にも注目。普及するプロダクト製マッハ2とは違うアイデアで挑戦です。photo by Tomoko Nishi
葉山町やハーバー等には大会ポスターが掲示されています。期間中は観覧船も出る予定なので、みなさん、ぜひ葉山港へお越しください

◎「ヤンマー国際モス級世界選手権
http://www.mothworlds.org/hayama/

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