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初夏のオークランドで始まる東京オリンピック日本代表選考

 バルクヘッドマガジン編集長は、冬の江の島から初夏の南半球ニュージーランドへ。渡航の目的はオークランドで開催される49er、FX、ナクラ17の東京五輪日本代表選考となる世界選手権を取材するためです。(BHM編集部)


大会会場はオークランドのロイヤル・アカラナ・ヨットクラブ。大会直前にできたばかりの新建物マリンスポーツセンターがメインです

 まずは、日本代表選考について復習してみましょう。今回の選考は、49er、FXは日本代表チームが決定する最終選考。ナクラ17は2回目の選考となります(ナクラの最終選考は来年2月のメルボルン世界選手権です)。

 該当3種目の選考方法はシンプルです。最終選考まで『ポイント』が合算され最も多く獲得したチームが日本代表となります(※同点の場合は世界選手権の順位が上のチームが選ばれます)。現在の獲得ポイントは次のとおりです。

49er男子 第2回選考終了時
1. 高橋レオ/小泉維吹 18p
2. 古谷信玄/八山慎司 7p(11p差)

49erFX女子 第2回選考終了時
1. 山崎アンナ/高野芹奈 23p
2. 波多江慶/板倉広佳 9p(14p差)
— 原田小夜子/永松瀬羅 0p(23p差)
— 松苗 幸希/齊藤由莉 0p(23p差)

ナクラ17男女混合 第1回選考終了時
1. 梶本和歌子/川田貴章 6p
2. 飯束潮吹/畑山絵里 4p(2p差)
— 田中航輝/深沢瑛里 0p(6p差)


49er、FX、ナクラ17の日本代表選考ポイント(9月28日時点)

 世界選手権の最終成績からポイントが与えられ、高い得点を持つ選手が代表に内定します。当然、大会が始まる前の現時点で高いポイントを獲得しているチームが有利なのは言うまでもありません。

 さて、ここで編集長独自の視点による日本代表選考の見どころ、注目点を紹介していきたいと思います。

(1)スタートダッシュ、シリーズ前半の戦いに注目

 五輪系のセーリング競技は、主に予選・決勝(+メダルレース)方式が取られています。予選終了時点の成績で、上位(ゴールド)、下位(シルバー、ブロンズ)に分かれるのですが、49er、FXの場合、上位グループに進めるのは25艇に限定されます。これは470やレーザー等のレースフォーマットと異なる部分です。

 今回FXのエントリーは60艇なので、決勝シリーズでは上位25艇と下位35艇に分かれることになります。参加90艇の49erの決勝シリーズは、上位25艇、下位65艇となり、さらに下位を2分割して34艇(シルバー)、33艇(ブロンズ)に分かれます。

 つまり、ゴールドフリートに進出するのはむずかしく、代表選考の対象国別順位はシルバーフリートへ下がってくると予想されます。日本選手が目指すのはゴールドフリート進出です。

 ただし、現時点で高ポイントを持つ上位の選手が、下位チームより上のフリートに入った場合、下位の選手は逆転が不可能となる可能性があります。レースがはじまり、予選が終了した時点である程度の予想がつけられるかもしれません。

(2)選手のケガ、体調がどこまで選考に影響を与えるか

 ハイパワー、ハイスピードボートゆえにケガがつきものの49er、FX、ナクラ。少なからず全選手が完全体とはいかず、厳しい状況での戦いを強いられている現状があります。

 49erの高橋レオはワールドの数日前におこなわれたオセアニア選手権で相手艇と接触。相手艇のウイングに身体が激突し吹き飛ばされ、肋骨2本を骨折、腎臓を強打する事故がありました。

 また、ナクラ17の梶本和歌子は夏の江の島で、練習中に吹き飛ばされ、腰骨を痛め入院。オークランドで練習再開後に、今度はふくらはぎを痛めるトラブルに見舞われています。

 ほかにも故障を持った選手が多数います。ほかの種目では考えられないような事故が起きるのが、49er、FX、ナクラです。

 健康状態を整えることもチームの実力といえますが、どれほどのパフォーマンスを発揮できるかは、レースが始まってみるまで分かりません。

(3)極端なシナリオ。選考不成立で「再選考」もある?

 複雑になるので先の選考方法に書きませんでしたが、すべてが白紙に戻るシナリオも捨てきれません。これは、49er、FXに限ったことで、本大会で選考が終わらず、来年2月メルボルン世界選手権が最終選考となる可能性も考えられる、ということです。

 全種目共通のハードルとして、代表決定の前提条件に「世界選手権で五輪出場国枠相当の順位」を獲得することがあげられます。つまり、49erはこの世界選手権で国別19カ国以内、FXは21カ国以内、ナクラは19カ国以内に日本チームが入らなければならないのです。

 もし、先の条件を満たせなかった場合は、(49er、FXの)選考大会で得たこれまでのポイントは無効となり、来年2月にメルボルンで開催される世界選手権での仕切り直し一発勝負。国枠を獲得し、日本選手のなかで最上位を取ったチームが日本代表となります。

 実際に編集長が5月に取材したヨーロッパ選手権で、日本選手はゴールドフリートに進むことができませんでした。しかし、五輪出場国枠がシルバーまで下がったことから選考ポイントがついた経緯があります。

 5月ヨーロッパ選手権で南米系のチームが出場していないかったことを踏まえると、ヨーロッパ選手権よりも本大会の方が選手層が厚い。日本は「五輪出場国枠順位」ギリギリのラインで戦うことも考えられます。

 さて、上記3つのポイントは編集長独自の視点ですので、本当に影響があるのか、どのような展開になるのか見当がつきません。ただひとつ言えることは、「最後まで何が起きるのか分からない」のが選考だということ。過去に編集長は、どんでん返しに似た驚きの展開を見てきました。

 オークランド世界選手権は、12月3日から8日までおこなわれます。大会はすべてライブ中継がおこなわれるほどメディアに力を入れていて、速報やノーティスは大会専用アプリを利用してほしいとアナウンスされています。

 みなさん、日本代表選考がどのような展開になるのか、日本チームの応援をよろしくお願いいたします。

◎49er、FX世界選手権
https://49er.org/event/2019-world-championship/
◎ナクラ17世界選手権
https://nacra17.org/events/2019-world-championship/

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