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空を飛ぶ、近未来型セーリング

水中翼を備え、宙に浮かんで高速で走るモス級。驚くほど静かに走り抜けていく。撮影:平井淳一

サンケイビジネスアイ・コラム(42)
空を飛ぶ、近未来型セーリング

セールに風を受け、波を切って水面を滑走するセーリングの概念を覆すヨットがある。蛾のマークが目印のモス級は、水面から浮き上がって走る新タイプのヨットだ。接水部分が極めて少ないため、船に波が当たる音はまったくない。静かに空を飛ぶ、という形容がぴったりである。

ヨットが空を飛ぶ理由は、船体から水中に伸びる水中翼を備えているため。この水中翼は飛行機の翼のように左右に伸び、離着陸時に使われるフラップと同じく可変する。スピードが上がると水流により揚力が生まれ、水中翼のフラップで浮遊を調整するという仕組みだ。浮き上がるために船体は極限まで軽量化され、最新のモス級の重量は30kgを切るものが主流になっている。

水中翼を備えたモス級が公に登場したのは、2000年にオーストラリアで開催された世界選手権でのこと。しかし、世界選手権の結果は画期的な性能と反対に惨敗だった。スピードは圧倒的だったものの、操船がむずかしさから、すぐにバランスを崩して倒れてしまったのだ。結果は悪かったが、空を飛ぶという新しい発想と過激なスタイル、そしてスピードは多くのセーラーを魅了し、モス級は世界に浸透していった。

また、通常のヨットレースは、指定のブイをまわり、フィニッシュ時の着順で競われるコース競技が主流だが、モス級の大会では、コース競技のほかに、GPSで最高速度を競うタイムトライアルもおこなわれている。いかに同じ条件でスピードを競うか、というのもこれまでにはないヨットレースの発想だ。

モス級の世界最高速度は30ノット強(時速55.6キロ)。陸上ではそれほど感じられないが、水の上では恐怖すら感じるスピードである。水中翼を備えて空に飛び立ったモス級は、あらたな時代を開いた。次なる進化で、ヨットの姿はどう変わっていくのか楽しみだ。(2011.5 文/平井淳一)

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