【コラム】プリンセスソフィア杯と日本の表彰セレモニー
バルクヘッドマガジンは、スペイン・パルマ・デ・マヨルカから戻りました。今回取材した「プリンセスソフィア杯」では470級男子で日本が優勝し、編集部は例年以上の充実感を覚えています。欧州の国際大会を取材していて、日本男子が優勝する機会に遭遇したのは初めてのことです。編集長が世界中で持ち歩いている日の丸(国旗)が、現場ではじめて役に立ちました。(BHM編集部)
スピーチのないプリンセスソフィア杯のセレモニー。セレモニー最後の恒例行事は金メダリストだけが壇上に上がっておこなう記念撮影です。photo by Junichi Hirai
バルクヘッドマガジンがほぼ毎年この大会を取材する理由のひとつは、表彰セレモニーにあります。記事でも紹介しているのでご存じの方も多いでしょうが、スペインの建築家、アントニオ・ガウディが手がけたパルマ大聖堂の敷地でおこなわれる、歴史を感じさせる重厚な雰囲気のセレモニーです。
プリンセスソフィア杯で表彰台に上がることは価値のあることです。プレゼンテーターは大会名でもあるソフィア王妃がつとめますが、今年は事情があって来場されず、スペイン首相夫人が代理をつとめました(現地ジャーナリストの話では、スペイン王室の脱税問題が来場されなかった理由とのことです)。
このセレモニーは、会場が会場なだけにおごそかな印象ですが、「勝者を讃える」という表彰式の本質を端的におさえ、シンプルに進行していくさまは、日本のそれと正反対のように感じています。
司会者の「これから表彰セレモニーをはじめます」の言葉の後は、賞と選手名が呼ばれ、プレゼンテーターがトロフィーを手渡すだけ。選手は壇上へあがり、プレゼンテーターと挨拶をかわし、トロフィーを掲げた写真を撮って壇上を去っていきます。それだけ、です。来賓のスピーチはなし。王妃でさえセレモニーでスピーチすることはありません。
昨年、日本のある表彰式でこんなことがありました。セレモニーの最中「バタン!」という大きな音が聞こえました。式に出席していた選手がその場で倒れてしまったのです。ちょうど(何人目か忘れましたが)来賓スピーチの最中でした。真夏の午後、気温は高く、立っているだけで汗が出る炎天下でおこなわれた表彰式です。
みなさんも、同じような体験をされたことがあるのではないでしょうか。よくある日本式のセレモニーだと思います。人が倒れてしまう状況が正しいのか、と問われれば、多くの方が「正しくない」と意見されることと想像します。
では、この時、人が倒れなかったら? これが日本式の表彰セレモニーであり、伝統が受け継がれ次年度も同じ状況でおこなわれるでしょう。いや「人が倒れるなんて昔からよくあることだよ」と、このスタイルは変わらないかもしれません。
時として、スピーチが大会にとって重要で必要なことは理解できます。しかし、表彰式のスピーチはナンバーワンのプライオリティーではないように思えます。来賓や主催者側のスピーチが必要なら、別の場面で用意すればいいし、内容が記憶に残りにくい表彰式で話すより、効果的な方法も考えられる。
表彰式で大切なのは、勝者を讃えることではないでしょうか。ヨットレースは他の競技と違って後片付けも多く、レース後、引越しのように大掛かりな作業が必要になることも少なくありません。短時間でシンプル、それでも積極的に勝者を讃えるセレモニー。これがヨットレースの正しい表彰式のような気がします。毎年、プリンセスソフィア杯を取材していて考えることです。
バルクヘッドマガジン・フォトギャラリーに「第48回プリンセスソフィア杯」の写真をアップしました
◎バルクヘッドマガジン・フォトギャラリー
http://junhirai.photoshelter.com/
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