ロンドン五輪、メダルレースが生む名勝負
ロンドン五輪セーリング競技8日目は、昨日までの中風に変わって、軽風のなかスター級とフィン級のメダルレースがおこなわれました。どちらの種目も逆転の金メダルとなり、メダルレースの成功モデルとなる、手に汗握る最終決戦が繰り広げられました。(BHM編集部)
スター級の2大ビッグネーム、イアン・パーシー艇(GBR)対ロバート・シェイド艇(BRA)の一騎打ちに見えたメダルレースでは、2艇が後位置で戦っている隙をぬって、フレデリック・ルーフ艇(SWE)がトップフィニッシュ。わずか2ポイント差でスウェーデンが金メダルを獲得しました。フレデリック・リーフは、北京で銅、アテネ12位、シドニーで銅(フィン級)、アトランタ5位(フィン級)、バルセロナ5位(フィン級)を獲得しているベテランセーラーです。オリンピック初優勝を飾りました。
パーシーとシェイドのスーパースターは、それぞれ銀、銅メダルを獲得。また、日本の夜叉侍チームがサポートするニュージーランドのハーミッシュ・ペッパーは5位となりました。スター級は、ロンドン五輪を最後にオリンピック種目からなくなることが決まっています。スター級の美しい姿が消えるのは残念です。
続いておこなわれたフィン級は、トップを死守してきたデンマークにGBRが2点差に迫る緊張のメダルレースとなりました。メダルレースの得点計算は2倍です。同点の場合はメダルレースの着順で決着がつくため、「最終レースで先にフィニッシュしたほうが勝ち」というわかりやすい金メダル決定戦となりました。
スタート前から執拗にデンマークをおいかけるGBRは、中間ラインから並んでスタート。そのままマッチレースにもっていくかに思えましたが、風を選んだGBRが先に動き出します。タックを返して右海面の風を掴みに行き、デンマークとセパレート。一旦はマーク回航2位にまで上ったGBRですが、そこからデンマークとの勝負を選んだのか(もしや、天才セーラーゆえに観衆に見せ場を作ろうとしてくれたのか?)、後方へ落ちてきてデンマークと並んでバトルをはじめます。
GBRはそのまま9位で逃げ切り、先着勝負の同点優勝が決まりました。フィニッシュ後、大量のカメラと観衆のなかで金メダル獲得をよろこぶベン・エインズリー。反対にデンマークのジョナス・クリスチャンセンはコクピットに体を横たえ、うなだれるシーンが映しだされていたのが印象的でした。
日本選手はRS:X級男女が最終日となりました。富澤慎は28位、須長由季は21位でメダルレース進出ならず、大会を終えています。また、470級女子の近藤/田畑は、本調子とは呼べず。第5レースを上マーク最後尾でまわると、そこから挽回して11位フィニッシュ。軽風で風にむらのある海面でおこなわれた第6レースでは9位、総合成績を11位にあげました。
ロンドン五輪も終盤です。大会9日目はレーザー級、ラジアル級のメダルレースがおこなわれます。
経歴にロンドン五輪金メダルが追加され、合計金4つ、銀1つのタイトルホルダーとなったベン・エインズリー(フィン級)。photo onEdition
スター級のメダリスト、左から2位のGBR、1位のSWE、3位のBRA。写真左端で悔しい表情なのは、GBRのイアン・パーシー
470級女子1位のGBRに1点差に迫ったニュージーランド。軽風から強風までオールラウンドで強いチームです
フィニッシュ直後、一連のパレード後、海上でインタビューを受けるベン
近藤/田畑。470級女子はレース期間の折り返し地点をすぎ、大会8日目はレイデイとなります
RS:X級男子のNEDはメダルレースを待たずに金メダルを決めました。1-1-1-3-1-2-1-2-1-DNFの成績は圧巻。最高に得意な風域だったのでしょう。ちなみにメダルレースは出場辞退できないので、結果は関係のない凱旋レースになると思われます。photo onEdition
◎ロンドン五輪成績
470級女子 参加20艇
1. GBR 18.0p
2. NZL 2-6-2-5-(10)-4 19.0p
3. NED 1-8-6-4-2-(18) 21.0p
11. 近藤/田畑 9-4-17-(19)-11-9 50.0p
470級男子 参加27艇
1. AUS 3-(9)-2-1-1-1 8.0p
2. GBR 2-1-(4)-2-3-4 12.0p
3. NZL DSQ-3-5-4-16-3 31.0p
14. 原田/吉田 19-12-(25)-12-7-11 61.0
49er級 参加20艇
1. AUS 8-1-2-4-2-1-(10)-6-9-5-4-1-1 44.0p
2. NZL 9-7-1-7-3-5-9-11-7-2-1-2-(15) 64.0p
3. GBR 12-12-3-18-4-2-1-1-17-4-(20)-13-3 90.0p
19. 牧野/高橋 16-13-17-14-(18)-11-18-16-18-18-14-15-6 176.0p
レーザー級 参加49艇
1. AUS 2-1-2-6-9-2-(14)-1-1-1 25.0p
2. CYP 9-4-1-1-2-4-(12)-7-7-4 39.0p
3. SWE 11-5-4-5-(25)-10-4-9-10-2 60.0p
レーザーラジアル級 参加41艇
1. CHN 5-8-(11)-3-5-4-1-4-1-2 33.0p
2. NED (6)-3-4-5-6-1-4-3-6-1 33.0p
4. IRL 1-1-1-1-8-(19)-2-10-3-7 34.0p
32. 土居愛実 29-32-31-27-26-(36)-30-22-27-29 253.0p
RS:X級男子 参加38艇
1. NED 1-1-1-3-1-2-1-2-1-DNF 13.0p
2. GBR 5-7-5-1-(10)-1-2-3-9-2 35.0p
3. GER 3-3-4-9-2-5-6-1-(15)-13 46.0p
28. 富澤慎 25-25-25-29-24-26-(34)-30-21-4 209.0p
富澤選手コメント
「きょうの4位は得意のパンピングのせい。練習で調子を上げてきて、セッティングも良くでき、レベルも上げてきたつもりだったが、道具(チャーター艇)とのマッチングが結果的にうまくいかず、流れに乗れない、苦しい大会だった」
RS:X級女子 参加26艇
1. ESP 2-1-1-1-5-2-3-DPI-6-3 24.0p
2. ISR 1-3-7-2-2-(11)-2-1-9-11 38.0p
3. FIN (8)-7-3-4-4-4-8-2-5-1 38.0p
21. 須長由季 19-23-22-22-22-(24)-22-20-18-12 180.0p
須長選手コメント
「ひとことで言うと苦しい大会でした。ただ、その場にいなければ経験できないこともあります。強風が得意なはずが皮肉なことに最後の軽風がよかった。出場しているメンバーもいつもと同じで、レース運営を含めて、五輪だからという気負いはなかった。ただ、4年間の集大成をこの一週間に最高の状態に持っていって、結果を出す難しさを実感しました」
フィン級 参加24艇
1. GBR Ben Ainslie 46.0p
2. DEN Jonas Hogh-Christensen 46.0p
3. FRA Jonathan Lobert 49.0p
4. NED Pieter-Jan Postma 52.0p
5. CRO Ivan Kljakovic Gaspic 55.0p
6. SLO Vasilij Zbogar 63.0p
7. NZL Dan Slater 83.0p
8. ESP Rafa Trujillo Villar 86.0p
9. SWE Daniel Birgmark 90.0p
10. FIN Tapio Nirkko 92.0p
スター級 参加16艇
1. SWE Fredrik Loof / Max Salminen 32.0p
2. GBR Iain Percy / Andrew Simpson 34.0p
3. BRA Robert Scheidt / Bruno Prada 40.0p
4. NOR Eivind Melleby / Petter Morland Pedersen 63.0p
5. NZL Hamish Pepper / Jim Turner 70.0p
6. GER Robert Stanjek / Frithjof Kleen 70.0p
7. USA Mark Mendelblatt / Brian Fatih 71.0p
8. POL Mateusz Kusznierewicz / Dominik Zycki 72.0p
9. FRA Xavier Rohart / Pierre-Alexis Ponsot 86.0p
10. IRL Peter O’Leary / David Burrows 95.0p
◎ISAF OLYMPIC
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