代表選考後半戦。緊張感漂う470男子の戦い
4月1日、スペイン・マヨルカ島で開催されているプリンセスソフィア杯3日目。大会は折り返し地点を迎え、本日より上位・下位グループに分けておこなわれる決勝フリートが始まりました。本日の注目は、日本中が気になっているだろう「470級男子」の戦いです。(BHM編集部)
大会3日目はスリーボンドが3位へ。チームアビームが12位へ浮上。残りの決勝フリート、さらに10艇でおこなわれるメダルレースまで戦いは続くのか? 注目が集まります。写真は第5レースで会心の4位をとった土居/今村。photo by Junichi
リオ五輪日本代表選考470級男子には次の4チームが出場しています。しかし、市野艇がクルー変更により(第一次選考の)選考対象外となったため3チームで第一次選考を戦うことになりました。松永艇、土居艇、飯束艇は、ゴールドフリートに進出し、選考で定められたポイントを獲得することになります。
松永鉄也/吉田雄悟(スリーボンド)
2014年世界選手権6位。2014年全日本選手権2位
土居一斗/今村公彦(チームアビーム)
2014年世界選手権9位。2014年全日本選手権1位
飯束潮吹/八山慎司(エス・ピー・ネットワーク)
2014年世界選手権57位。2014年全日本選手権3位
市野直毅/長谷川孝(和歌山セーリングクラブ・横浜ゴムMBジャパン)
2014年世界選手権26位。※選考対象外
なかでも注目されるのは、この2年間、お互い一歩も譲らず「勝った負けた」を繰り返してきたスリーボンド対チームアビームです。ついに2チームの戦いは最終章へ突入しました。
北京とロンドンのオリンピアン2人がチームを結成したスリーボンドは、テクニカルコーチをつけずに、成功と失敗の経験則をもとに世界一のセーリングを追求するためのプロジェクトを実行してきました。
実際に海外大会では、チームアビームよりも好成績をあげていることからも、代表選考の本命であり、陸上でも海上でも、そしてレースでも弱点のないチーム力が武器になっています。いつしか彼らも世界のなかでもベテランの部類に入るトップセーラーとして認められるようになりました。
一方、チームアビームは、学生ヨットのタイトルを総なめにしてきた土居一斗が日本経済大4年在学時から活動を開始。クルーは、スリーボンドでロンドン五輪キャンペーンを組んでいた同大学の先輩、今村公彦がつとめます。
さらに、ロンドン五輪で金メダルを獲得したベルチャー/ライアン(オーストラリア)をセーリングパートナーに、日本では得られないセーリング技術をブラッシュアップしてきました。そのスピードには世界でも定評あり、特に強風域のスピードは金メダリストのお墨つきです。
この2強に挑むのは、エス・ピー・ネットワークの飯束潮吹/八山慎司です。スピード派に属する彼らのセーリングには勢いがあり、ハマった時のそれは日本トップレベルに間違いありません。しかし、海外レース経験が少ないことは否定できず、国際大会ではチームアビーム、スリーボンドを破ったことはなし。この日本代表選考では、同じSPNチームで五輪活動経験の豊富な渡邊哲雄がサポートにつき、代表獲得を虎視眈々と狙っています。
現在37位。上昇気流をつかみたい飯束潮吹/八山慎司。phtoo by Junichi Hirai
スリーボンドvsチームアビーム、第一次選考後半戦を占う
何がおきるのかわからない470級日本代表選考です。これまでバルクヘッドマガジン編集部は、2度のオリンピック日本代表選考を現地で取材してきました。それを踏まえて「だれが勝つのか」と聞かれても答えることはできません。最終選考の場面では、見えないチカラがあらゆる方向に働いているからです。
ここで、スリーボンドとチームアビームの戦いを、両チームが出場した(編集部がセレクトした)大会の結果でふりかえってみます。
2013年
ISAFワールドカップ・イエール
スリーボンド18位、チームアビーム27位
ラ・ロシェル470級世界選手権
スリーボンド13位、チームアビーム26位
福岡470全日本選手権
スリーボンド2位、チームアビーム3位
和歌山ナショナルチーム選考
チームアビーム1位、スリーボンド2位
2014年
ISAFワールドカップ・パルマ
スリーボンド8位、チームアビーム32位
ISAFワールドカップ・イエール
スリーボンド15位、チームアビーム28位
サンタンデール470級世界選手権
スリーボンド6位、チームアビーム9位
江の島470全日本選手権
チームアビーム1位、スリーボンド2位
2015年
ISAFワールドカップ・マイアミ
スリーボンド10位、チームアビーム19位
スリーボンドがチームアビームに敗れたのは、2013年のナショナルチーム選考と2014年の全日本選手権のみ。国際大会で敗れたことはありません。この結果を見てもスリーボンドが一歩上の実力を持っていることに間違いありません。スリーボンドが普段通りのヨットレースができたならば、敗れる可能性は低いといえます。
スリーボンドの不安材料は、まず、再発した松永鉄也の腰痛があります。思えば、2012年バルセロナでおこなわれた代表選考でも、同じように腰痛を抱えた最終選考でした。これは、チームが抱える爆弾であり、彼のセーリング人生を左右する問題になるかもしれません。しかし、ここでも経験が発揮され、彼は痛みを抱えながらも走らせる術を知っています。最終選考の場面で、体調を理由に敗れることはありえないし、本人もゆるさないでしょう。
ただ、ひとつ気になることがあるとすれば、チームアビームが持つ「勢い」ではないでしょうか。本日(大会3日目)の第1レースは、小刻みな波が立つ強風コンディション。土居/今村は水を得た魚のようにかっ飛んで4位に入り、持ち味を十二分に発揮しました。チームアビームは、レースごとに成長している、まだまだ若いチームです。「勢い」のスイッチが入ってしまったら、スリーボンドも抑えつけることはできません。
さあ、日本代表選考となるプリンセスソフィア杯は、後半戦に突入しました。何があるのかわからない代表選考です。みなさん、リオ五輪代表を掛けて戦う彼らを熱く見守りましょう!
暫定3位。1位のGBRと4点差につけているスリーボンド、松永鉄也/吉田雄悟。photo by Junichi Hirai
◎プリンセスソフィア杯 3日目成績
RS:X級男子 82艇参加
6. 富澤 慎(トヨタ自動車東日本) 30p
48. 板庇雄馬(立命館大学) 77p
470級男子 79艇参加
3. 松永鉄也/吉田雄悟(スリーボンド) 24p
12. 土居一斗/今村公彦(チームアビーム) 51p
37. 飯束潮吹/八山慎司(エス・ピー・ネットワーク) 97p
64. 市野直毅/長谷川孝(和歌山セーリングクラブ・横浜ゴムMBジャパン) 121p
470級女子 62艇参加
4. 吉田 愛/吉岡美帆(ベネッセホールディングス) 19p
15. 山口祥世/畑山絵里(ノエビア) 52p
レーザーラジアル級 117艇参加
24. 土居愛実(慶応義塾大学) 84p
69. 冨部柚三子(レーザー江の島フリート) 120p
レーザー級 164艇参加
88. 安田真之助(宮津高等学校・教員) 123p
157. 瀬川和正(鳥取県セーリング連盟) 217p
RS:X級女子 66艇参加
24. 須長由季(ミキハウス) 73p
47. 小嶺恵美 84p
49er級 74艇参加
20. 牧野幸雄/高橋賢次(トヨタ自動車東日本) 72p
ナクラ17級 56艇
41. 後藤 浩紀/田畑 和歌子(SAILFAST・チームアビーム)101p
470級女子の吉田/吉岡(写真JPN1)は4位後退しましたが、3位のブラジルとは1点差。RS:X級男子の富澤も6位に踏ん張り、日本選手のメダルレース進出、メダル獲得が期待されます。photo by Junichi Hirai
大会3日目ダイジェスト映像。松永鉄也、今村公彦、八山慎司のインタビューあります。映像提供:デイリーセーリング
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