ヨットレース繁盛記・絶叫!大島レース前編
みなさん、長らくお待たせいたしました。バルクヘッドマガジンの人気連載「ヨットレース繁盛記」が復活します。春までの充電期間を経てパワーアップして帰って来ました! まずは5月24、25日に相模湾で開催された大島レースの参戦記。既報の通り南西の強風が吹き荒れ、全参加艇がボロボロに。ホビーホーク号も同じく甚大な被害を被りました。夜の外海、さらに強風ともなれば、常に危険と隣り合わせなのです。(BHM編集部)
相模湾伝統の大島レース。午前11時スタートです!photo by O.Yuko
第64回大島レース・前編
高速道路にヌンチャクと靴?
5月24日朝、〈ホビーホーク〉遠足号(8人乗りワンボックス)で葉山へ向かう途中、高速道路にヌンチャクと靴が落ちていました。こ、これは一体…。何かものすごいことが起きる予兆かもしれません。だって、高速道路にヌンチャクと靴ですよ!? そして、やっぱりその通りになりました。第64回大島レースは、一生忘れることのない厳しいレースとなりました。(文/石丸寿美子)
伝統の外洋レース、大島レースに参加できるのは少し誇らしい気持ちです。とはいえ、85マイルの外洋レース。しっかりとした準備が必要です。カテゴリー3(編注:外洋艇の装備規定)を改めて熟読し、安全備品や沿海仕様の装備など、準備と整備はみっちり一日かけてやりました。
さて、本番です。スタート海面は南南西の中風。この後、かなりの強風が予想されています。第1レグ、240度の初島まではポートタックでやや上りきれないくらいの角度です。風上艇がタックのアクションに入ったのを見ながら回し、ポートスタート。行ってきまーす!
スタート直後、どうやらセールチョイスに失敗してしまったことを悟りました。すでにかなりのオーバーパワーです。早めに対応すべくNo.3(編集:より小さいヘッドセール)にタックチェンジ。これで艇団の一番左に出ました。すでに頭から波をかぶりビチョッビチョです。先は長いので、これは厳しいレースになりそうです。
しばらくは、風軸210〜220度くらいの安定した風で進みます。IRCクラス21艇中、〈ホビーホーク〉は小さい方から2番目。大型艇が引っ張る先頭集団がだんだん小さくなっていきます。午後になって風がおちはじめたので、再びセールチェンジ。このあたりから風が大きく右に振れたり戻したりで怪しくなりました。あとから思えばここがターニングポイントでした。
岸寄りの艇団が、完全に西に振れきった風でそのまま初島へのアプローチに乗っているように見えます。ガーン!そして、〈ホビーホーク〉のところにもいよいよ280度の風が入り、待ってましたとばかりにタックを返して走るのも束の間、しばらくするとまた南西の風に戻ってしまい、酷いヘッダーに耐え切れずタックバック、また暫くすると西の風にバウを落とされてタックを余儀なくされ…と、こんな事の繰り返しでいっこうに風の境目から抜け出すことができません。のたうち回るとは、この事です。むむむ。
この時、冷や汗かきながらでもマイナスアングルを我慢して走り、西の風のエリアにちゃんと入るべきだったのですが、うーん、ほんの1〜2マイルしか離れていないのに、少しだけ沖側を走っていた〈ホビーホーク〉を含む数艇だけが、最後まで西の風を掴めず、無駄なタックを返しながらのアプローチになってしまいました。艇団から大きく水をあけられて、16:57初島回航。というわけで、第1レグはドボン。
大島レースのコース。葉山をスタートし、熱海沖の初島をまわり、伊豆大島をぐるっとまわって葉山へ戻る85マイルのヨットレースです
風は上がり続け、もはや話をするのも叫ぶ感じ
さあ、気を取り直して第2レグ、いよいよ大島への「渡り」です。今までの大島レースで、初島回航の順位はあまりフィニッシュ順位には関係ないことも知っています。ここからが本当の勝負です。例年だと。
でも今年は風が安定して吹き続けています。再びターニングポイントとなるような場面が訪れるのか? 本当にここから逆転のチャンスなんてあるのか? 一抹の不安を胸に、夕暮れの相模湾を南下します。夜は30ノット以上の強風予報が出ています。
引き続き安定した西の強風ということで、渡りはダイレクトに狙ってもよさそう。でも東に流される潮があるので、COG(編注:Course Over Ground。対地目的地方向)が大島千波崎を向くように10度右を狙う感じで走ります。そして予報どおり風がどんどん強くなってきました。
すっかり日が暮れました。そしてついに、コンスタントに25〜30ノットの風が入り始め、とてもフルセールで走れる状態ではなくなってきました。もはや話をするのも叫ぶ感じ。ここで、メインをリーフし、No.4(編注:もっと小さいヘッドセール)にチェンジします。
船酔い気味のバウマンもずぶ濡れになってがんばってくれました。波悪く、のぼると失速してさらに流されるので、フネが滑っている様子を感じ取りながら、対話しながら走ります。AWA(編注:アパレント・ウインドアングル)40度くらいが波当たりもスピードも一番いい感じですが、結局こうなるとダイレクトに千波崎は狙えず、ヘディングは元町の街明かりに向きました。
大島の沖は、都会の空と違って海も空も真っ黒です。星がきれいです。スプレーを浴びるたび夜光虫がカッパに付いてラメ入り衣装みたいにキラキラ光ります。きれいだけど口にも入っているから、みんなかなりの量の夜光虫を食していることになります。オェー。
元町沖でショートタックをし、千波をかわし徐々にバウダウンして竜王崎へ向かいます。まわりにフネはなし。この風が続いているのなら、先頭集団はもうとっくに竜王を廻って、もしかしてトップ艇はそろそろフィニッシュだったりして。
だいぶ風が落ちてきたのでワンポンを解除し、ヘッドセールもチェンジ。そして、気づけばジェネカーが上がる角度です。うーん、冒険するか、安全に行くか。色々なことがあたまの中をよぎりますが、竜王でジャイブが入るので、やっぱり思いとどまりました。思いとどまって良かったです。なぜなら竜王ではジャイブを断念し、タック廻りをしたくらいまた吹きあがってきたので。21:35、大島竜王埼回航。
ようやく大島の東側に出ました。風はクォーターリーくらいの角度ですが、まだスピンをあげるには危険な感じ。この先、風が落ちてあげるチャンスがあればあげよう、ということでひとまずジブ帆で北上開始です。直後、筆島事変が勃発することになろうとは…。
※いったい筆島事変とは? オェー!の後編へ続く!
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