がんばれ、ヒロさん、辛坊さん!
ブラインドセーラーのヒロさん(岩本光弘さん)、テレビキャスターの辛坊治郎さんが、ヨットによる太平洋横断の途中で海上自衛隊に救助されました。連日ニュースで報道されているのは、みなさんご存知だと思います。(BHM編集部)
◎エオラス号、救助までの経緯
6月8日 ヒロさん、辛坊さんが乗る〈エオラス〉号(ブリストルチャネルカッター28)が、大阪・北港を出港
6月16日 福島県・小名浜を出港
6月21日 7時45分頃、宮城県金華山南東1200キロ沖合を航行中に浸水。事務局を通じて海上保安庁に救助要請、通報直後にヨットを放棄してライフラフト(救命筏)で避難
6月21日 海上自衛隊の救難飛行艇により18時14分に救助。現場は波高3〜4メートル、風速16〜18メートル。救助機は22時30分に海上自衛隊厚木基地に到着
このニュースを聞いて、まずはふたりの命が助かったことにホッとしました。本当によかった。そして、現場の状況を自分なりに想像してみました。
午前5時のワッチの交代後8時まで寝ようという時、“船にゴーンゴーンゴーンと3回、右舷方向から下から突き上げる感じがして”(岩本さん談)浸水を確認。“急速に浸水していくる海水を排出したがスピードが速くあっという間にくるぶし、脱出時にはひざ下まであった”(辛坊さん談)
辛坊さんは、荒れている海上で、ライフラフトを艇外へ放り投げ、ヒロさんの手を引いてラフトに乗せるという行動をとったと思われます。文字にすると簡単のようですが、これは、相当の重労働と危険が伴う行動です。
ライフラフトを正しく投げるという行為だけでも、ひとりでは相当むずかしいものです。しかも、一般的に練習するのは、まったく荒れていない平水面の安全な状況でのことで、暴れる船の上、急速に浸水する状況、同時にパートナーを補佐するのですから、信じられない状況で辛坊さんは自分とヒロさんの命を守ったということです。同じセーラーとして、現場では勇気ある行動があったと想像します。
しかし、彼らの行動に対して批判的な意見を持つ人も多くいるようです。「好きでやっているんだから、救助に掛かった費用は自分で負担せよ」というものです。テレビ番組の調査では約4割の人が費用を自己負担するべきという結果が出たといいいます。
これは、残念ながら冒険的要素を持つ、特に自然を相手にしたチャレンジにはつきものの意見で、ヨットレースやヨットの航海で救助された場合、日本だけでなく、世界でも問題になることです。
日本では、海上保安庁、自衛隊に救助された場合、その費用を負担することはありません。命を守られる権利を日本国憲法で定められているからだし、人として当然のことでしょう。見識者、マスコミはそれを理解していながらも、スキャンダルとしてそれを報道します。きっと辛坊さんがニュースキャスターであるということで話題にしやすいのでしょう。さらに、25日の自民党国防部会で彼らの行動を批判する意見が相次いだといいます。
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中山泰秀部会長は「東日本大震災(の津波)で流し出された人を救出するなら納税者も納得すると思うが、本当に深謀遠慮に足りる計画があったのか」と無謀さを指摘。辛坊さんを部会に呼んで事情を聴くことも検討する考えを示した。(時事通信より引用)
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こうしたニュースを聞いて、政治家の貧弱な頭脳を悲しく思いながら、シドニーホバートヨットレースの事故を思い出しました。最悪の事故は、1998年大会に起きたもので、80ノットの台風並みの低気圧に遭遇し、沈没5艇、転覆6艇、死者・行方不明者6名、ヘリによる救助42名、という大事故がありました。
この事故の時だったか覚えていませんが、オーストラリアでも海難事故後「救助に掛かった費用は、税金を使わず個人負担させるべきではないのか」という世論がわきあがりました。その時、当時のオーストラリア首相がコメントし「国民の命を助けることは、私たちの当然の使命だ」とはっきりと発言し、すべてが治まり、首相の株があがったという逸話を聞いたことがあります。自民党国防部会とは全く逆の考えのようです。
YOUTUBEに公開された接触・衝突の瞬間。ホームページに記載されている文章を下記に添付します
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6月24日12時30分に、「エオラス号」に設置していたカメラが撮影した浸水直前の衝突時の映像を、海上保安庁に提出するとともに、先ほど「ブラインドセーリング」公式ホームページにアップしました。
【提出した映像】
エオラス号の船尾左舷のポール(海面から高さ5メートル)に設置していた定点観測カメラが撮影。浸水直前の映像。辛坊治郎氏が、ライフラフト(救命ボート)に脱出する直前に、カメラから保存データ(SDカード)を取り出しました。当初、データが海水で濡れていたため再生できませんでしたが、データ復帰できました。デジタルでの映像化が出来ず、パソコン画面を再度撮影した映像を提出しました。
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その後、6月24日、船に設置したカメラ映像が公開され、その映像から何かに衝突したのではないか、それはクジラではないのか、と推測されています。この映像だけでは、判断できませんが、実際に接触、衝突などのトラブルがあったと思われます。事実を追求するのなら、沈没した船を深海から引き上げなければならないでしょうから、それは時間の掛かること、または不可能なことかもしれません。
そして次には、航海計画は正しかったのか、太平洋を横断する技術はあったのか、船の状態は完全だったのか、ということが議題にあがるでしょう。これには、ヒロさん、辛坊さんほか関係者のみなさんには、しっかりと自信を持って「間違いがなかったこと」を伝えてほしいと思います。
今回の事故は、わたしたちセーラーにとって、他人事ではありません。これから、日本から太平洋を横断する、日本から世界一周する、日本から長距離航海する、というセーラーの夢をつぶしてしまう、または彼らの挑戦を困難にする可能性もあるからです。
ヒロさん、辛坊さんには、ぜひ仕切り直しをして再挑戦してほしいと思います。これからが正念場です。がんばれ、ヒロさん、辛坊さん!
◎ブラインドセーリング
http://www.b-sailing.com/
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