ありがとう!世界一周艇〈DMG MORI Global One〉ジャパンツアー終了へ
白石康次郎さんが単独世界一周レース、ヴァンデ・グローブを二度完走した〈DMG MORI Global One〉(グローバルワン)の、約半年にわたるジャパンツアーが10月末をもって終了となります。4年ぶりの来日となったこの船は、これからフランスへ送還され、売却される予定です。この船を日本で見られるのは、これが本当に最後の機会となります。(レポート/守屋有紗 DMG MORI セーリングチーム)

今年6月、フランスから日本に到着した〈DMG MORI Global One〉は、組み立て作業を経て、これまで応援、ご支援くださった多くの方々へ向けてセーリングや見学会を実施してきました。
一般のお客様向けの公開も、抽選制で3回開催され、いずれも高倍率となるほどの大きな反響をいただきました。マリーナに係留中も、たくさんの方々が足を運んでくださり、白石さんが二度の世界一周を果たしたこの船の姿を間近でご覧いただきました。

グローバルワン号は、世界一過酷と言われる単独無寄港無補給世界一周レース、ヴァンデ・グローブを二度完走したIMOCA60クラスの艇です。
8年間にわたり、世界トップクラスのチームの技術者たちが改良を重ね、二度も地球一周をしたこの船は、白石さんが「新艇の時よりも味が出ている」というほど、完成度の高い一艇です。
この艇は最大で40ノット(時速約80km)に達するフォイリング艇で、左右に突き出したフォイルによって船体が浮き上がり、海面を飛ぶように走ります。マストは左右に回転し、サイドステーは船体中央から左右に張り出たアウトリガーにつながっています。
IMOCAクラスの規定により、キールのカンティング以外は全て手作業でセーリングをしなければならず、フォイルの出し入れやセールの上げ下げもすべて手動。コックピットにリードされたロープをウインチにかけ、ペデスタルを回して動かします。
メインセールは約120kg、ヘッドセールは重いもので80kgにもなります。実際に乗ってみると、これをひとりで操船していることがどれほど大変かを感じます。
およそ風速15ノット以上になると、フォイリングが可能になります。バウが浮き上がり、キーンという高い音とともに船が浮く感覚に包まれます。
しかし、波にぶつかる度に、何か衝突したような強い衝撃が走り、その衝突音とウインチが軋む音が響き続けます。モスのように完全に浮く訳ではないため、波との強い衝突を続けながらのセーリングは本当に乗り心地が悪く、常に何かに掴まっていないと吹き飛ばされてしまう程です。
初めてフォイリングを経験したときは「これは異常だ、危険だ」と感じましたが、白石さんやフランスのクルーが冷静に乗っている姿を見て、これがIMOCAの“日常”なのだと衝撃を受けました。

私は約2年間、オーストラリアで単身ヨット修行を行い、今年6月よりDMG MORI セーリングチームに参加しています。現在は、2027年に開催予定の世界一周レース「オーシャンレース」への出場を目指し、日々トレーニングを重ねています。
この半年間は、IMOCAで週3〜4回、合計50回以上のセーリングと2度のレース参加(パールレースと11月の小網代カップ)や関西と関東の往復回航など、合計で約2,000マイル以上のセーリングに参加しました。
この最先端の船で学べる機会をいただけていることが本当にありがたく、学びの多い日々を送っています。
チームでは現在、新艇の建造がフランスで進行中です。進水は2026年6月頃、同年9月には「オーシャンレース・アトランティック」(ニューヨーク〜スペイン)に出場予定です。
そして2027年1月には、日本チームとして初めて、世界最高峰のフルクルー世界一周レース、オーシャンレースへ挑戦します。その翌年2028年には、ヴァンデ・グローブへの挑戦も予定されています。
2027年のオーシャンレースでは、4名のクルーと1名のオンボードレポーター(OBR)で複数レグを通して世界一周します。規定により女性クルー1名を含む必要があるため、私はそのポジションを目指してトレーニングを続けています。
2026年1月からはフランスへ渡航し、さらなる成長を目指して挑戦を続けていきます。
◎〈DMG MORI Global One〉を見られる最後の機会
• 10月27日まで:横浜ベイサイドマリーナ
• 10月29日〜11月4日:葉山港
※11月1〜2日は小網代カップに参加予定
・11月5日以降:ベイサイドマリーナに戻り、フランスへの輸送に向けた解体作業を開始します。
外からの見学とはなりますが、ぜひ最後にこの船の迫力を感じにいらしてください。半年間、応援・ご支援くださった皆さま、本当にありがとうございました。