【パラオ】パラオ伝統のカヌーでジュニアセーラーが大冒険!
ミクロネシアに浮かぶ島国、パラオ共和国で青年海外協力隊として子供たちにセーリングを教えている仙田悠人さん。今月は子供たちと一緒にパラオに伝わる伝統カヌーに乗って一泊二日の冒険航海「トラディショナル・カヌー・クエスト」に行ってきました。パラオに住んでいてもなかなかできる体験ではないそうです。みんな、よかったですね!(BHM編集部)

私たちパラオセーリング連盟(PSA)には、古くから伝わるセーリングカヌーの技術を伝承する分野があり、子供たちは、カヌーを使ってセーリング練習することができます。伝統とは昔の日常のこと。船が移動手段や釣り船としてだけでなく、郵便配達などにも日常で使われていたことを思い出させる体験です。(レポート/仙田悠人、写真提供/Nishida Ryota、在パラオ日本大使館)
「パラオ伝統的なセーリングカヌーを日常使いしていた時はどのような感覚だったのだろう?」 そんなことを実体験できる機会は子供たちにとって一生の思い出になるはずです。
また、大海原への航海の最初の一歩として、PSAの子供たちへの贈り物として、いつもの練習場のSkojio(スコージョー)から21キロ離れたNgeremlengui州(アルモノグイ州)までセーリングしてきました。


◎出航の儀式。ココナッツの新芽を首と右手につけておまじない
9月6日、朝8時に集合して船の準備。その後、安全祈願と賢くなるような効果のある伝統的なお祈りが始まりました。ココナッツの新芽を首と右手に身につけて、おまじないをしてもらいました。また、子供たちの代表が額と胸にターメリックの粉末を塗ることもしていました。
お祈りしたにもかかわらず、風は朝から吹かず微妙な雰囲気でしたが、午後からは7m/s程度の風が吹き、爽快に走り出しました。
伝統的な船であるため、それぞれの作りが3艇で異なり、風に対する上り角度やスピードの違いが顕著に見られました(例として、船首の船底はココナッツの葉っぱをしならせて曲線を作ったりしています。船は自然の物差しを用いて建造しているのです)。
子供たちはうまく風をつかみ、セーリングできる喜びであふれていました。ジュゴンやウミガメなどに出合いながら、目的地アルモノグイへ向かいました。

◎現地の子供たちとILCAでセーリング。楽しくて船の上でダンス!
15時30分ごろアルモノグイに到着すると、現地の方々や子供たちが待っていてくださいました。到着後、現地の酋長さんへ贈り物を渡し、上陸の許可を得るという段階を踏みました。
到着してすぐ、私は引っ張ってきたILCA級で現地の子供たちにセーリング体験をしてもらいました。現地の子供たちは普段はセーリングを体験できないため、今回初めて乗艇した20人弱は、期待と少しの不安を胸に乗り込みました。しかし、ビーチに戻る頃には、船の上でダンスを披露するほど上機嫌な姿を見せてくれました。
日が暮れてからはローカルな夕食が用意され、パラオの伝統的な話や航海に関する話を聞きながら食事をしました。夜は窓のない、海風の入る建物で子供たちと一緒に寝ました。

◎パラオ伝統のカヌーで冒険して、たくさんの思い出ができました
翌7日は再び上りの風で、現代のヨットのような上り角度を得られない伝統的な船には時間のかかるコンディションになりました。行きも帰りも上りの風です。まるで子供たちへの試練のようでした。
道中、お母さんたちが作ってくれたツナサンドを食べながら7時間の航海でした。真っ直ぐ進んでいるだけの単調さに疲れた顔を見せる子もいました。
普段、45度まで風に逆らって走るOP級やレーザー級に乗っている子供たちは、現代のヨットがいかに優れた船かを口々に語っていました。
スコージョーが見えてくると、保護者の方々や日本人の方々など予想以上に多くの人たちが到着を待っていました。ある兄弟は親戚一同に迎えられ、少し恥ずかしそうにしていました。彼らは久しぶりに地面を踏みしめ、家族から歓迎されることで、自分たちが成し遂げたことの大きさを実感しているようでした。
船の上で交わしたくだらない話や、出合った海の生き物、インドネシアから流れてきた茅葺きの船の家を見たこと。たくさんの方々の協力で実現したこの貴重な体験は、子供たちが大人になってもヨットの思い出として語り継いでくれることでしょう。
さあ、次の目的地はどこかな?
