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大西洋横断直前、「プル・トランス・ガスコーニュ」で往路2位!

  7月17日、ミニ・トランザット前最後のレース、「プル・トランス・ガスコーニュ」(PURU TRANSGASCONE)がスタートしました。出場艇は72艇。当初は18日スタート予定でしたが、風速40ノットの前線がレース中に通過する可能性があったため、1日早めのスタートになりました。(レポート/國米 創)

大西洋横断に挑戦する國米 創選手が7月に開催された「プル・トランス・ガスコーニュ」に出場しました。大西洋横断ミニトランザットの最終調整となるレースです

 このレースはシングルハンドとダブルハンドの混合で、コースが2レグ(合計620マイル)に分かれています。1レグ目はスタート地点のPort Bourgenay(ポート・ブルグネー)から直接スペインのGijon(ヒホン)に向かうコースで、2レグ目はヒホンからロリアン付近にあるBelle-Île灯台(ベル・イル)を経由してからブルグネーに向かうコースでした。

 このレースは9月にスタートする大西洋横断「ミニトランザット」本番前ということもあり、船の最終確認として出場する人もいれば、本番まで船の故障などのリスクを取りたくないから出場したくない、という人もいました。

 僕は、船の最終確認をしたいから出場したい、という気持ちがありましたが、正直、船の準備が前のレースの修理などで全然進まず、いつもと同じような状態でレースに挑むことになりました。

 スタート前は複雑な気持ちでいっぱいでした。ミニトランザット直前に予定通りに物事が進まず、自分の選択に間違いがなかったのか疑心暗鬼になってしまいました。

スタートはフランス外洋ヨットレースの基地、ロリアン。ロリアンからスペインのヒホンへ向けてダウンウインドで走り出しました

◎「ドン!」という衝撃で身体が飛ばされ急激にスピードダウンする

 スタートは7〜12ノットのダウンウインドで、ヒッチマークを回ったらフィニッシュ地のヒホンまで、タック、ジャイブなしのリーチングとスピンのセールチェンジをする一本コースでした。

 スタートは出遅れたものの、ヒッチマークには10位以内で回ることができました。夜になるにつれ、徐々に風が25ノットまで上がり、ジェネカーでリーチングを走っていたときに事件は起こりました。

 14ノットのスピードで走っていたところ、「ドン!」という音が聞こえ、スピードが一気に4ノットまでダウン。身体も前に飛ばされました。状況を理解する前に、確実にUFOにぶつかったと思いました(オフショア界でのUFO= Unidentified Floating Object、未確認浮遊物)。

 すぐにジェネカーを巻いて船内でバルクヘッド、クラッシュボックス、キールを中から点検。手持ちのカメラでキールを外から確認しても何も絡まっていませんでしたが、船の挙動がおかしいのを感じて問題を探そうとしました。

 結果、ダガーボードに何かが引っ掛かっていることを予想して船をバックして解消することができましたが、ボードそのものは動かなかったのでその時に直すことは諦めました。この時の不安とストレスは大きかったです。

キールをカメラでチェックする

◎残り50マイル。チームメンバーの写真を見て気持ちを高め、プッシュする

 レース前の不安と、確実に船にダメージがある確信が交差しました。こういう時に気持ちの後押しをしてくれるのが船内にあるチームの写真でした。ここまで来るのに助けてくれたチームメンバーのためにも、このレースは乗り切らないといけないと気持ちが強くなり、再び走り出しました。

 船が壊れても自分には心強いチームがいる。どれだけ波に突っ込んで危ない走りでもプッシュし続けようと決めました。波に何回も刺さりブローチングしながらも船をプッシュし続けることができて朝には先頭を走っていたプロトタイプに追いつくことができました。

 風も落ちてゴールまで残り50マイルです。後方2マイルには同じクラスのプロトタイプが走っているのが見えました。50マイルを逃げ切るために、さらにスピードを追い求めてセールトリムとキールトリムに集中しました。

 相手の船はスピードがあることはわかっていたので、最後まで油断できませんでした。このインショアレースでも感じていたレースの緊張感が、とても気持ちよかったです。

 ゴールラインを切ってレース委員に自分の順位を聞いて、初めて2位だったと知りました。あの時の喜びはとても気持ちが良くて、今まで忘れていたものを思い出した気がしました。

 結局、最終的にはどのレースもやって損はないと改めて感じたレースで、この経験はミニトランザットに必ずつながると思いました。私は8月15日に日本に一時帰国して、次フランスに戻るのは8月31日になります。ミニトランザットまでギリギリの予定ですが、それまでに船のダメージを修理してしっかり準備を整えていきたいです。

2位だと分かった瞬間、思わずガッツポーズ
同じくミニトランザットに出場する中山寛樹選手(左)は、プル・トランス・ガスコーニュにダブルハンドで出場し、往路3位入賞を飾りました

◎大西洋横断「ミニトランザット」とは
 ミニトランザットは、全長6.5メートルの小型外洋ヨット「ミニ650」で行う単独大西洋横断レースです。1977年に始まり、2つのレグ(フランス~カナリア諸島、カナリア諸島~カリブ海)で構成されます。航海距離は約4000マイル。衛星通信や気象情報の使用が制限され、航海計画や気象判断を自ら行う必要があります。限られた船のサイズと装備で挑むため、世界中の外洋セーラーにとって登竜門かつ過酷な冒険として知られています。
【第1レグ 9月21日スタート】
レ・サーブル・ドロンヌ〜サンタ・クルス・デ・ラ・パルマ
【第2レグ 10月25日スタート】
サンタ・クルス・デ・ラ・パルマ〜グアドループ(セント・フランシス)

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