【パラオ】みんなでパラオ伝統のアウトリガーカヌーを作ろう!
パラオには、日本と全く異なる帆船文化があります。パラオを含む南太平洋の人たちは、古くから気象や海流、星空を頼りに航海してきました。今月のパラオレポートでは、パラオセーリング連盟の子供たちも参加している、アウトリガーカヌーの建造プロジェクトについてご紹介します。(BHM編集部)

◎伝統の木製カヌー、アリガノマイス号が台湾に向けて出発!
4月20日、ハワイより寄贈された伝統的なスタイルの船、アリガノ・マイス号(Alingano Maisue)が、星やうねりを頼りに台湾領の島へ向けて出航しました。(レポート・写真提供/仙田悠人)
パラオでは盛大な出航式が開催され、航海士の安全とこの偉大な歴史的一歩を祝いました。水平線に消えてゆく友人らの船影に、私も嬉しくもあり少し寂しさを感じました。
そして17日後、船は無事に台湾領の島に到着し、現地では伝統的なカヌーが出迎え、盛大なパーティーが開かれたそうです。これは単なる海上航海技術の披露にとどまらず、台湾とパラオ両国の重要な結びつきを示す素晴らしいできごとになりました。
民族的な誇りを重んじるパラオでは、近年、伝統的な航海術に関する知識や島の伝統的アイデンティティを確立しようという機運が年々高まっているように感じています。ダイビングという観光産業に、少しでも多様な彩りを添える一助となるのでしょうか。

◎セールもロープも自然にあるもので作られるミクロネシア・パラオの船
パラオを含むミクロネシアの伝統的な船は、本船に橋渡しのように浮力体を取り付けたアウトリガー式です。
伝統的には、帆はパンダナスの葉を編んだもの、ロープはココナッツの繊維を使用したものが用いられます。マストやブームには竹が使われ、船体はパンの木で作られます。
波を切る速さは、すべて自然由来の素材でできているとは思えないほど速く、独特のタック方法には感銘を受けることでしょう。船の登り角度は風の強さに大きく左右されますが、良い風が吹けば50度ほどまで上ることが実感できます。
ウェザーヘルムといったセーリングでも用いられている知識が、経験則として操船に応用されていて、海の歴史の深さを感じさせます。スピードを追求する時は、浮力体を浮かせて船体を傾けて走ります。

◎子供たちも参加。伝統的なアウトリガーカヌー建造プロジェクトが始まりました!
マイス号の出航と同時期に偶然にも、私たちが所属するパラオセーリング連盟(PSA)のひとつの部門である、伝統的なアウトリガーカヌーの復興活動部門で動きがありました。それは、木を切り出すところからアウトリガーカヌーを製作するというプロジェクトです。
伝統的なカヌーの弱点としては、(1)木製であるためメンテナンスが難しいこと、(2)大量生産が難しいことなどが挙げられます。
今回のPSAのプロジェクトでは、まず大きなパンの木を切り倒しました。その後、国立博物館の前で伝統的な斧を使って木をカヌーの形に削り出します(この際、教育的な観点から地域の子供たちが木を彫る作業に参加しました)。
そして、製作した木製のアウトリガーから型を作り、FRP(繊維強化プラスチック)で量産体制を整えるという計画です。1カ月の間、職人の斧の音が鳴り続けました。木が元々持っていたアウトリガーの形を彫り出すイメージだそうです。


シロアリの被害が多いパラオでは、船体をFRP製にすることでメインテナンスを容易にし、使用できる艇を増やすために量産を行います。生産されたアウトリガーは、伝統的な知識の共有やパラオカップ出場艇として大人や子供たちが使用する予定です。
今週には、本船が完成し、国内のFRP船製造工場にてコピー艇の製作を開始する予定です。子供たちもすでにアウトリガークラスに出場するための練習を始めています。全3艇の完成が待ち遠しいです!
アウトリガーを含む伝統的な航海術の世界には、目覚ましい発展を遂げた現代技術には引き継がれなかった太古のロマンと古くも新しい可能性に満ち溢れています。ぜひパラオで体験しに来てください!(乗船できるかどうかは、パラオの方の都合によります)

- 連載【パラオ】バックナンバー https://x.gd/n5p3T
- 日本パラオ青少年セーリングクラブ https://jpysc.org/