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2025年初レースを無事完走!プラスチモ・ロリアン・ミニ

 4月10日、今年最初のレース「プラスチモ・ロリアン・ミニ」(PLM)がスタートしました。このレースは男女混合のダブルハンドで、私はドイツ人のSanni Beucke(以下サニー)と出場しました。(レポート/國米 創 )

9月にスタートする大西洋横断ミニトランザットを目指して活動する選手たちが、2025年初めてのレースは男女ミックスダブルハンドレースに出場しました。74艇が出場したこの大会に日本から國米を含めて中山寛樹、高原奈穂の3選手が出場。高原はシリーズ3位、國米はプロト5位の成績を残しました(編集部)

 サニーは東京五輪の49erFXで銀メダルを獲得し、オリンピック後はオフショアに挑戦するためにフランス・ロリアンに来てフィガロ3のキャンペーンを始めました。

 サニーがちょうどロリアンに来た時に私もロリアンに住み始めて、お互い母国を離れてセーリングしているという共通点から仲良くなり、今回レースのオファーをしました。今思うとロリアンに来てチーム最初にできたメンバー以外の友達だったかもしれません。今回レース中に一番よくした雑談は恋バナでした。

プラスチモ・ロリアン・ミニのコース図。黄色が侵入禁止区域です

 250マイルを走るPLMのコースはでLorient(スタート)→Groix反時計回り→Lorientブイ反時計回り→Penmarc’h反時計回り→Glenansブイを左に見る→Groix右に見る→Yeu反時計回り→Lorientの順にコースを走りました。

 レース当日は風に恵まれ、3年ぶりにPLMをフルコースでレースをすることができました。MINI6.50のレースで予定されていたコースを完走することは稀で、特にこの時期は風が不安定になりやすいため本当にラッキーでした。

 スタート当日は朝8時にブリーフィングが行われました。実はこの時までハッキリしたコースは正式に発表されていませんでした。4つコースが準備されていて、多分このコースだろうなという予想のもと、レース準備を進めていました。

 余談ですが、ロリアンではフランス軍がよく訓練しており、レースの日に実戦演習があるから爆発音が聞こえても気にするなとブリーフィングで言われました。(笑)

 
 スタートで遅れを取りましたが、船の性能を活かして最初のGroix島を回る時には先頭艇団に追いつくことができました。Penmarc’h を回るまでは風は弱く、VMGダウンウインドで陸を攻めないと風が無い状態でした。

 私は安全をとり激しく攻めませんでしたが、トップを走っているシリーズクラスはきれいに岩の間を通って追いついてきました。レース中いくら相手が通れても、見えない岩があるかもしれない場所を通る度胸はありませんでした。

 ブイもなくて岩がチラ見していることもよくあります。こういうローカル情報は事前準備でどれだけ情報を集められるかというところもありますが、その船に乗ってるスキッパー、もしくはコースキッパーの経験と知識の差がでる部分とも思いました。

 あらためてこの海域を太陽が出ているうちに通れてよかったです(MINI、フィガロ、IMOCAもここでキールを岩にぶつけているのをよく聞きます)。

レース中の食事風景。今回は食事をしっかり摂ることを意識しました

 Penmarc’hを回ってからは、風速18ノット、TWA(真風向)80度のアップウインドでした。ここでフォイル艇が力を発揮して大きな差をつけられましたが、ここからはダガーボード艇のドラッグレースが始まりました。Glenanを超えた頃には太陽も沈みゆっくりと暗くなっていきました。

 Yeuまではリーチングでジェネカーを上げていました。途中でジェネカーをファーリングして回収しようとしたとき、ジェネカートップが展開してしまいました。25ノットの風でちゃんとファーリングを直せない状態になったため、2人で協力してドロップしてとりあえず船内に突っ込みました。

 この時に去年のPornichet Select(ポルニシェ・セレクト)レースで同じような場所で似たようなことしていたなと思い出しました。

 あの時は大変だったけど今回は2人だし状況と対策もわかっていたので、案外すんなりとトラブルを終えることができました。経験したことがあることと、人手があるとこんなにも楽に問題解決できるのかと少し感心しました。

  Yeuを回ってLorientに戻るまでは10〜18ノットの風で高さを取ってダウンウインドを走っていました。

バウスプリットを固定するコンストリクター(ジャマー)が壊れたためウインチに固定しました

 途中バウスプリットを固定するコンストリクター(ジャマー)が壊れてしまい、ゴールするまでずっとウィンチに巻いていました。船に3つしかウィンチなくてそのうち1つ潰れるのは少しキツかったです。

 白石さんがよく「何かトラブルがあってウィンチが潰れると本当に大変なんだよ!」と言っていたのを思い出し笑いしてしまいました。

 今回のレースはコースが風もそこまで強くなくて単純だったためリハビリには最適でした。サニーにとって初めてのMINIで新しいことだらけでしたが、一緒にセッティング、トリム、オートパイロットを追求することができました。

ゴールしたときにチームメイトが迎えてくれました

 PLMではトラブルが少なかったので、ここで少しだけ僕たちの船の特長と強みを少しお話しします。

 私たちの乗っているMINI6.50(プロトタイプ)は、スコウバウでダガーボードを使用しています。スコウの強みはプレーニングだと考えています。

 バウの丸みのおかげで接水面積も減り、広いビームをなるべく前まで持っていき、ボリュームのあるバウのおかげでマルチハルと同じような特性を生み出しパワフルに走らすことができると言われています。

 スタッキング(船内の荷物移動)の幅も広く、ただ風上や前に荷物を置くのではなく、バウの下側、真ん中、上側などバラエティは多いです。

 レース中にトリムするところも多く、ざっと言うとマストレーキ(0〜8度)、ウォーターバラスト(前後でマックス200キロ)、カンティングキール、スタッキング、ダガーボードの差し具合etc…。

 そこからセールチョイス、トリム(ダウンウインドではジョッキーポールトリム、ジェネカーだと3mあるスピンポールのタックの位置をトリムできます)、全てのバランスが整って初めて船を走らせることができます。バランスが悪いと広いバウが水に突っ込んでまともに走らせることができません。

 オフショアは特にインショアと違ってVMGだけで走らないのでトリムできる部分が多いほどいろんな角度や風速に対応できるが、その分複雑になりセーリングが難しくなります。

 コーチからはMINI6.50のプロトはオフショアで一番複雑だと言っていました(プロトは基本ルール内なら何をしてもいいので色んなパーツの素材も考え始めるとキリがありません)。

 この特長的な船上手く走らせるために今回サニーと乗れたことは幸運でした。彼女の感覚と知識のおかげで考え方と、船を感じる幅が広がったと思います。次のレースは「MINI en Mai」。5月19日から始まる500マイルのソロレースです。それまでにたくさん練習して、1人乗りでも5位以上の成績を残せるようにがんばります。

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