【コラム】バルセロナでアメリカズカップを観戦してきたよ
ニュージーランドの圧勝となったアメリカズカップ。現地のムードはどんな感じったのでしょうか。熱烈なフォイリングファンのワカコレーシングのふたりがバルセロナに飛んでアメリカズカップを観戦してきました。ニュースではなかなか伝わらない会場から見たアメリカズカップの様子をお伝えします。(BHM編集部)
10月12日から始まるアメリカズ・カップ本戦に合わせて、11日午後に現地入りして19日の決着が着くまで観戦してきました。その時の現地の様子や感じた事を書いていきたいと思います。(レポート/梶本和歌子 ワカコ・レーシング)
◎NZから5000人?オークランドの半分が見に来ている??
カップマッチ初日(10月12日)はポート・バルセロナに設置されたレースビレッジの入り口にあるオフィシャル・ストアへ行き、エミレーツ・チーム・ニュージーランド(ニュージーランド)のTシャツとキャップを購入しました。お店の中は大変な人のにぎわいで、私たちが購入したTシャツはその後すぐに売り切れてしまっていました。
バルセロナで行われているので地理的に近い対戦相手のイネオス・ブリタニア(イギリス)の方がファンの数が多いのだろうなと予想していましたが、その予想は大きく外れてしまいました。来る人来る人チームウエアに身を包み、ヤァヤァとお互いが挨拶をしているかと思ったら、「あなたも来てたのねー」という感じで立ち話を始めて、ここはオークランドですか?と錯覚するほどでした。
ニュージーランドのメディア、スタッフによると、ニュージーランドから5千人のファンが押し寄せていたそうです。イネオスのフレディー・カー選手も冗談で「オークランドの半分がここにいるよね」と言うほどでした。
◎スーパーヨットの渋滞シーンに圧巻される
バルセロナにきて驚いたことの2つ目は、停泊しているスーパーヨットの多さです。大きいだけではなくて、ピカピカに磨かれているし、船上にはユニフォームを着た使用人がお盆に飲み物や食事を持って歩いていたり、船着場には送迎のゴルフカートが走っているし、上流階級の世界が垣間見られました。
レース日にはこれらのスーパーヨットだけではなく、大会スポンサーをしている企業やチームの応援団が出しているチャーター艇、地元の観光船業者が出している乗合船、小・中型のクルーザーもを出ていき、湾口は渋滞するような状況でした。
◎AC37クラブでセレブ気分を楽しみました
カップマッチ2日目(10月13日)は公式のホスピタリティーであるAC37クラブから観戦しました。
AC37クラブ内に設置されたイネオス・ブリタニアのホスピタリティゾーンに前日にレースが終わっていたハンナ・ミルズが来ていて、ちょっと話すことができました。
女子アメリカズ・カップのファイナルで負けてしまった次の日ということもあり、タフだったというような話をしていました。一緒に写真を撮ってもらおうとすると、「2人の方がいいでしょう?」と隣にいたイアン・パーシーが写真を撮ってくれるというおまけまでついてきました。
肉眼でレースを見るには少々遠かったですが、シャンパン(モエ・シャンドン!)やカヴァ、ワインが飲み放題、地元の食材を使ったケータリングも美味しく、それらをいただきながら、テラスでゆったりとテレビ観戦するのも良かったです。また、1レース目が終わった後、オールド・マグ(ア杯のトロフィー)がどこからともなく通路に現れて、間近で見て記念撮影してもらったのは貴重な経験になりました。
その日は風が弱く1レースの実施でしたが、そもそも風が吹かない予報だったので、1レースだけでも観戦する事ができてほっとしました。チケット代は1人1,100ユーロ+VAT(約22万円)と高めですが、セレブ気分を楽しめるので結構おすすめです。
◎乗合船で海上観戦してみた
カップマッチ3日目(10月15日)は乗合の観戦艇から海上観戦でした。チケット代は一人220ユーロ(約3万6千円)ですが、バウンダリーの直近から観戦できる臨場感はやはりいいものでした。食べ物や飲み物は含まれませんがキオスクで購入できます。スーパーヨットを間近に見られるのも楽しかったです。
◎レースビレッジのパブリック・ビューイング
レースビレッジ内に3つ、ビーチ沿いの2つのファンゾーンが設定されパブリック・ビューイングもできるようになっていて、ファンでにぎわっていました。
これらの場所には公式の出店もでていて、ビールを飲んだりスナックを食べながら観戦するファンでにぎわっていました。座席の数は限られているので、すぐに埋まってしまい、多くのファンは立ったまま応援していました。それ以外だと、Wホテル下の防波堤とポート・オリンピックの防波堤も多くのファンが集まる観戦場所となっていました。
パブリック・ビューイングで見る日は大抵、昼前にどちらかのチームベースの近くに行ってドックアウトを見学してから移動してレース観戦していました。レースが終わるとまたベースへ行ってドックインを見学してからメインビレッジへ行き、ステージで行われるセーラーによるブリーフィングのコメントを聞いてから帰宅していました。
ドックアウトでは、ニュージーランのショーがなかなか見応えがありました。まずは、音楽が流れ、キウイ達は歌い始めます。ドックアウトの時間になると、マオリ族がハカで選手を鼓舞し、ワカと呼ばれる木の船に乗ったマウイ族がボートを漕いでAC75を先導して送り出していきます。
◎アメリカズカップの表彰セレモニー
レースビレッジからはレース海面が全く見えなかったので敬遠していましたが、最終日となった21日は表彰式の事も考え、一日中メインステージの前で椅子に座って観戦しました。
これが期待値を上回るものでした。それぞれのチームの出艇の様子を実況してくれたり、出艇後の様子や海況情報、出艇してからレースが始まるまで約1時間半ほどあるのでその間にAC75の説明、レースビレッジとビーチ際のファンゾーンの中継、クイズ、司会のジェシーの記録に勝ったら景品がもらえるスピンバイク・チャレンジ、レース後にはマオリ族によるパフォーマンスショーなど、イベントがあり、待ち時間も楽しく見ていられました。
表彰式は席が設けられた場所は来賓席となり、一般観客は完全に立ち見となりました。私たちは2時間以上前から場所取りしましたが、スリーピート(三連覇)を達成した、ピストル・ピートこと、ピーター・バーリングとSailGPの時のボスだったネーサン・アウタリッジの2人がアメリカズカップを持ち上げるところを肉眼で見られて大満足でした。
◎いまひとつ寂しかったかな? 女子アメリカズ・カップ
女子アメリカズ・カップは、セミファイナルとファイナルを見ることができました。セミファイナルはポート・オリンピックの防波堤から観戦したのですが、人が少なく、チームの関係者(家族、チームサポーター、スポンサー関係者)しかいない印象でした。
表彰式にも参加したのですが、こちらも関係者が大半といった印象でした。全体を通してアメリカズカップ本戦の前座という感が否めず、盛り上がりはイマイチと言った印象でした。
また、大会運営側や参加者は歴史的な瞬間だといった言葉を多用していましたが、ワンデザインの船を使っているにも関わらず参加チームのレベル差が大きすぎて、レース自体も正直ちょっと興醒めしてしまいました。
実艇での練習時間が豊富なACチーム(グループA)+スウェーデンとスウェーデンの除く招待チーム(グループB)では明らかなパフォーマンスの差があり、資金力レースになってしまっていたのは残念です。次の大会でも開催されるのであれば、独立系チームの公式練習時間を増やすなど、資金力の差を平すような仕組みを作りこの辺りを改善してもらいたいものです。
今のAC艇はフィジカルの面では男性と女性の優位性というのほぼ差がないと思うので、女性にとってシニアのACチームでプレイヤーとして乗ることも夢ではないと感じました。それに若いセーラーにとってアメリカズカップセーラーとなる道筋が見えたということは大きな一歩ではあると思います。
いろいろと問題はあるものの、ユースとウィメンズも継続して行くことが大事だと思うので、次回もぜひ開催して欲しいと思います。同時に日本からも挑戦するチームが出てきて欲しいものです。
- 【コラム】ワカコ・レーシング(連載記事) https://x.gd/hlcJv