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【パラオ】日本に帰りたいと思ったこともあったけれど、、、パラオの一週間

 大学ヨット部を卒業して、ちょっとしたきっかけでパラオ共和国で子供たちにヨットを教えることになった仙田悠人さん。青年海外協力隊として2年間、現地に滞在してセーリングを広める活動をしています。さて、今回は仙田さんの南の島での一週間について紹介します。(BHM編集部)

太平洋に浮かぶ島、パラオ共和国でセーリングを教えている仙田悠人さんの連載2回目は普段の生活についてです。こんな美しい海でセーリングできるなんてうらやましい!と驚きますが、そう簡単な話ではないようです

◎ヨットの修理に明け暮れる。水・木・金曜日は試行錯誤の日々

 今回は、ぼくの一週間がどんな感じなのか書いてみようと思います。生活リズムは月火が休みで、水~金は作業、土日は練習と、まさに「パラワンタイム」(島国時間)で進んでいます。最近は若者がひとり来てくれて、そのおかげで保護者の方々も多く手伝ってくださっています。(レポート・写真提供/仙田悠人)

 水・木・金の3日間は、事務作業と修理の日。オフィスも先人の指示もない中、何から始めればいいのか模索するところから始まりました。社会経験も組織運営の経験もない僕にとって、この道はゼロからのスタートです。

 最初は、修理だけが唯一の選択肢でした。しかし、暑さに弱いぼくには修理作業が想像以上に辛い。そして、ひとりで行う作業には限界がありました。

 珊瑚や他の船との衝突でできた傷、置き方のミスでできた傷など、修理は絶えません。高温多湿のコンテナでの保管も船体の劣化を促進し、外置きにしてもスコールの影響でFRPが割れることもある。だから修理は必須なんです。でも、やる気と実際の進捗は理想通りにいかないことが多いです…。

 今では事務作業も充実しています(笑)。事務作業では、書類作成、先方とのやり取り、練習資料の作成、広報活動に取り組んでいます。

 特に英文書類の作成には時間がかかりますが、保護者の方々のサポートチームが作ってくれた資料に助けられながら進めています。チラシ作りは未経験でしたが、想像力を使うので、完成までに時間がかかる一方で新鮮な体験です。

高温多湿のコンテナ(見るからに居心地が悪そうなコンテナですね※編)、強い日差しと強烈なスコールでヨットの劣化は激しく、一週間の半分は修理しています

◎パラオらしい練習で子供たちとセーリングする土曜、日曜

 土日は練習日で、午前9時から午後4時までヨットの指導をしています。以前は子供たちが少なかったので、クラス分けはありませんでしたが、今は土曜日が初心者、日曜日が中級者の日になっています。

 クラス分けがあっても、ヨットを楽しむことが大切な軸になっています。僕自身もOP(オプティミスト級)を研究しながら、その奥深さに引き込まれています。プロのコーチとは違いますが、日本の常識にこだわらずパラオに合った持続可能な練習プランを日々改良しています。

 子供たちが持つ航海のDNAや文化を引き出すために、セーリングを単なるスポーツではなく「乗り物」として楽しませることを大切にしています。

 例えば「セーリングピクニック」という企画では、子供たちと一緒にOPで冒険に出かけます。日本パラオ友好の橋まで3時間のアップウインドで進み、そこでランチをした後、帰るというものです。

 彼らがのびのびと成長していく姿を見ると、理論詰めにするのではなく、自然と楽しむことが大切だと感じます。

土日は子供たちが集まってきてセーリング。ミクロネシアの伝統的な航海術をDNAに持つパラオの子供たちとたのしみながらセーリングします
ヨットの座学もやっています。セーリングの基本やヨットレースについて学んでいます

◎セーリングで日本とパラオの歴史と現在のつながりを感じる

 ぼくたちが船を置いているアラカベサン島には、第二次世界大戦中に日本海軍の拠点があった場所があります。今でもその痕跡が地域のランドマークとして残っています。

 また、練習場所であるスコージョー沖は、かつて水上飛行機の発着場だった場所で、現在は、そこに立派な珊瑚が成長しています。年月の流れを感じずにはいられません。

 戦争を美化するつもりはありませんが、かつてこの地を守ろうとした兵士たちの子孫である子供たちが、いま平和の中でヨットを楽しんでいる。その光景は感慨深いものがあります。

島ではお金では得られない貴重な体験をさせてもらっています。大変なこともありますが、島の人たちに支えられながら楽しく生活しています

◎日本に帰りたいと思ったこともあったけれど、、、

 月火は休みで、他の隊員のスケジュールと重ならないことが多いので、ひとりの時間を大切にしています。最近は、短期大学の図書館で調べ物をしたり、島の文化や伝統航海術についてフィールドワークをすることに夢中です。

 本を出せるほどの熱量で取り組んでいます(笑)。パラオの人々が紡いできた歴史や文化を後世に残す手伝いができればと思っています。

 このように、ぼくの生活は決して「キラキラ」したものではありません。しかし、唯一無二のリッチな経験であることは間違いありません。

 何度か日本に帰りたいと思ったこともありましたが、今は生活にも慣れ、文化の面白さや人々の温かさに魅了されています。

 協力隊として支援しにきたつもりが、保護者の方々に手を貸していただくことばかりです。みなさん、パラオでも屈指のサポート人であると確信しています。Mesulang!(パラオ語)、Hapru ma hatawai dewa!(ソンソロール語)、いつもありがとうございます!(日本語)。

 ぼく自身はこれからも多くの方々に支えていただくことばかりですが、所属するPSA(パラオセーリング連盟)は少しずつ着実に活動の幅を広げていると感じています。

 協力隊らしく、困難を乗り越え、その先にある景色を見たいと願います!

休日に行った世界遺産ロックアイランのミルキーウェイで沈殿している天然の泥パックをしてもらいました!

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◎パラオへ贈るレーザー級(ILCA)を探しています
 いま、パラオ共和国で活動するジュニアセーラーが、初のオリンピック出場へ向けて挑戦をはじめました。でも、パラオには出場を目標としているレーザー級(ILCA)がありません。もし、みなさんが、使っていないレーザー級や、関連する艤装品をお持ちであれば、それをパラオの子供たちに使ってもらえないかと考えています。艇をご提供いただける方、また眠っているレーザー級をご存知の方がいましたら、日本パラオ青少年セーリングクラブへご連絡いただけないでしょうか。(BHM編集部)

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◎連絡先
一般社団法人
日本パラオ青少年セーリングクラブ(JPYSC)
神奈川県横浜市金沢区白帆一番地
URL:https://jpysc.org/e-mail:info@jpysc.org

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