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パールレース総合優勝〈KLC HORIZON 6〉レポート【 準備編】

 今年のパールレース。みなさまはいかがでしたでしょうか?もう暑くて暑くてやばかったですね。ヨットレースに「たら、れば」がつきないと思いますが、今回も運よく総合優勝することができました。(文/荒川海彦)

パールレースは180マイルのロングレースです。今年の総合優勝艇〈KLC HORIZON 6〉はどのようにパールレースに挑んだのか。インショア、オフショアのレースで活躍する荒川海彦さんのレポートです

 私が乗った〈KLC HORIZON 6〉はスタートまでにどんな準備をしてきたのか。ほんの少しだけ紹介させていただきます。

1 自艇のウィークポイントとストロングポイントの把握
2 レース展開予想
3 レースコースで使用するセールインベントリー
4 レースタイムを考慮した飲食料と熱中症対策
5 レースコース上で行われるセールチェンジとタイミング
6 レースクルーの選抜と招集
7 ショアクルーとデリバリークルーの重要性

1 自艇のウィークポイントとストロングポイントの把握

 簡単なようで難しく、わかっているようで実はわかっていないのが自艇のウィークポイントとストロングポイントの把握です。

 レーティング数値とフリートで走るライバル艇に対してどの部分で負けてるのか? 優位に立っているのか? セイリングテクニックが足りてないのか? クルーワークが悪いのか?コースが悪いのか?艇のポテンシャルが悪いのか? 強風が速いのか遅いのか? アップウインド/ダウンウインドが得意なのか? フラットウォーター/バンピーが得意なのか? この正しい分析ができると対処法がわかりますが、これはいろんな艇種に乗っていないとわからないかもしれません。

 これがわかるとレース展開、勝負所、リラックスポイントがわかってレースも組み立てやすくなります。そしてターゲットレースへの準備・段取りは早いに越したことはないです。

 今年もGWに開催された「オフショアダブルス日本選手権」をターゲットに準備してきましたのでパールレースの準備も比較的順調に進められましたが、カーボンマストの到着が遅れに遅れてカーボンマストでのセイリング回数が少なくレース中のトラブルを招くはめに。(詳しくはレース編で)

 まだ記憶が鮮明なうちに課題を洗い出し、来年へ向けての対策をしてください。

 セールの新調、改造、セーリングギアのトライアンドエラー、クルーワークなどやることは盛りだくさんです。時間はいくらあっても足りませんが、コンディションや季節的なことも考慮して優先順位を設けてこれはここまでにはやっておくという感じで期限を設定するといいでしょう。

 特にディスタンスレース/ロングレースのキーポイントは、“高さ低さは二の次でアベレージボートスピードの追求”です。

 〈HORIZON〉に関していえば軽風のアップウインドがウィークポイントでここを補うためにフライングヘッドセールを導入(別途IRC申告必要)。昨年秋からノースセール大山氏とコンタクトを取りながら製作していただきました。

 数ポイントのレーティングペナルティはありますが、〈HORIZON〉にとってはペナルティを払っても問題ないくらいの戦闘力抜群なセールで今シーズンの勝利に大きく貢献しました。

2 レース展開予想、3 レースコースで使用するセールインベントリー

 今年は台風の影響でどうなるのか? みなさんも天気図を固唾を飲んで見守っていたと思います。

 今回、久々にナビゲータに森治彦(通称モリモリ)が復帰。スタートの約1カ月前から長期予報、ラニーニャ現象、太平洋高気圧、梅雨前線、そして海洋情報をワッチしてもらい一週間単位で情報共有していました。

 スタート3日前にはレースサマリーも固まり、回航プラン、レースで使うセール、ギアを決定しました。今年はハイペースなレース展開で、しかし相模湾に入ると微風予報でした。

 セールインベントリーは以下の通り。
 スタート〜神の島WP(ウエイポイント)は微風の片上りアップウインドなのでJ1、フライングヘッドセールのC60

 神の島WP〜利島は南系の微風でC60→A0→A1→S1

 利島〜江の島はアップウインドやダウンウインドの可能性あり。

 私はパールレースに関してはルーティンソフトは使用しません。たった180マイルだし、フルクルーだし、現場の状況で判断します。

4 レースタイムを考慮した飲食料と熱中症対策

 レースタイムは25〜28時間と予想。近年異常に暑い夏。デッキ上もめちゃくちゃ暑いです。特にヘルムスマン、トリマーは他のクルーとは違い日陰に避難できません。

 ひたすらトップスピードを追求し続けていて、灼熱地獄の中ある意味危険な状態でのレースが続きます。

 飲み物の補給はもちろんですが。その他にもハットや冷却スプレーや冷却パッド、OS1の粉などで対策をしてました。この時ばかりは冷蔵庫付の艇がうらやましいです。

5 レースコース上で行われるセールチェンジとタイミング

 特に重要なのが、各セールのキャラクターを熟知すること。セールのキャラクター毎のクロスオーバーポイントの把握。各マニューバでシート取り回し。各クリッピングポイント。チェンジャーシート/レギュラーシートのトランスファー。レース展開を考慮したワッチのタイミング

6 レースクルーの選抜と招集

 常にボートポテンシャルを発揮させられる優秀なヘルムスマンとセールトリマーは必要不可欠です。マストフィッティング、ハリヤードポイントを熟知しセールチェンジをスムーズに行うことのできるフォアデッキクルー。そしてすべてのクルーがすべてのポジションをこなせるのが理想。レースクルーのオンデッキ/陸上での役割分担。

7 ショアクルーとデリバリークルーの重要性

 レースに集中できるように現地での送迎、レンタカー、食料調達、宿の段取り、積まないセールや回航荷物のピックアップ、個人荷物(必要最小限をオンボード)の移動、宅急便の手配、回航の段取りなどなど。

 準備編はここまでにしておきます。

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