【コラム】セーリング強国が再始動。オーストラリアのアメリカズカップ事情
こんにちは! 今回はワカコ・レーシングが拠点とするオーストラリアのアメリカズカップ事情を紹介したいと思います。(レポート・写真/梶本恆平 ワカコ・レーシング)
昨年は1983年の〈オーストラリアⅡ〉の歴史的な勝利から40周年ということで、式典が執り行われたり、例年よりもメディアでアメリカズカップの話題を見かけることが多かったように思います。その追い風に乗ってか、今年のユース&プーチ・ウィメンズ・アメリカズカップに挑戦するチーム・オーストラリア・チャレンジが始動しています。
ユース&プーチ・ウィメンズ・アメリカズカップは、アメリカズカップ期間中におこなわれるその名の通り、ユースチーム、女子チームによるイベントです。
アメリカズカップに出場するニュージーランド、イギリス、スイス、イタリア、アメリカ、フランスに加え、スペイン、オランダ、カナダ、ドイツ、スウェーデン、オーストラリアの合計12カ国が出場します。
オーストラリアチームを率いるのはオリビア・プライスです。2012年ロンドン・オリンピックの女子マッチレースで銀メダルを獲得した時のヘルムで、その後も断続的に49erFX級でキャンペーンをしています。今回のパリ・オリンピック・サイクルでも2023年オランダ・ハーグの世界選手権で銅メダルを獲得してメダル獲得を期待されています。
チームの母体となるのは伝統のCYCA(クルージング・ヨット・クラブ・オブ・オーストラリア)です。〈オーストラリアⅡ〉でスキッパーを務めたジョン・バートランドとスーパー・マキシ〈コマンチェ〉の現オーナーであるジョン・ウィニング・ジュニア(ハーマン)が後援者として名を連ねています。
ユース&ウィメンズ・アメリカズカップのオーストラリアチームは、130人以上の応募者の中から女子9名、男子8名の合計17名がセーリング・チームとして選抜され、AC40の公式シミュレーターを使ってトレーニングをしています。
女子メンバーにはオリビアが銀メダルを獲得した時のチームメイトであるニーナ・カーティス、2016年リオ・オリンピックのナクラ17級で銀メダルを獲得したリサ・ダーマニン、2016年ユース・ワールドの29er級優勝ペアであるターシュ・ブライアントとアニー・ウィルモットなどオーストラリアを代表する女性セーラーが選ばれています。
男子の方も2016年ユースワールド、レーザーラジアル級優勝のフィン・アレクサンダー、現49er級ジュニア・ワールド・チャンピオンのジャック・ファーガソンなど次世代では世界トップレベルの選手が選ばれています。ターシュとアニーの2人は年齢的にユース大会にも参加可能だそうです。
1983年以降も現在に至るまで数々のアメリカズカップ・セーラーを輩出してきたオーストラリアですが、IACC時代の2000年オークランド大会に出場した〈ヤング・オーストラリア〉(若干20歳のジミー・スピットヒルがスキッパーでした)を最後に、四半世紀近くも国としては出場から遠ざかってしまっています。
また、現在世界最高のセーラーと言われるトム・スリングスビー(現在はアメリカン・マジック所属)が長く地元オーストラリアのシンジケート設立の可能性を探っていたことも知られていますが、実現には至っていません。今回のユース&ウィメンズ・チームの挑戦は新たな波を作り出す試みとして注目されています。
オリビアは今回のプロジェクトの意義をこう語っています。「これは、今回のアメリカズカップ、私たちだけの話ではないんです。将来の夢の話なんです。オーストラリア中の若い子たちに、世界レベルの舞台で自分達の国を代表する道があることを示すことなんです。そして、5年、10年後に資金を見つけて、本物のアメリカズカップに参加し、勝つことなんです。私たちの国にはそれができるセーラーがいます」
- Team Australia Challengehttps://www.teamaustraliachallenge.org/
- YOUTH & PUIG WOMEN’S AMERICA’S CUPhttps://www.americascup.com/youth-and-women
- 【コラム】ワカコ・レーシングhttps://x.gd/hlcJv