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【パラオ】パラオの海で感じたヨット文化。日本とは違う海との向き合い方

 2025年12月からパラオ・セーリング連盟(PSA)でコーチとして赴任する神谷 仁さんの現地レポート第2回です。日本とパラオの海との向き合い方や接し方の違い。そして古くから伝わるカヌー文化に触れて感じたことなど。日本とは違う海やヨットとの付き合い方に刺激を受けているようです。(BHM編集部)

先日の週末にはOPの代わりにトラディショナルカヌーを出して子供たちで乗りました

◎日本とは違う、パラオのヨット環境

 パラオに赴任してまず驚かされたのは、ヨットを取り巻く物理的な環境の違いです。ヨットはすべてコンテナの中に保管され、練習のたびに出し入れします。さらに、9.9馬力の船外機も使用後は必ず取り外し、同じくコンテナへ運び入れて保管しています。これらは盗難防止のためです。

 日本で当たり前だった整備された艇庫や決められた動線はここにはありません。潮が大きく引くと、目の前が数十メートルも干上がり、限られた船台で何度も往復する必要があります。準備や片付けにかかる時間や労力も大きく、最初は戸惑うことの連続でした。

 しかし、この環境だからこそ、限られた条件の中で工夫を重ねる姿勢が自然と求められているのだと感じます。

◎海と人が近い国のヨット文化

 次に強く感じたのは、人の雰囲気やヨットに向き合う姿勢の違いです。ここでは、ヨットに対する目的や関わり方は1人ひとり異なります。日本のクラブ活動のように全員が同じ目標やペースで練習に取り組むという感覚はあまりなく、それぞれが自分のペースで海に向き合っています。

 そのため、クラスをまとめて進めることは簡単ではありません。指示の出し方や説明の順番ひとつで、クラス全体の雰囲気や流れが大きく変わります。日本で当たり前だった「言えば伝わる」「流れに乗れば進む」という感覚が通用しない場面も多く、毎回試行錯誤が続きます。

 さらに、私の母語ではない英語でのコミュニケーションも課題のひとつです。一方で、海の上では笑顔が絶えず、うまくいかないことがあっても深刻になりすぎない空気があります。沈することへの恐怖や水そのものへの恐怖がほとんどない姿を見ると、大洋州の島国ならではの海との近さを実感します。

 「海に出ることそのものを楽しむ」という価値観が、生徒たちの姿勢から自然と表れています。

 また、パラオでの活動を通じて、伝統的なカヌー文化の存在にも強く心を打たれています。パラオでは、古くから海と共に生きる文化が受け継がれており、セーリングは単なるスポーツではなく、生活や歴史と深く結びついた営みです。

 特に伝統的なカヌーは、島々を行き来するための重要な移動手段であり、人々の知恵や技術、自然への理解が凝縮された存在です。現代ではモーターボートが主流ですが、それでもこうした伝統を守り、次世代に残そうとする動きが残っています。

地元のパラオ高校生(青い制服)に、彼らの授業の一環としてトラディショナル・カヌーの説明や試乗をしてもらいました

 この文化保存の一端に関われる可能性があることは、私にとって大きな意味があります。日本では競技としてのヨットに関わってきましたが、ここでは「速さ」や「勝ち負け」よりも、海とどう向き合い、どう受け継ぐかが重視されています。パラオでしか経験できない、唯一無二の活動だと感じます。

 このポジションを全うできる時間は2年(青年海外協力隊の任期)と限られていますが、だからこそ目の前の練習や日々の業務をこなすだけでなく、配属先の未来を常に考えながら活動していきたいと考えています。

 自分の存在や行動が、どのような形でこの場所に残り、どのような価値をもたらすのか。その問いを持ち続けながら、一つ一つの取り組みに向き合っていきたいと思っています。

 また、パラオでの生活や活動を通して、人と海との関わりをこれまで以上にゆっくりと感じ、考える時間を大切にしたいとも思っています。海が人々の暮らしや文化の中でどのような存在であるのかを見つめることは、自分自身の海との向き合い方を問い直すことにもつながっています。

 パラオの海と人々の中で、多くを学び、感じ、考えながら、自分なりの答えを少しずつ見つけていけたらと考えています。

会議の様子。後ろのおじさんたちはオンラインで会議をしています
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