【コラム】豪モスナショナルでオージー野郎のド根性を見た!
日本は寒い季節の真っ最中ですが、南半球のオーストラリアは真夏です。各クラスの全豪選手権が開催される時期でもあり、日本の夏から秋にかけてと同じように「ヨットレース本番!」といった賑やかな季節です。今月のワカコレーシング(シドニー在住の梶本和歌子と梶本恆平の2人組)は、シドニーからメルボルン郊外までクルマで走り、モス級オーストラリア選手権に出場してきました。(BHM編集部)

1月4日から10日まで、オーストラリア南東部ビクトリア州のマックレイ・ヨットクラブで「2026 モス級オーストラリア選手権」が開催されました。今回はフォイリング・モス、ノンフォイリング・モス、そしてニッキークラスとの同時開催となりました。(レポート/梶本和歌子 ワカコ・レーシング)
北はクイーンズランド、南はタスマニア、西はパース、さらにニュージーランドからも選手が集まりました。エントリー数はフォイリング・モスが15艇、ノンフォイリング・モスが27艇、ニッキークラスが4艇で、最も参加艇数が多かったのはなんとノンフォイリング・モスでした。
オーストラリア・モス協会の年次ミーティングでも、協会登録者数はフォイリング・モスを上回り、ノンフォイリング会員の方が多いとの報告がありました。現在、ノンフォイリング・モスのブームが来ていると言っても過言ではありません。
この時期はオーストラリア国内で多くのクラスがナショナル選手権を行う時期でもあり、モスクラスと他クラスを並行して活動している選手は日程が重なったため、参加者が少なかったことも理由のひとつとして挙げられます。
また以前のコラムでも触れましたが、フォイリング・モスは価格の高騰が大きな課題となっています。その影響でフォイリング・モスの選手数は減少傾向にあります。一方で、セーリングクラブの隅に長年仕舞われていたスコーやスキフ・モスを引っ張り出してレストアしたり、昔の設計図から艇を再建造したりと、ノンフォイリング・モスが再び活発になっているのが非常に興味深い点です。
ノンフォイリング・モスの選手の年齢層は、平均するとおよそ65歳前後でしょうか。フォイリングからノンフォイリングへ戻った選手もおり、皆それぞれのスタイルでレースを楽しんでいます。年齢を重ねても乗り続けられるモスクラスは、本当に魅力的なクラスだと改めて感じました。
1月4日にはインビテーション・レースとしてプラクティスレースが行われ、5日からナショナル選手権がスタートしました。期間中は天候が非常に不安定で、最高気温が45度に達した翌朝に17度まで下がるなど、30度近い寒暖差のある目まぐるしい天気で体調管理が大変でした。後半2日間はレースが成立しないほどの強風予報が出ていたため、レイデイを使わず、4日間連続でレースが行われました。
この時期のポート・フィリップ湾では、南南西から20ノット前後の安定した風が吹くのが一般的ですが、今回は6〜15ノットの北風、南風、東風が入り混じり、風向・風速ともに変化の激しいコンディションとなりました。
選手として参加した恆平によると、トップ3の選手たちはボートスピードが速いことはもちろん、フォイリング可能な風域の中でマニューバリングをミスなくこなし、風のシフトを的確に読んでいた点がさすがだったとのことです。
ノンフォイリング艇については、艇ごとのスピード差を考慮し、モスの大ベテランで協会の名誉会員でもあるフィル・スティーブンソン氏が考案したレーティングを用いて成績表が作成されました。





◎オーストラリアの若手セーラー、ウィル・サージェントの災難
モスは予期せぬタイミングで艇やパーツが破損することが少なくないクラスです。セーラーが細心の注意を払っていても、トラブルは突然起こります。今回は、タスマニの若手、ウィル・サージェント選手に起こった一連の出来事を紹介します。
大会前の事前練習で、帰着時にビーチで艇を横倒しにしていた際、サイドステイのピンが外れてリグが倒れてしまいました。幸いリグにダメージはなく、たまたま私たちが代替となるピンを持っていたため、それを提供しました。
プラクティレース前、リグを上げて出艇を待っていたところ、トップマストが突然折れてしまいました。まだ出発していないスコット・バベッジに連絡をして予備で持っているマストを持ってきてもらいました。
ナショナル3日目には、海上でボトムマストを折ってしまい、救助艇により回収されました。しかし、救助されてヨットクラブへ帰っている時に、救助艇のプロペラにラダーのホリゾンタル(水平翼)が接触し、トレーディング・エッジ(フォイル前部)がバキバキに割れてしまいました。
ラダーのホリゾンタルは他の選手から借りることができましたが、ボトムマストは会場には代替品を持っている選手がおらず、レース復帰は難しいかと思われました。
しかし、彼は諦めませんでした。偶然にもウラーラ・セーリング・クラブ(シドニー)を友人が訪れていることを思い出し、その友人がメルボルンへ運んでくれる可能性に賭け、ウラーラ・モスのチャットグループでボトムマストを貸してほしいと呼びかけたところ、快く貸してくれる人が現れました。
なんと、その友人は飛行機でウラーラからメルボルンへ飛び、翌日にはボトムマストが手元に届いたのです!
ブームとボトムマストのグースネック部分の厚みが合わなかったため、出艇直前まで工具でブームを削り、ついにレース復帰を果たしました。
これには私も大いに驚かされました。彼は非常にタフなメンタルを持つ選手だと、心から感心しました。このような出来事もモスのレガッタの一部ではありますが、ウィル選手にはこれからもモスを続けてほしいと強く思いました。
今年のモス・ワールド選手権は、11月にパースのマウント・ベイ・セーリング・クラブで開催予定です。フォイリング・モス、ノンフォイリング・モスの同時開催となり、非常に賑やかな大会になりそうです。
◎2026 オーストラリアン・モス・ナショナル 成績
フォイリング・モス
1位 ジャック・ファーガソン
2位 スコット・バベッジ
3位 サム・ストリート
ノンフォイリング・モス
1位 ナイジェル・ファーガソン
2位 ブライアン・ウォーカー
3位 イアン・クレイズ
ニッキークラス
1位 フィンリー・グリーソン
2位 ジョシュ・ベーコン
3位 リアム・ディクソン
4位 ビビ・スティフター




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