2025年バルクヘッドマガジン・セーラー・オブ・ザ・イヤー発表
こんにちは、バルクヘッドマガジン編集長です。2025年もいよいよ最後の一日になりました。12月31日は、バルクヘッドマガジン恒例のセーラー・オブ・ザ・イヤーの発表です。(BHM編集部)
セーラー・オブ・ザ・イヤーはバルクヘッドマガジン編集部がその年に活躍したセーラーへ贈る特別な賞です。選考の基準はとてもシンプルで、どれだけ人に刺激を与える行動をしたか、簡単にまねのできない「すごい」ことをしたかに注目しています。
セーラー・オブ・ザ・イヤーは、これまで17回の歴史を重ねてきました。高校生からオリンピック、世界一周セーラーまで名だたる顔ぶれが揃っています。しかし、受賞の理由は、勝利ではなく敗退であったり、1位ではなく2位だったり、成功ではなく失敗であったり、実にさまざまです。
共通しているのは、その年に周りのセーラーに影響を与えるような行動をしたということです。気になる方は、その年のバルクヘッドマガジンを読み返してみてください。
バルクヘッドマガジン・セーラー・オブ・ザ・イヤーは通称「ヨット馬鹿大賞」と呼ばれています。バルクヘッドマガジンではヨット馬鹿という言葉をセーラーに対する最大級の褒め言葉としています。
この賞にトロフィーや賞状はありません。それ以上に「彼はヨット馬鹿に選ばれた真のセーラーだ」という称号が与えられます。人から馬鹿と呼ばれるほどセーリングに打ち込んだとしたら、これほど名誉なことはないでしょう。
それでは、2025年度バルクヘッドマガジン・セーラーオブ・ザ・イヤーを発表します。

2025年、國米選手は大西洋横断「ミニトランザット」に挑戦しました。ミニトランザットはフランスをスタートして、カナリア諸島を経由してカリブ海の島まで走る大西洋横断ヨットレースです。2年に一度開催され、國米選手はこの大会の出場、完走、上位入賞を目標に2年間にわたり準備してました。
事故が起こったのはスタートして3日後の9月24日のことです。ポルトガル沖を走っていたところ、未確認浮遊物に衝突(クジラやシャチのような動物との衝突はよく報告されていますが、何にぶつかったのかは分かっていません)。
キールの付け根から海水が入り、船が傾き、國米選手は遭難信号を発信。そして、近くを走っていた貨物船〈JOE〉号に救助されるという事故がありました。命が無事で、ケガがなかったことは、本当に奇跡としかいいようがありません。
この事故の詳細は、本人が寄稿してくれたバルクヘッドマガジン記事をご覧ください。 https://bulkhead.jp/2025/10/113084/
救助された國米選手はすぐに近くの港に寄って下船することになると思いきや、、、なんと18日間も貨物船のなかで生活することになりました。國米選手はその後、アフリカ・ガーナで下船することになりました。
バルクヘッドマガジンが知る限り、大西洋横断ヨットレース中に遭難救助された日本人セーラーはいないし、そのあとアフリカへ連れて行ってもらったという人はいません。
目標を達成できなかったことは悔いの残ることで、國米選手は「いまでもそのときのことを夢に見る」と話していました。 2年間の準備が思わぬ形で終わってしまったことは、本当に無念でしょう。
しかし、この(やろうと思ってもできない)貴重な体験をしたことは、彼にしか持ちえない大きな経験になったと思います。
また、彼の話を聞くと、船と海の現実世界をリアルに感じることができます。貨物船の中で働いているロシア人船長をはじめ、フィリピン人や多国籍の船員との交流。貨物船のなかでの食事や楽しみ。アフリカの港に入るときの危険。特別な入港準備など。
國米選手と話す機会があったら、ぜひ、いろんな話を聞いてみてください。わたしたちが経験したことのない貴重な話を聞かせてくれることでしょう。
2025年のセーラー・オブ・ザ・イヤー=ヨット馬鹿大賞は、國米 創に決定します。國米選手の今後の活躍を楽しみにしています!

◎セーラー・オブ・ザ・イヤー受賞者一覧
第17回 2024年 岡田奎樹(パリ五輪銀メダル)
第16回 2023年 吉岡美帆(2度目の470ワールド金メダル)
第15回 2022年 外薗潤平(470、スナイプ両クラス全日本制覇)
第14回 2021年 霞ヶ浦セーリングチーム(高校多種目制覇)
第13回 2020年 松尾虎太郎(スキッパー、クルーで活躍)
第12回 2019年 鈴木晶友(ミニトランザットで大西洋横断)
第11回 2018年 京都大学ヨット部(全日本インカレ総合8位)
第10回 2017年 亀井直文(GC32コパ・デル・レイ優勝)
第9回 2016年 白石康次郎(4度目の世界一周に挑戦)
第8回 2015年 高山大智(日本初420ワールド優勝ほか)
第7回 2014年 土居一斗、愛実兄妹(アジア大会兄妹銀メダル)
第6回 2013年 テンクォーター(日本初トランスパック優勝)
第5回 2012年 近藤愛、田畑和歌子(世界ランキング1位)
第4回 2011年 後藤浩紀(モス級。日本最速記録達成)
第3回 2010年 慶應義塾大ヨット部(インカレ総合準優勝)
第2回 2009年 原田龍之介、吉田雄悟(470で相模湾一周)
第1回 2008年 山田 寛(プロセーラー)
※ヨット馬鹿(YB)エンブレムは、大坪明ヨット馬鹿デザイン事務所に制作していただきました。毎年ありがとうございます
- 【過去記事】バルクヘッドマガジン・セーラー・オブ・ザ・イヤーhttps://x.gd/HiR9K