2028年ロス五輪に向けて新しい動き。セーリンググランドスラム
2024年夏のパリ五輪が終わって半年がたちました。世界は次のオリンピック、2028年ロサンゼルス大会へ向けて動き出そうとしています。(BHM編集部)
オリンピックは通常4年周期で開催されています。しかし、東京五輪がコロナの影響で1年遅れで開催されたことで、パリ五輪までの期間が1年間短縮されました。選手や運営の準備期間は3年となり、全てが駆け足で進行しました。
しかし、パリからロスまでは4年あります。このなかで五輪セーリングに特化したあたらしい国際シリーズが生まれました。セーリング・グランドスラム(SGS)は通年開催されている国際大会に加えて、ロス五輪会場(米ロングビーチ)のレガッタを含むシリーズです。
セーリング・グランドスラム(SGS)は下記の5大会で構成されます。
1 プリンセスソフィア杯 3月28〜4月5日 スペイン・マヨルカ島
2 フランス・オリンピックウィーク 4月19〜26日 フランス・イエール
3 キールウィーク 6月21〜29日 ドイツ・キール
4 ロングビーチ・オリンピックレガッタ 7月12〜20日 アメリカ・ロングビーチ
5 オランダ・ウォーターウィーク 9月17〜21日 オランダ・アルメレ
これらの大会はロス五輪までの期間、選手だけでなく、オリンピックの準備、運営スタッフの育成や五輪種目の新しいフォーマット、レースに必要な最新機器を試す場となるようです。
以前、ワールドセーリングが「ワールドカップシリーズ」と称して国際大会のシリーズ化を企画しましたが、東京五輪を前に失敗におわった例があります。その理由のひとつは、遠征費用のかかる欧州以外の大会に、欧州選手が興味を示さなかったこと。また、ワールドセーリングが大会スポンサーを規制したことで、地元の協力が得られにくくなったことも原因といえます。
しかし、「オリンピックの準備」という部分でパリ五輪は満足ではなかったのも事実です。パリ五輪ではさまざまな変化がありましたが、不十分なものもありました。特に新種目(iQFOiL、フォーミュラカイト)、また改革が期待されたレースフォーマットの変更については十分な準備をしていたのかというと疑問が残ります。
パリ五輪でiQFOiLのマラソンをご覧になっていた方ならご理解いただけるでしょう(競技を一時的に止めて全海面を使いスタートしましたが、風なくなりノーレース)。また、iQFOiL女子のトーナメント式メダルシリーズではGBR(予選で圧勝。決勝でも最終マークまでトップを走っていた)が、最終マークで風が大きく振れたため金メダルを逃したことは、イギリスを中心にメダルシリーズの不平等さを指摘する声があがりました。
自然に左右されるセーリングは、時に不平等さを伴う競技であることはセーラーなら周知の事実です。この不平等になる要因を極力なくすためにレース運営は全力を尽くすのですが、残念ながらオリンピックはメディアで紹介されているほど、最高のコンディションでおこなわれていないのが現状です。
オリンピックを現場で20年間取材してきたバルクヘッドマガジンが感じるのは、最高レベルに高めて挑む選手以外の部分は「付け焼き刃」「臨時に作られたハリボテ」ということ。そう考えるとオリンピックの準備としてSGSに期待する部分は大きく、フェア精神に基づいた五輪セーリングの新しいフォーマットと持続的な発展、そしてロス五輪の成功を楽しみにしたいと思います。
◎ロサンゼルス五輪 基本データ
期間:2028年7月21〜8月6日
場所:カリフォルニア州ロングビーチ
種目:
男子ひとり乗りディンギー/ILCA7
女子ひとり乗りディンギー/ILCA6
男女ふたり乗りディンギー/470
男子スキフ/49er
女子スキフ/49erFX
男子カイトボーディング/フォーミュラカイト
女子カイトボーディング/フォーミュラカイト
男子ウインドサーフィン/iQFOiL
女子ウインドサーフィン/iQFOiL
男女マルチハル/ナクラ17
※ロサンゼルス五輪の種目とメダル数はワールドセーリングが発表したもので、現時点でIOCが最終決定したものではありません。
- セーリング・グランドスラム(SGS)https://www.sailinggrandslam.com/