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2024年バルクヘッドマガジン・セーラー・オブ・ザ・イヤー発表

 みなさん、こんにちは。バルクヘッドマガジン編集長です。2024年も終わりに近づいています。みなさん、2024年はどんな年でしたか? 12月31日はバルクヘッドマガジン年末恒例のセーラー・オブ・ザ・イヤーの発表です。(BHM編集部)

 セーラー・オブ・ザ・イヤーは、通称「ヨット馬鹿大賞」と呼ばれるバルクヘッドマガジンが主催する独自の賞です。2008年にはじまり、これまで16回開催され16選手/チームが受賞してきました(欄外参照)。

 選考の基準はとてもシンプルです。いかに人に刺激を与える行動をしたか、簡単にまねのできない「すごい」ことをしたかに注目しています。

 ヨットの関係する「すごいこと」ってどんなことでしょうか? 目標としている大会で優勝することはわかりやすいかもしれません。でも、過去の受賞者を見ると分かりますが、受賞理由は順位だけではないのです。

 ひとつ例をあげると、2009年に受賞した原田龍之介/吉田雄悟はご存知のようにロンドン五輪470日本代表チームです。受賞当時は五輪に向けて猛練習している時期で、なにを思ったのか、トレーニングのひとつとして相模湾一周プロジェクトを立てました。

 コースは葉山沖をスタートして伊豆大島を回航、さらに熱海沖の初島をまわって葉山へ戻る直線で90マイル以上になるロングコースです。40フィートのクルーザーでも丸1日掛かる航程です。この長距離を470で走破したのですから、、、通常では考えられない冒険です。

 バルクヘッドマガジンではヨット馬鹿という言葉をセーラーに対する最大級の褒め言葉としています。この賞にトロフィーや賞状はありません。それ以上に「彼はヨット馬鹿に選ばれた真のセーラーだ」という称号が与えられます。人から馬鹿と呼ばれるほどセーリングに打ち込んだとしたら、これほど名誉なことはないでしょう。

 さあ、2024年度バルクヘッドマガジン・セーラーオブ・ザ・イヤーを発表します。

2024年度バルクヘッドマガジン・セーラー・オブ・ザ・イヤーは岡田奎樹に決定します

 多くの方が予想していた通りかもしれません。岡田選手は東京五輪470日本代表で、東京五輪後、吉岡美帆選手と組んで2023年の世界選手権で金メダルを獲得。そして2024年のパリ五輪で銀メダルを獲得しました。

 パリ五輪最終日となったメダルレース当日、バルクヘッドマガジン編集長はマルセイユの海の上でメダル獲得の瞬間を目にすることができました。編集長はとても運が良かったと思っています。

 それは2004年から海外ヨットレース取材を続けてきた編集長が望んでいたシーンであり、この瞬間を画面越しに見ている未来のセーラーにどんな影響を与えてくれるだろうと考えると涙がでてきました。

 でも、岡田選手の直接的な受賞理由は銀メダル獲得ではありません。

 マルセイユの海に飛び込んだり、メダル獲得選手と一緒に写真を撮ったりする感動的な海上セレモニーが終わると、選手たちはハーバーに戻ってきました。ここで、テレビ局や新聞社のインタビューがおこなわれます。個別取材が終わると、ハーバー施設内に移動して公式の記者会見がおこなわれます。選手たちは忙しく取材に応じなければなりません。

 公式記者会見では壇上にメダリストが並び、記者たちから英語で質問が投げかけられます。いろんな質問がある中、岡田選手に「オリンピックが終わったらどんなことをしますか?」という質問がありました。

 岡田選手は「プライベートで乗っている一人乗りのヨットがあるんですけど、それに乗りたいです」と答えました。プライベートで乗っている一人乗りのヨットとは、彼が夢中になっているモスのことです。この発言を聞いたとき「これが真のヨット馬鹿なんだなぁ」(褒めています)と思いました。

 毎日、ヨットを速く走らせることばかりを何十年も考え、1日の多くを海上で過ごし、オリンピックで銀メダルを取った直後のコメントが「ヨットに乗りたい」ですから、これにはまいりました。

 岡田選手の活躍、意識や考え方は飛び抜けている部分もあるように見えますが、冷静に考えればそうでないことに気がつきます。好きなこと、興味があることに妥協せず、追求していった結果がオリンピックのメダルであることが分かるかと思います。ヨットをうまくなりたいと考えているバルクヘッドマガジン読者にとって、最高のお手本ではないでしょうか。

 2024年セーラー・オブ・ザ・イヤーは岡田奎樹選手に決定します。これからのあたらしい挑戦を楽しみにしています。

岡田奎樹(おかだ けいじゅ)。1995年年12月2日生まれ。福岡県北九州市出身。身長170cm。大分別府、福岡でOPに乗り、2010年OP世界選手権で銅メダル。唐津西高〜早稲田大を経てトヨタ自動車東日本所属。2021年東京五輪7位、2023年470世界選手権優勝、2024年パリ五輪銀メダル獲得。写真は2024年8月8日、メダルレース終了後、マルセイユのヨットハーバー内の記者会見会場で記者の質問に答える岡田選手

◎セーラー・オブ・ザ・イヤー受賞者一覧
第16回 2023年 吉岡美帆(2度目の470ワールド金メダル獲得)
第15回 2022年 外薗潤平(470、スナイプ両クラス全日本制覇)
第14回 2021年 霞ヶ浦セーリングチーム(高校多種目制覇)
第13回 2020年 松尾虎太郎(スキッパー、クルーで活躍)
第12回 2019年 鈴木晶友(ミニトランザットで大西洋横断)
第11回 2018年 京都大学ヨット部(全日本インカレ総合8位)
第10回 2017年 亀井直文(GC32コパ・デル・レイ優勝)
第9回 2016年 白石康次郎(4度目の世界一周に挑戦)
第8回 2015年 高山大智(日本初420ワールド優勝ほか)
第7回 2014年 土居一斗、愛実兄妹(アジア大会兄妹銀メダル)
第6回 2013年 テンクォーター(日本初トランスパック優勝)
第5回 2012年 近藤愛、田畑和歌子(世界ランキング1位)
第4回 2011年 後藤浩紀(モス級。日本最速記録達成)
第3回 2010年 慶應義塾大ヨット部(インカレ総合準優勝)
第2回 2009年 原田龍之介、吉田雄悟(470で相模湾一周)
第1回 2008年 山田 寛(プロセーラー)
※受賞理由詳細は下記リンク先の過去記事を御覧ください
※ヨット馬鹿(YB)エンブレムは、大坪明ヨット馬鹿デザイン事務所に制作していただきました。毎年ありがとうございます

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