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オーストラリア「シドニー・ホバート・ヨットレース」の見どころを紹介します

 オーストラリアに渡り、シドニーを拠点にヨットに関係するいろいろなことを学んでいる守屋有紗さんが、「シドニー・ホバート・ヨットレース」に出場します。今年はSydney38クラスでナビゲーターとして出場とのこと。スタート直前の守屋さんに今年のシドニーホバートの見どころを紹介してもらいました。レース観戦が楽しみです!(BHM編集部)

シドニー・ホバート・ヨットレースはオーストラリアを代表する世界規模のヨットレースです。同国で大人気のスポーツイベントで12月の風物詩になっています。写真は2023年大会のスタートの様子

『シドニー・ホバート・ヨットレースは12月26日にスタートします』

 南半球最大のヨットレース「ロレックス・シドニー・ホバート・ヨットレース」まで残り4日となりました。毎年12月26日、クリスマスの翌日のボクシングデーと呼ばれるこの日にスタートするこのレース。オーストラリアの西海岸に位置するシドニーから、タスマニア島のホバートまで南下する628マイル(1,010km)。世界で最も厳しいレースのひとつとも言われています。(レポート/守屋有紗)

 そして、オーストラリア国内でも夏最大級のスポーツイベントとして注目が集まっています。今年は105艇が出場予定で、そのうちダブルハンド艇が23艇、100フィートのスーパーマキシは4艇が出場します。

第1回大会は1945年に開催。今年は79回大会です。コースはシドニーからタスマニアのホバートまで628マイルを走ります

◎注目点1・ラインオナー争いとレースレコードの更新

 まず、今年の注目点1つ目は100フィート艇のラインオナー争いです。

 去年は600マイル以上走った末、フィニッシュ直前で微風の中、〈Andoo Comanche〉 と〈Lawconnect〉のマッチレースが繰り広げられ、僅か51秒の差で〈Lawconnect〉の勝利となりました。

 〈Comanche〉は今年からオーナーが変わり、長年の強豪チーム〈Ichiban〉のオーナーMatt AllenとJames Mayoが共同オーナーとなり、〈Master Lock Comanche〉として参戦します。

 クルーの多くは去年から変更せず、ヨーロッパ、ニュージーランドなどの世界中からトップセーラーが集まり形成されています。今年のナビゲーターは、Volvo Ocean Race、アメリカズカップなどのレースでの優勝経験を持ち、世界一のナビゲーターの一人とも言われるJoan Villaです。

 また、昨年に引き続き、アメリカズカップとSail GPのレガッタ・ディレクターであり、数々の偉業を残しているIan MurrayやRichard Allanson、そしてアメリカズカップなど世界の最前線で活躍する多くのクルーが参加します。

 また、さらなる注目は、今年のレースでレースレコードの更新が達成されるのかどうか。現在のレコードは2017年に〈Comanche〉によって立てられた1日と9時間。去年から細かなアップデートを繰り返して準備は万端です。

 そして現時点での風の予報では強風のダウンウインドからリーチングの予報のため十分可能性はあります。スタート翌日の22時(日本時間20時)までにフィニッシュできれば更新できることになります。

2023年大会のトップ争いは微風のフィニッシュになり、〈Andoo Comanche〉 と〈Lawconnect〉がマッチレースを繰り広げました

◎注目点2・今年の優勝争いは?

 レーティングでの優勝候補としては、去年の優勝艇〈Alive〉(Reichel Pugh 66)、そしてTP52クラスや、〈URM Group〉(Reichel Pugh Maxi 72)、〈Whisper〉(JV62)なども注目です。それぞれのチームがこのレースに照準を合わせて多くの準備・調整を進めてきました。最新技術を詰め込んだボートに目が離せません。

◎注目点3・人気のダブルハンドクラス

 年々盛んになってきているダブルハンドクラスは今年も大きな見どころです。今年は23艇が参戦予定で、特に注目されるのが、昨年優勝艇の〈Mistral〉(Lombard 34)や船齢120年の32フィート艇〈Maritimo Katwinchar〉(Watney Circa 1904)です。また、女性2人組は過去最大の3チームが参戦し、母と娘のチームFika(Najad 1490)にも注目が集まっています。

数字で見る2024年シドニー・ホバート・ヨットレース。女性だけのチームは3チーム、ダブルハンドは23艇が出場します

◎注目点4・Sydney38クラスにも注目です

 私が参加するSydney38ワンデザインクラスも大きな見どころの1つです。このクラスは長年に渡りシドニーホバートで競われていて、今年は6艇が参加してラインオナーを競います。クラスルールが適用され表彰も行われます。

 私はチーム〈Mondo〉でナビゲーターとして参戦します。女性スキッパーを含めた女性6人、男性3人のクルー構成です。これまでのシリーズレースはこのチームで参戦して、他のSydney38と争ってきました。今回も優勝を目指し、しっかりと実力が出し切れるようがんばりたいと思います。

◎注目点5・シリーズレースの優勝争い

 シドニーホバートは、実はブルーウォーターポイントスコアという年間シリーズレースの最終戦にあたります。

 7月のシドニーからゴールドコーストのレース(384nm)に始まり、シドニーホバートレースまでの6レースで構成されます。

 9月からは毎月連続で開催され、12月の初旬には最後のクオリファイレース、キャベッジツリーレースが開催されたばかりです。

 現在シリーズをリードしているのは、〈Smuggler〉(TP52)、続いて〈KOA〉(TP52)、〈Whisperr〉(JV62)、〈URM Group〉(RP72)となります。〈Mondo〉は現在11位。

◎レースの気象予報はどうなる?

 今年の予報は強風のダウンウインド。現時点での予報は、オーストラリアの内陸部から発達する低気圧が東に移動し、タスマニアの西側から南東へ移動することに伴い、平均30ノット、最大50ノット近くの強風が予想されています。そして、低気圧の前線の通過により北風の強風から西風の強風へと変化することが予想されています。

 今年の注目ポイントは、この前線通過のタイミングとその際の風の強さです。

 現時点では、スタートは10ノットの北東風、そして夜にかけて風が強まり北風の30ノット、2日目27日の昼頃に前線通過後には強い西風20〜30ノットが予想されています。そして通過後には陸影の影響で微風地帯が形成される可能性もあるため、小型艇にとってはポイントの1つとなりそうです。

 さらに、もう1つ大きな要素は潮。オーストラリアの西側は強く流れる潮があり、またその反流の影響も大きいです。潮と風の方向が異なれば、マストを大きく超える波の荒れた海況になることも、このレースでは珍しくありません。

 風、潮、地形的要素、様々な事項が合わさるレースは、タクティクス的にもとても難しいと言われています。

◎スタートの見どころ。ライブ中継で観戦しよう!

 スタートは毎年、クリスマスの翌日、ボクシングデー12月26日の13:00(日本時間11:00)。現地ではテレビ中継が行われ、日本からはCYCAの公式YouTubeチャンネルからライブ配信で見ることができます。

 シドニーハーバー内で、30〜100フィートの船が4つのスタートラインに分かれて一斉にスタートします。一番湾の出口に近い北側が50ft以上の船、そこから湾の南側に向かって小さい船のラインになっていきます。

 大迫力のスタート、スタートの30分前頃から中継が始まるので、ぜひ見てみてください。そして、レーストラッカーを見ながら応援してもらえるとうれしいです!

二度目のシドニーホバートに挑戦する守屋有紗さん(筆者)。今回は〈Mondo〉(Sydney38)にナビゲーターとして乗船。ただいま気象チェックしています
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