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【コラム】世界のトップセーラーが集結!NZLモスワールド直前レポート

 今年のモスワールドは、2024年12月30日から2025年1月9日まで夏のニュージーランド、マンリーセーリングクラブ(オークランド北部のワンガパラオア半島です。オークランドから北へ車で約1時間ほどの距離)で開催されます。(レポート/梶本和歌子 ワカコ・レーシング)

年をまたいで開催されるニュージーランド・モスワールド。日本から後藤浩紀、杉山航一朗、行則啓太、西山圭、オーストラリア在住の梶本和歌子、ニュージーランドの高橋レオ、岡田爽良が出場します。写真は2024年にガルダ湖で開催されたフォイリングウィークより

 南半球で開催される事や次回大会が2025年7月にイタリア、ガルダ湖で開催される予定で、今大会との間が短い事から78艇と多くはない参加艇数ですが、有名選手や未来を担うであろうセーラーが参加します。

 モスクラスはクラス規則が基本的な規格(船の最大長さ3.355 m、最大幅 2.250m、最大帆面積: 8.25 m²)を守る限り、デザインの自由度が高いことが特長で、船が進化し続けるクラスです。

◎フォイル(水中翼)で変わるモス。最新の流行とは?

 フォイリングするようになってからは艇やフォイルのデザインによって大きくセーリングパフォーマンスが変わる事から、どこのメーカーが作るボートが良いか、その時々によって流行があります。

 現在はニュージーランドで作られているMackay boatsのBieke Mothとイギリスで作られているMaguire BoatsのAerocetが2大勢力でこれに加えて、A-class(一人乗りフォイリングカタマラン)で有名なポーランドExploderのExploder Moth、オーストラリアDamic DesignのSwift Mothなどがあげられます。

 最近のモスの特長をあげると、ハードウィングになり、重量は重くなるものの、剛性や空気抵抗の軽減などによりパフォーマンス上昇、フォイルのバーティカル(垂直の部分)が長いものから短いものが流行りです。

 短い方がフォイリングを始めるまでの抵抗が少ない、重さが軽いなどのメリットがあげられます。フラットウォーターは短いフォイル、ラフな海面では長いフォイルが好まれる傾向があります(フォイルが海面から出にくいため)が、セーラーの技術向上もあり、短いフォイルでも走れるようになったからだと推測します。

 また最新の話題だと、Mackay Boatsが新しいバーティカルを売り出し、それは海面に浸かる下部が金属製で、従来のものよりも1キロ重量が重くなるかわりに、投影面積が20パーセント、湿潤表面積が23%減少するそうです。

 それにお値段もNZD11800ドル(日本円で約105万円!)、と従来のカーボンフォイルの2倍の値段設定となっていて話題となっています。アメリカズカップではフォイルが金属製で作られています。

 その流れがモスにも来ていて、モスのクラスルールで金属製が使われる事が認められたため、開発される流れとなりました。これをきっかけに、フォイルがカーボンから金属製に変わっていくのか注目です。

モスワールドが開催されるニュージーランド・マンリーセーリングクラブ
アメリカズカップを戦った4人のヘルムスマンのうち全員がオリンピック金メダリストで3人がモスワールド優勝者です
今年タイトルを総なめにしたディエゴ・ボティン(ESP)。SailGPで年間優勝、8月パリ五輪では49erで金メダルを獲得。これでモスのタイトルを獲れば、、、まちがいなくスーパースターの道を歩んでいきます

◎2014年以降、モスワールド優勝者は全員アメリカズカップのヘルムスマンになっている

 2005年のローハン・ヴィールが初めてフォイリングモスで勝って以来、モスのフォイリングは当たり前となりました。アメリカズカップ(AC)が2013年からフォイリングするようになってからは、モスに乗る事はACへ続く道として、ACを目指すセーラーが多く集まってくるようになりました。2014年モスワールド以降の優勝者は全員ACチームのヘルムスマンになっています。

 ネイサン・アウタリッジ、ピーター・バーリング、ポール・グッディソン、トム・スリングスビー、ディラン・フレッチャー、更に付け加えると、全員オリンピック金メダリストです。

 ACチームのイネオスブリタニアのCEOであるベン・エインズリーがディラン・フレッチャーを紹介する時にオリンピック金メダリストという前に、モスワールドチャンピオンという事を先に話すくらい、モスワールドチャンピオンということを強調していました。そのくらい、モスワールドチャンピオンというのは、ACチームのヘルムを持つには重量な要素となっているようです。

 そして、今大会も未来のACヘルムを狙う選手が多数出場します。イアン・ジャンセン、ケビン・ペポネ、ルーカス・カラブレーゼ、フィル・ロバートソン、セバスチャン・シュナイター、ライリー・ギブス、ディエゴ・ボティンなどです。

 私が特に注目している選手は、SailGP優勝、パリオリンピック金メダル、ワールドセーリングのセーラー・オブ・ザ・イヤーを獲得したディエゴ・ボティンです。2024年に2つのビッグタイトルを手中に収めた彼が、モスワールドのタイトルも獲得してACヘルムへの布石とできるのか、目が離せません。

 また、若手選手にも大いに注目しています。地元ニュージーランドからジェイク・パイは優勝候補に上がっています。彼は昨年イギリス、ウェイマスでワールドが行われた際、風に恵まれずレース数が足りなかった為、不成立となった大会で暫定成績1位でした。彼と共にマティアス・クーツやセブ・メンジーズといったマンリー出身のセーラーも下馬評が高いです。そしてSailGPニュージーランドチームのフライトコントローラー、我らが高橋レオも出場予定です。

 オーストラリアの若手選手、オット・ヘンリー、ジャック・ファーガソン、ライアン・リトルチャイルドは、オージーナショナル、NSWステートと3人が表彰台を独占し、すでにオーストラリアのエースとなっています。ベテランのジョン・ハリス、スコット・バベッジ、ロブ・グリーン・ホージを倒した彼らの実力は本物と言って良いでしょう。3人とも普段は49erに乗っているガチ勢です。

 日本からはニュージーランド在住の岡田爽良が出場します。彼は9月にシドニーでオット・ヘンリーからモスを買い、2カ月ほどシドニーでトレーニングを積みました。先ほどのオーストラリアの若手3人や強豪揃いのモスセーラー達とウラーラセーリングクラブで実力を付けました。私も彼と一緒に練習したのですが、さすが若いだけあって、毎日練習してメキメキと上達していました。楽しみな選手の一人です。

 女子選手のエントリーは5人です。少ないと思われるかも知れませんが、これでも例年に比べると多い方です。女子の注目選手は、SailGPグランドファイナルのワスプで優勝したハティ・ロジャースです。地元イギリス大会が不成立に終わり、今大会こそタイトルを切望していると思います。

 みなさんもご存知のように私自身も出場します。すでにオークランド入りして、船の到着を待っています。女子タイトルをもちろん狙っていますが、何よりも久しぶりの大きな国際大会に参加するので、楽しみつつセーリングしたいと思います。

 最後に一言、、、
 後藤さん、負けませんよ!!

和歌子選手が練習する様子。今春、ビーカーV3を手にしてから女子優勝を目標に練習してきました。日本選手みんな、がんばれー!(編集部)
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