【パラオ】美しい海を守るためにパラオジュニアがやっていること
太平洋に浮かぶ島、パラオ共和国で子供たちにヨットを教えている仙田悠人さん(24歳。JICA青年海外協力隊)のレポートは、パラオの海の環境問題についてです。美しい海を守るためにいろんな活動がおこなわれています。ヨットの子供たちも休憩時間にごみ拾いするのが習慣になっているようですよ。(BHM編集部)
パラオの海は世界でも特に豊かな生態系を誇り、美しいサンゴ礁やいろんな種類の生き物がいます。ただし、近年いくつかの課題も浮き彫りになっています。日本と同じように、海に囲まれたパラオは海洋環境に影響を受けやすい国です。日本と違うのは国の大部分がもともとサンゴ礁でできていて、標高が低く、もっと気候変動の影響を受けやすいということです。(レポート・写真提供/仙田悠人)
◎ジェリーフィッシュレイクからクラゲがいなくなってしまった
いまパラオでは海水温の上昇によるサンゴの白化現象が進んでいます。海水温の上昇で国土が小さくなっている問題もあります。
異常気象や台風による被害も増えています。この異常気象で、嵐を予測する伝統的な航海術を正しく運用できず、1000年以上積み重ねられてきた経験則が通用しなくなりつつあるようです。
また、一部の人気観光スポットでは、過剰な観光客数が生態系にストレスを与えています。ジェリーフィッシュレイクという観光地はクラゲがたくさんいる人気の観光地のひとつでした。しかし、クラゲが観光客の増加によって激減してしまい、今では訪れる観光客はいません。
余談ですが、観光客が増えすぎてしまって約7000室の客室数をカバーできないという問題もあります。世界自然遺産である「ロックアイランド群」は入場に50ドルの州税を科すことで環境保全に役立てています。観光業と環境保護のバランスはパラオ共和国にとっての重要な問題になっています。
◎プラスチックごみを回収してきれいな海を守る
流入してくるプラスチックごみがパラオの美しい海を脅かしています。特に観光地や沿岸部のごみが大きな問題になっていて、残念なことですが観光客が海へごみを投棄する姿も見受けられます。
しかし、パラオ人のおじさんがビール缶を投棄する姿もそれ以上に見受けられます。パラオはこの現状から国として、缶、ビン、PET(ペットボトル)のリサイクルに取り組んでいます。それぞれ、回収センターに持ち込むと1つ5セントで回収してもらえます。
パラオ日本人会は毎週日曜の午後、会員で地域のゴミを拾う活動をしています。また、スポゴミという日本主導のごみ拾い大会が計画されるなど、日本という国としてもパラオの環境を守る取り組みをしているようです。
日本パラオ友好ヨットレースに出場したトレッキーチームもマイクロプラスチックの採取活動をしていました。日本とパラオがお隣として協力し合って海を守る姿は、理想的な関係と言えるのではないでしょうか。
◎ヨット練習の休憩時間にごみ拾いしています
このような環境問題からヨットの練習はお昼休みの後にごみ拾いをする時間を設けています。1人30個や50個のノルマを課すと、ものの15分で大きな袋いっぱいにゴミが集まります。
ある日、子供がごみを拾っている横で缶を捨てる光景を見ました。大人が捨て子供がひろう。おかしな世界です。ゴミ拾いを通して、海洋保全を意識するような子になってほしい。また海を愛するひとつの方法としてごみ拾いの活動をずっと続けていきたいものです。
パラオの海は、観光のためだけでなく、地元の文化や生活に深く根付いた重要な存在です。この自然環境を守りながら次世代へ引き継ぐためには、地元住民や訪問者、国際社会の協力が欠かせません。
【参考】パラオ共和国がやっている環境保護への取り組み
パラオ誓約(Palau Pledge)
観光客に環境保護への誓約を求めるパラオ共和国独自の取り組みで、持続可能な観光を目指しています。観光ビザに署名する形で、訪問者は自然環境を尊重する義務を負います。特長的なスタンプがパスポートに押印されるので、パラオ訪問記念になる側面も!
海洋保護区(MPAs)
パラオは国土の80%にあたる海域を保護区に指定していて、特に乱獲や環境破壊を防ぐための厳しく管理されています。海洋資源である漁業に大きく影響するもので、海洋国にもかかわらず漁獲量が増えない理由のひとつといえます。近年では、外洋での漁獲を増やすことで、内洋(珊瑚に囲まれた中の海)漁業の数値的な漁獲圧を分散させようとする試みに取り組んでいます。
- 連載【パラオ】バックナンバー https://x.gd/n5p3T
- 日本パラオ青少年セーリングクラブ https://jpysc.org/