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新チャンピオン誕生!江の島ファイアーボール級全日本

 11月16日、17日に江の島で「ファイアーボール級全日本選手権」が開催された。昨年P&B社のラジアルセールを導入し6連覇を達成した石井/伊藤に対し、近年ワールドで採用が増えているNorthSail社のラジアルセールを導入した中野/安藤、加藤/原、石橋/鶴本が、石井/伊藤の連勝にStopをかけるかが注目された。(レポート・写真提供/日本ファイアーボール協会)

七里ヶ浜沖で開催された「2024年ファイアーボール級全日本選手権」。2日間で6レース、内容の濃いレースがおこなわれました。

 初日は、風向30度風速6〜10mの安定した北風、2日目は、風向50〜70度、風速は5mから徐々に落ちて2〜3mのコンディションの中、6レース実施された。

 第1レース。ディフェンディングチャンピオンの石井/伊藤が第1上〜サイドで他艇がタイトなレグに苦しむ中とスピンランを走り切り、その後もややリードを広げ1下を回航。しかしながら、ふれ回る北風に翻弄されて、2上のレグで右海面を使った加藤/原がトップに立つ。

 その後3上では、石橋/鶴本を加えた3艇での混戦状態になり緊張したトップ争いが展開された。その後の最終サイド〜最終下まででのダウンウインドレグで石橋/鶴本がトップに立って、そのままフィニッシュ。2位に加藤/原、3位に石井/伊藤が続いた。

 第2レースも第1レースに引き続き、石井/伊藤がタイトな1上〜1サイドを、安定して走り切り一時トップに立つも、サイドマーク回航後1下までで、加藤/原が石井/伊藤をスピードで抜き去り、1下をトップ回航。

 しかしながら、ここで加藤/原のクルーの落水があり、加藤/原がリタイア。MAX10m近い風が吹く中で、ヘルムスマン・加藤さんが一人でボートをコントロールし懸命に救出。長い距離を泳いで艇に戻ったクルー・原さんの体力の消耗も激しく、第3レースに備えて、一旦リタイアを選択。

 この時点で石井/伊藤が再びトップに立ち、レースを制するか、と思われたのもつかの間、さらに風が上がってきた中、ジブセールがフォアステーにからむトラブルで、クルーがバウ先まで行って作業せざるを得なくなる。

 この作業中にまさかの沈。石橋/鶴本、中野/安藤に先行されることに。結果、トラブルなく走り切った石橋/鶴本が、第1レースに引き続き1位に。2位にはベテランの中野/安藤が入った。石井/伊藤は、第1レース3位、第2レース3位と苦しい序盤の展開となった。

 第3レーススタート直後、石井/伊藤のクルーが、トラビーズのクリートが外れ、なんと落水。最後尾からフリートを追う展開に。

 こうした状況で古川/牛久は大きく右に振れた風をつかんで大きくゲイン。1上マークをトップ回航。その後、4艇が次々と1上を回航したが、スタートで出遅れた石井/伊藤がスピンでの走りでうまさを見せて、サイドマーク回航後トップに立ち、その後差を広げて、第3レースを制した。2位には石橋/鶴本が手堅く入り、リタイアして備えた加藤/原は悔しさの残る3位とあいなった。

 初日が終わった時点で、石橋/鶴本が1-1-2位。石井/伊藤が3-3-1位。中野/安藤が4-2-4位。加藤/原が2-DNF-3位。古川/牛久が5-DNF-5位の結果となり、石橋/鶴本が優位に立った。

 大会2日目。朝から表情に緊張感がある石橋/鶴本に、ベテランの加藤/原が「チャンピオン見えてきたんじゃない?」とメンタルアタックを仕掛ける。季節外れの気温20度以上の穏やかな天候のハーバー。北から東北東に大きく変化しつつ徐々に風が落ちる予報。波乱を匂わせつつ2日目がスタートした。

 第4レース。風下側からスタートした石井/伊藤がスターボードで伸ばした後、振れに合わせてタックをしてそのまま1上をトップで回航。その後の差を広げて1位でフィニッシュ。

 一方2位争いは、加藤/原が制して、石橋/鶴本は3位となった。加藤/原のメンタルアタックが効いてしまったか、風の振れを上手く使えなかった石橋/鶴本は手痛いレースとなった。

 続く第5レースは、右海面を使ってややオーバーセールとなった石井/伊藤に対して、スターボードのレイラインをしっかり読んだ石橋/鶴本が1上マークをトップ回航。

 地形的な要因から上マーク付近で大きく左に振れる中で、多くのボートがレイラインに乗せる最後のタックに四苦八苦した2日間だったが、ここ一番の展開でレイラインタックをしっかり決めた。

 しかしながら、体重の軽い石橋/鶴本のウィークポイントはタイトリーチの上り確度。この5レース目の上〜サイドレグがかなりタイトになっていることに苦しみ、上サイドを突破され、石井/伊藤に先行を許す展開に。その後、石井/伊藤がやや差を広げ、3度目のトップフィニッシュに。2位には石橋/鶴本、3位に加藤/原が入った。

この時点で、
 石橋/鶴本が1-1-2-(3)-2位 合計6点
 石井/伊藤が3-(3)-1-1-1位 合計6点
となり、同点にならぶ展開。チャンピオンの行方は終盤の戦いに持ち越されることとなった。

 第6レースは、予報通り風が徐々に落ちてきて、振れとブローをどうつかむかが勝負の鍵となってきた。そういった中、スタート直後ポートにタックを返して、右海面を使った後、振れに合わせてスターボードに返して全艇の前を切った石橋/鶴本が1上をやや差をもって回航。

 しかしここでもタイトな上〜サイドレグで石井/伊藤が猛追。テール・トゥ・ノーズでサイドマークを回航。サイドジャイブでも両者譲らず。風上側に艇を持っていくべく延々とラフィングを繰り返す。後続の加藤/原がプロパーコースを無難に走り、トップへ順位を上げるが、もはやこの2艇には関係なし。

 サイド〜下レグの後半で大きく風が振れ、ブランケットにいた石井/伊藤が前に出る。結果、下マークでは、1位に加藤/原、2位に石井/伊藤3位中野/安藤で、石橋/鶴本は4位となり苦しい展開となる。

 ここで加藤/原と石井/伊藤は、風が右にふれ、東からのブローが入ると読んで右海面に展開。一方、中野/安藤と石橋/鶴本はまだ風が残っていた左海面を選択。フリートは2集団に分かれる展開に。

 先にブローをつかんだのは中野/安藤と石橋/鶴本。海面は東からのブローはあまり入らず、右海面と左海面で全く異なる風が吹く状態。

 最後の最後に入った振れも伴って加藤/原と石井/伊藤はオーバーセールした状態でレイラインに乗る。なかなかボートスピードが上がらないこの2艇を尻目に、上マークは石橋/鶴本がトップで回航。石井/伊藤は3位に、加藤/原は、4位に沈む展開に。

 ここで石橋/鶴本が優勝争いの石井/伊藤に大きく差をつけトップに立つ。最終レグとなるの上〜下へのダウンウィンドレグ。石井/伊藤はブローをつかんで追い上げを見せるも及ばず。石橋/鶴本が3度目のトップフィニッシュを飾った。2位には石井/伊藤が入った。

この時点で、
 石橋/鶴本が1-1-2-(3)-2-1 合計7点
 石井/伊藤が3-(3)-1-1-1-2 合計8点

 石橋/鶴本が1点差で首位になる中、最終第7レースが行われるかと思われたが、本部艇にAP/A掲揚。石橋/鶴本の初優勝が決まった。

ファイアーボール新チャンピオン、石橋卓巳・鶴本紘一組

 むずかしいコンディションの中、石橋/鶴本は大きく崩れることなく、安定して走りを見せチーム結成後6年めでの初優勝を飾った。クルー・鶴本さんは、以前んでいたペアでの活動を含めると、全日本選手権17回目の挑戦で初めての栄冠に輝いた。

 レースの後、鶴本さんからは、「まだあまり実感がないけれども、妻からはオメデトウとの言葉があった」との優勝の弁があり。優勝祝賀会は、今回のレース参加者だけでなく、レース委員長の小阪さんや以前のペアをんでいた下間さんなど、多くの方が参加できるよう改めて開催予定。

 ファイアーボール協会の全日本選手権優勝トロフィーである「レジェンズ・メモリアル・トロフィー」の授与、石橋/鶴本のカップを持った写真と、豪快な飲みっぷりが今から楽しみです。

2024年ファイアーボール級全日本選手権 成績
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