【パラオ】パラオではこんな感じでセーリング練習しています
パラオ共和国で子供たちにヨットを教えている仙田悠人さん(24歳。JICA青年海外協力隊)。今回のレポートでは、普段子供たちにどんなふうにセーリングを教えているか、です。ヨットのなかった国でセーリングを教えるむずかしさもあるようですが、楽しそうなヨット教室ですね。セーリングピクニックは編集長も参加したいです。(BHM編集部)
◎パラオの普段のセーリング練習はこんな感じでやってます
パラオでの練習は基本的に週末に行われています。夏休み等は平日練習をする日もありました。なぜ常夏の国に夏休みがあるのか疑問ですが。。。(レポート・写真提供/仙田悠人)
土日の9〜12時までが午前練習で、13〜15時までが午後練習です。現在は初心者クラス6人と中級クラス7人に生徒を分けています。土曜日午前が主に初心者で、午後から中級者と混ざって練習をします。日曜日は中級者クラスです。
帆走練習からサークリング等、一般的な練習をさせているつもりです。遠浅の出艇場所なので、満潮時には海の上に立って指導することもあります。風がない日には自作のヨットのボードゲームをしていた時もありました。
実は私自身にOPセーラーの経験がありません。そこで、様々な方にアドバイスを頂きながら指導を模索しています。元OPセーラーのヨット仲間から意見をもらうこともありました。彼らによれば、ヨットを初めて1〜2年でどれほどヨットが楽しいと思えるかがヨットを続けてもらえるかの鍵、とのヒントをもらいました。
そこでまずは乗り物としてのヨットを楽しんでもらうことを念頭において練習を組んでいます。
パラオというヨット文化がない国で、いきなりレースの楽しさを子供に説くのは無理がありました。さらには、パラオには競争という概念が苦手な子もいます。
日本の資本主義社会とは異なる時間の流れがあるので当然だと思いました。もともとヨットの文化や需要が数年前までなかった国に、「1から」ヨットを知ってもらうのは簡単ではありません。
そこでまず、不思議な揚力を使って進む船に乗る楽しみを経験させます。後に、スピードを仲間と競い合う楽しみに転換してもらうという道のりを想定しています。船を速く走らせたいという気持ちは自然に湧き上がるものだし個人差もあります。
もちろん、スピードを求めている子にはレースで勝つための練習をさせています。ド強風のレッスンに参加してもらっています(笑)。全員で13人と人数が少ないこともあって、大人数の練習よりも個人の事情にもフォーカスできる部分があるのです。
◎セーリングの先でランチする「セーリングピクニック」
楽しみのひとつとして「セーリングピクニック」を打ち上げました。半年に一回のペースで遠くまで自艇で帆走してランチを食べて帰るという企画です。
ヨットはスポーツになる以前は移動手段や輸送手段でした。また太平洋諸島の祖先は航海術を駆使して人類の生息域を広げています。
太平洋に浮かぶ国にルーツを持つパラオの子供たちは航海士のDNAを持っているはずです。もっともプリミティブな乗りものであるアウトリガーとヨットは同じ発想の乗り物です。
そこで、アウトリガーと同じ使い方をして冒険に出る経験があればいいと考えました。
大学ヨット部時代、目の前にある女木島(瀬戸内海の島)をスナイプ級で回航したいなあと思っていました。でも、日本では帆走区域や航路の関係でディンギーが帆走できる場所は限られ、その夢は叶いませんでした(もちろんパラオにも航路はあります)。
行き先は、高級リゾート(Palau Pacifc Resort)(片道2.5キロ)に海から参上。日本パラオ友好の橋(片道5キロ)、世界遺産ロックアイランド群(片道3キロ)と毎回様々です。途中は誰も泳いだことのないだろう海域で無傷の珊瑚の上、休息がてら泳ぐこともありました。
子供たちも、出発地点からは指先ほどに見える目的地まで、あるいは島に囲まれた目的地までの冒険を楽しみにしてくれているようです。パラオで経験するべきイベントのひとつです。
◎PSA(パラオセーリング連盟)のイベント
これまでの隊員任期で数々のイベントを経験させて頂きました。
・第1回セーリングピクニック(2023年12月)
・光のパレード(2024年1月) 夜にヨットを装飾して芸術点を評価してもらう
・パラオ・グアム親善OPレース(2024年1月)
・ロックアイランドでバケーション(2024年1月)
・他3州ヨット普及訪問活動(2024年2~3月)
・日本パラオ親善OPレース(2024年3月)
・横浜港ボート天国OPレース(2024年7月)
・スポーツトライアウト(2024年7月)
・パラオカップ(2024年9月)
・第2回セーリングピクニック(2024年10月)
これらのイベントごとに、Fundraising(資金集めのための活動)を経て、主賓の方々へ招待状をお送りしたり、日程の調整などたくさんの経験をしました。
その度ごとに保護者の皆様や役員の方々の温かい支援を受け、勉強をさせてもらい、なんとか会を成功させることができています。
子供たちが飽きないように、楽しんでもらえるように。でも、自然な形で速くなりたい、レースで勝ちたい思ってもらえるように。パラオのやり方を模索し続けています。
少し前まで、パラオで「センセイ」と呼ばれることに違和感を感じていました。自分がコーチ、先生と呼ばれるほどに頼り甲斐がないからです。しかし、ある日気づいたことがあります。
最初から先生である人はいない、子供たちや保護者の方々に「先生にしてもらう」のだと。PSAというあたたかなゆりかごの中で、のびのびといつの日か先生っぽくなれたらいいなと思っています。
- 連載【パラオ】バックナンバーhttps://x.gd/n5p3T
- 日本パラオ青少年セーリングクラブhttps://jpysc.org/