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ヴァンデ・グローブに出場する白石康次郎に聞いてみよう!(1)

 世界で一番クレイジーなヨットレース、世界一周「ヴァンデ・グローブ」が近づいてきました。日本からは白石康次郎〈DMG MORI Global One〉が挑戦します。さて、この8月、バルクヘッドマガジン編集部が募集した白石さんへの質問に、たくさんのメールをいただきました。みなさんの質問、疑問を白石さんにぶつけてみたので紹介します。質問を厳選しようと思いましたが、話がおもしろいので数回に分けて、なるべく多くの一問一答を紹介します。(BHM編集部)

今秋5度目の世界一周に挑戦する白石康次郎さん。ヴァンデ・グローブのスタートは11月8日。フランスのレ・サーブル・ドロンヌをスタートします

『世界一周中、不思議な体験をしたことはありますか?』

編集長:まず最初の質問です。「世界一周中もしくはセーリングしていて、不思議な体験をしたことはありますか?」。例えば、海で漂流してクジラの大群に助けられた人の話、大波に飲み込まれてもうだめかと思った時、不思議と浮上した話など聞いたことがあります。白石さんは海で不思議な体験をしたことはありますか?

白石:ありますよ。不思議な体験はね、例えば夜なのに自分のまわりが全部バーッと明るくなる、とかあった。

編集長:それはどうしてですか?

白石:それはデカい流れ星だった。ホントにデカいやつが来るとまわりが明るくなる。あとは、海底がぶわーっと光る。イルカがいたりすると夜光虫がぶわーっと光ったりするね。あとは何だろう。この前の竜巻かな。

編集長:今年6月のニューヨーク〜ヴァンデですね。竜巻のなかにIMOCAがある衝撃的な写真でした。あれは白石さんが撮ったんですよね。

白石:そう、竜巻ができるのがわかったからカメラを構えていた。竜巻って下から盛り上がってできあがる。真ん中は見えない。それから雲がふわっとなって、両サイドがつながって竜巻になる。それを知っていたから、竜巻の写真を取る準備をしていたよ。あとからエリック(Eric Bellion)に聞いから「おれ、死んじゃうのかな」って思ってたって(笑)。ほかにもクジラに乗り上げたり、南氷洋でオーロラを見たりしたこともある。でも、海は不思議なことが当たり前の世界だから、そういうことに出合った時は素直に受け止めてる。怖いということはないかな。

編集長:それにしても、白石さんはおもしろい話をたくさん持ってますね。話も上手だし。白石さんはどうやって話し方を学んだんですか?

白石:話はね、世界一周中に落語を聞いて覚えたよ(笑)。

白石さんが撮影した竜巻のなかにIMOCA。今年6月に開催された大西洋横断レース「ニューヨーク〜ヴァンデ」のワンシーンです

『座右の銘と勝負めしはありますか?』

編集長:次はOPに乗ってる女の子からです。まず、座右の銘は、、、船にも描かれていますね。

白石:座右の銘は「天水の如く」です。ぼくがはじめて見たのは山本五十六の書で、だれかの格言というわけでないようで「~の如し」って漢詩とかによく出てくる。ぼくが通っている居合道場に「天水の如く」と書いてあって、これが山本五十六の書だった。水のことわりについて書いてある文章を見つけて、これは素晴らしいな、と。ぼくはセーラーだから、海の上で地球とか宇宙とか、そんななかにいると、地球と一体化できるんじゃないかな、と思って。

編集長:「天水の如く」には自分の解釈が入っているということですか?

白石:そう。景色とかもそうなんだけど、気分のいい時に見るのと悪い時に見るのとでは、同じ景色でも意味が違う。だから僕は「天水の如く」を地球・宇宙と一体化できる、そんな風に考えているんです。

編集長:まだまだ質問があるのでトントン行きます。白石さんの「勝負めし」はありますか?

白石:なんだろう。船の上ではアルファ米(保存できる乾燥米飯。熱湯や水でご飯に復元する)が基本です。勝負めしは尾西(尾西食品株式会社)の赤飯かな。あれは、うまいです。

編集長:どういうときに食べるんですか?

白石:いつも食べてるよ。でもフランス人はどうしてか食べないんだ。だから余る。アルファ米はずいぶん食べているけど、赤飯はおいしい。むかしはごま塩がついていたんだけどね。赤飯が勝負めしかな。

『八方ふさがり、ピンチになった時に何を考えていますか?』

編集長:女性の方から質問です。「これまで数々のピンチを経験されているかと思いますが、これは本当にピンチだ、というときは何を考えていますか? 同じように「八方ふさがりになったとき、何を考えますか?」

白石:ピンチはたくさんありますよ。ヨットがひっくり返ったり。外洋レースは世界一不確定要素が多いレースで、舗装された道を走るわけじゃないから、どんなに準備してもダメなときもある。ピンチもすごく多くて。その時何を考えてるかっていうと。。。ピンチの時って最初はワーってなるんだよね。これは大変だ、と。

編集長:血の気が引くとか、そういう感じですか?

白石:そう。それでぼくの場合は、まず、安全を確保して、それから船を沈めないことを考える。例えばマストが折れたら、マストでハルを割っちゃうことがすごく多い。まずはマストが折れてもいいから、フェンダーでマストがこれ以上船にぶつからないようにして、追い風に乗せて船をキープする。

編集長:第一に安全の確保ですね。

白石:それからまわりをよく見る。四面楚歌、八方ふさがりと言っても一カ所だけ空いている場所があるものです。例えば、まわりを壁に囲まれていても「上」があいている場合がある。それに高い壁に囲まれていてよーく見てみると、意外ともろかったりする。その状況をよーく見ることです。壁を乗り越えられるかもしれない。

編集長:それでもダメな時は?

白石:あきらめるよ。あきらめるのは悪い判断じゃない。ぼくは何度もあきらめている。世界一周に7回挑戦して、3回失敗しています。そんなに高い確率で世界一周を成功しているわけじゃない。外洋ヨットレースでリタイアを経験していない人はいないんじゃないかな。1回、2回のリタイアで泣いていては、前に進めないからね。

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