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【パラオ】ぼくがパラオでセーリングを教えることなった理由

 7月、横浜で開催された「ボート天国」にパラオ共和国から子供たちが来日してヨットレースに参加しました。いま日本とパラオは、セーリングを通じて強い結びつきがあります。セーリング競技のないパラオでは、香川大ヨット部卒業生の仙田悠人さんが現地で子供たちを指導しています。南の島でのセーリングは、どんなものでしょうか。パラオってどんなところ? 子供たちはどんなセーリングをしているの? そんなパラオの日常を毎月紹介してきたいと思います。(BHM編集部)

うわっ!息を呑むほどの美しい海でパラオの子どもたちがセーリングを学んでいます。パラオのセーリングははじまったばかり。成長していく子どもたちをお楽しみに!(編集部)

◎はじめまして、仙田悠人(せんだ ゆうと)と申します!

 今回は、パラオでの活動内容や、私がパラオに来たきっかけについてお伝えできればと思います。教え子であるパラワンセーラーたちは、パラオの透明度の高い海でセーリングを楽しむという、羨ましい幼少期を過ごしています。(レポート/仙田悠人)

 年間を通じて温暖な気候で、風も安定して吹くため、練習に困ることはほとんどありません。練習中には、飛び魚の幼魚がヨットに驚いて飛び出すこともしばしばあります。その小さな魚体がパラオの陽光を浴びて虹色に輝きながら飛ぶ様子は、まるで豊かな海の宝石のようです。

 出着艇の際には、珊瑚を間近に見ながらという、まさに南国ならではの光景が広がります。豊かな自然と生態系の中で風を使ったスポーツができる彼らは、きっと海を大切にする大人へと成長していくことでしょう。

 パラオには伝統的にアウトリガー船を利用してきた歴史・民族的背景があり、パラオの子供たちは遺伝子的に航行技術が備わっているとも言えるでしょう。

 私がセーリングを教えているパラオの子供たちは、センスと可能性に満ち溢れています。彼らは自分で見て覚えるスタイルで、私が一から十まで教える必要はないと感じています。

 彼らは水を恐れず、物おじすることなく海に出ていきます。これは、沈してもきれいな海に落水して練習中に泳げるという、パラオならではの考え方があるからなのでしょう。

パラオはフィリピン東方にある386の島(うち人が住んでいるのは9島)からなる共和国で、人口約1万8千人の小さな国です。編集部のある葉山町が人口3万2千人なので、それよりずっーと少ない

◎パラオでセーリングを教えるようになったきっかけ

 私は、日本パラオ青少年セーリングクラブ(以下、JPSYC)のクラブ員であり、JICA青年海外協力隊2023年度2次隊としてパラオ共和国に派遣されています(2023/10/23〜2025/10/22)。

 現地では、9歳から16歳までの子供たちにオプティミスト級の技術指導、艇の維持管理、海上法規の指導が求められています。主な練習は週末の土日で、平日は艇の維持管理や事務作業をしています。

 私の出身は島根県松江市で、宍道湖の近くで水辺で遊びながら少年時代を過ごしました。グローバルに活躍する大人にあこがれつつも、田舎育ちの私には遠い世界に感じていました。

 また、王道の就職ルートに疑問を持ち、前例のない人生に興味を持っていました。6歳離れた双子の妹がいて、よく面倒を見ていたため、子供たちと接することが好きです。

 香川大学ヨット部でヨットを始めました。特に突出したセーラーではありませんが、大学4年間はヨットに夢中になりました。

 パラオ行きのきっかけは、インカレ終了後、卒業後の進路がはっきりと決まらなかった時期でした。ヨットへの情熱はあるものの、心にぽっかりと穴が空いたような期間でした。

 このまま進学や就職をし、たまにヨット部の後輩の練習に顔を出すヨット生活かなと思っていました。ある意味、間接的にヨットに携わる人生です。

 しかし、心の片隅にはもっと直接的にヨットに関わる人生もあったのかもしれないという気持ちが少しありました。社会に出る前にギャップイヤーとして数年間の世界旅行でもできればいいなと考えていた矢先でした。

 突然、場所も知らない島国パラオで、子供たちにヨットを教えるという話が舞い込んできたのです。

いまパラオには約15名の子どもたちが参加して、毎週セーリングしています。仙田さんはこの子どこたちの先生でセーリングの基本を指導しています

 それは、学校の教科書で見てから興味を持っていた青年海外協力隊としてのものでした。また、セーリングの基盤がまだ整っていない場所で普及を進めることにもワクワクしていました。深く考えることなく、心がワクワクしたのでパラオ行きを決めました(親には大反対されましたが…)。

 パラオに来てから、次の10月で1年になります。教え子たちは自分の子供のように可愛いです。彼らの成長を一番長く見守れるのは、第一代目の特権ですね。

 パラオでの保護者や関係者のみなさん、JPSYC、JICAパラオはいつも私の活動を温かく見守ってくださっています。パラオの他の習い事と比べても、トップクラスの支援体制が整っていると言えるほどです。

 ワクワクする気持ちに従ってパラオに来た決断は間違いではありませんでした。子供たちがセーリングを楽しみながら、持続可能なクラブ運営ができるよう、残りの任期を全うしようと思います。応援のほど、よろしくお願いいたします。

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◎パラオへ贈るレーザー級(ILCA)を探しています
 いま、パラオ共和国で活動するジュニアセーラーが、初のオリンピック出場へ向けて挑戦をはじめました。でも、パラオには出場を目標としているレーザー級(ILCA)がありません。もし、みなさんが、使っていないレーザー級や、関連する艤装品をお持ちであれば、それをパラオの子供たちに使ってもらえないかと考えています。艇をご提供いただける方、また眠っているレーザー級をご存知の方がいましたら、日本パラオ青少年セーリングクラブへご連絡いただけないでしょうか。(BHM編集部)

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五輪へ挑戦するパラオの子供たちに日本からレーザー級を贈りたい
◎連絡先
一般社団法人
日本パラオ青少年セーリングクラブ(JPYSC)
神奈川県横浜市金沢区白帆一番地
URL:https://jpysc.org/e-mail:info@jpysc.org

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