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【コラム】オリンピック直前、選手たちはこんなことをしています

 こんにちは、ワカコ・レーシングの和歌子です。パリ五輪直前ということで、今回はオリンピック前に選手たちが何をしているか。私が2012年のロンドン・オリンピックに出場した経験をもとに紹介したいと思います。(レポート・写真/梶本和歌子 ワカコ・レーシング)

編注:筆者の梶本和歌子さん(写真クルー)は2012年ロンドン五輪470女子日本代表で吉田 愛さんと出場し、同年バルクヘッドマガジンのヨット馬鹿大賞を獲得しました。その後、ナクラ17でリオ五輪を目指し、モス(現在進行中)やSailGP日本チームでも活躍する日本を代表するセーラーです

◎日本代表に決まった後、選手たちはどんなことをしている?

 日本代表決定までのプロセスは、国内代表選考を勝ち抜くと、JSAF(日本セーリング連盟)の理事会で派遣団体のJOC(日本オリンピック委員会)への推薦が決議され、最終的にはJOCで派遣が認定されます。

 認定されると日本代表記者会見が行われます。テレビ、新聞、雑誌関係、ラジオなどの取材がこの頃から増えていきます。その後、制服採寸、健康診断などのため、JISS(国立スポーツ科学センター)に行き各種の手続きを行います。

 そうすると、次は様々な壮行会に呼ばれることになります。JSAFの壮行会はもちろんのこと、所属団体、出身学校、住んでいる市町村、出身地の市町村など本当に色々な壮行会に呼ばれます。

 壮行会や挨拶まわりがひと段落すると、次は現地での練習です。とは言っても、大体の場合、オリンピック会場であるハーバーはオリンピックの準備のために閉鎖されて使えないことがほとんどで、会場近くのヨットハーバーから出艇してオリンピックで使われる海面で練習します。

 選手によっては、前年のプレオリンピックで一通り経験していますが、風の傾向、潮流、波の立ち方、海面調査の他、移動手段、住む場所、トレーニング、マッサージ、買い物、リラックスできる場所、気分転換できる場所、などを探して慣れる事が重要となります。

 セーリング競技は、他の競技よりも長い期間行われるので、そういったセーリング以外の環境を整える事も重要になってきます。

◎オリンピックの特別ルールがあり、ロゴをマジックで消したりします

 そして一度帰国して仕切り直して、日本選手団として団結式があり、そのまま日本選手団として出国します。

 その時から、日本選手団に支給された服での生活が基本的には義務化されます。もし競技で専用のウェアを着なければならない場合、オリンピックの規約の中にメーカーのロゴの規定があるのでそれを守らなければならないため、大体の場合はロゴを隠す(テープやマジック等で消す)、もしくは規定の範囲内に収めるためにオリンピック用にメーカーロゴを規定内に収めてもらった物を作ってもらい着用するなどします。

 例えば、セーリングウエアのブランド、Zhik社の場合はオリンピック用に胸のロゴを小さくしたり、いつもならば袖の所に大きく入っているロゴがないものを提供しています。

 このように、オリンピックの規定に合うようにと着るものから気をつけないといけないのがオリンピックです。なおオリンピックのオフィシャルスポンサー契約をしている企業はこの限りではありません。

6月28日、ジャパンオリンピックスクエア(東京都新宿区)でおこなわれたセーリング代表記者会見。セーリング日本チームはSAILFAST社(JSAFとスペシャルサプライヤー契約)のZhikウエアで記者会見に出席しました

◎選手たちの宿泊施設「オリンピック選手村」ってどうなってるの?

 選手村については、セーリング競技の場合、大体本村とはかけ離れた場所が会場となることがほとんどで、いわゆる分村といってセーリング競技だけの選手村が設けられることがほとんどです。

 選手村は各国それぞれに部屋が割り当てられますが、ほとんどの場合、国ごとに棟が割り当てられます(1カ国の選手数による)。そして同国の選手、またはコーチ、スタッフと2〜4人の相部屋となります。

 選手村の食事は、本村と同じように24時間食べられるようになっていて、グローバルで多様な料理が用意されていました。本村と違うのはマクドナルドがなかったことでしょうか。

 あとはコカコーラ社のドリンクが飲み放題で、選手村の中に自動販売機は飲み放題だったし、食事スペースにも、もちろんありました。毎回話題になりますが、娯楽室には大量のコンドームが設置されていて、選手はお土産に持って帰るのは恒例となっています。

 実は予算の豊富なチームは選手村には入らず、アパートを借りていつもの海外遠征のように過ごすチームが多いです。

 というのも、オリンピックではIDカードを発行してもらえる枚数に限りがあり、このカードを持っていないと、ヨットハーバーも選手村も入ることができません。

 そのため、先ほども書いたように、トレーニングやマッサージをするときは選手村から外に出ないといけないし、セーリング日本チームの場合、コーチもIDカードがもらえないクラスがあるのでミーティングすら選手村でできないので、外に泊まるというケースが多いという事もあります。

 JOCのマルチサポートでは、本村近くに日本チームの本部を作り、そこに行けば、日本食が食べられたり、お風呂に入れたり、希望すればマッサージを受けたり、急な病気や怪我などもドクターに見てもらえたりする施設を開設していました。

 ただ、それは本村にしかなく、セーリング競技は自前で用意するので、コストがかかります。

◎いつもと雰囲気が違う。。。わたしが感じたオリンピック

 オリンピックの初日、更衣室へ着替えに行くと、そこはいつも私が知っている空間とは違っていました。

 まずは更衣室自体を使う人数が少ないということ。それに、みな口数が少なく、いつも挨拶する選手も挨拶しても返事が返ってこなかったり、緊張していて顔が強張っていたりと世界選手権やプレオリンピックの時などとは雰囲気がまるで違っていて、あ、これがオリンピックなんだと強く感じました。

 今までは個人の戦いだったけれど、国を代表して戦う、国対国の戦いなんだということをその時に強く実感しました。

 逆に、同じ国同士の選手やスタッフ間のコミュニケーションを特にレース前やレース後のチームコンテナの中や夕ご飯の時に一緒に食べたりするので、その時には一番リラックスできる空間であり、ギスギスした戦いの中で休める場所があるというのも大事な要素だと思いました。

 レース海面の状況シェアやお互いのがんばりが成績が良い時も悪い時もありますが、特に悪い時には励まされます。セーリングは個人の競技ですが、日本代表として、チームジャパン(今なら日の丸セーラーズ?)としてのチームビルドが必要だと感じました。

 レースが終わった私はオリンピックの閉会式に参加してから日本選手団のチャーター機で帰国しましたが、メダルを取った選手は座席をアップグレードされていました。

 日本に着いてからは、こちらがメダリスト、こちらが入賞者、そしてどちらにも当てはまらない選手はこちらです。と、はっきりと区別され、空港の出口へと向かいます。

 日本に到着してから、出口での取材や記者会見があるため、日本のユニフォームに着替え等、メディア対応の準備が必要だからそういった区別がされるのですが、私自身が結果を出せなかったという厳しい現実を突きつけられました。

 パリオリンピック代表の選手には、日本到着時に華やかな出迎えを受けられるように願っています。

特別デザインの船、セールに国旗が描かれるのはオリンピックならでは。ジェネカー、スピンを使う艇種はオリンピック前に注文して日の丸を入れてもらいます(写真は東京五輪より)
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