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大西洋横断ひとり乗り外洋ヨット、MINI6.50を大解剖する!

 大西洋横断ヨットレース「ミニトランザット」で採用されている船は、MINI6.50と呼ばれる、ひとりで外洋を走るために作られた専用のキールボートです。たったひとりでどうやって乗るの? その答えは単純明快。ひとりで乗れるように船を改造してあるのです。今回は、ひとり乗り外洋セーリングのスペシャルボート〈DMG MORI SAILING ACADEMY〉の内部を紹介します。(BHM編集部)

より速く大西洋を横断するため快適な居住空間でないが、速く走るための秘密が隠されてるカーボンで囲まれた船内。写真はレース直前のMINIの船内で(前方から後方を見る)、カッパ、セールタイ、予備シート、バック類を積んでレースモードに仕上がっている
DMG MORI SAILING ACADEMY/Raison22(タイプ M2.3)諸元
【BOAT】建造年:2022年、設計者:David RAISON、造船所:DMG MORI SAILING TEAM(ロリアンのチームヤード内でチームのボートビルダー/スキッパー研修生が型から建造)、 全長:6.48m、全幅:3.00m、水深:2.00m、マスト高:10.78m、マストレーキ :約 0〜10度 、スピンポール長:3.3m
【SAIL】インシデンスセール、メインセール:28m2(3ポイントリーフ)、ジブ:18m2(1ポイントリーフ)、コード0/ジェネカー:35m2、スピネーカー Maxi :90m2、 スピネーカー Medium:67m2(1ポイントリーフ)、ストームジブ :4m2
2025年ミニトランザットに挑戦するDMG MORI セーリングアカデミーの2人。1046艇に國米 創、1048艇にアレクサンドル・デゥマンジュが乗艇する。國米は東京五輪までフィン級、デゥマンジュは470で活動していたセーラーです
【ダガーボード】どれくらい下げているか分かるようにメモリの数字がふってある。ダウンウインド時は0~25%、アップウインド時は100%下す。リーチングの瞬間速度はフォイル艇に劣るが、ミニトランザット過去2大会はダガーボード艇が優勝していてフォイル艇より有利な傾向
【ラダー】ツインラダー。キックアップ式。水の抵抗と浮遊物に当たるリスクを下げるため、走行時は上ラダーをあげる
【カンティングキール】青いロープをデッキのウィンチにかけて両舷に38度振れる。上側にキールを振ることでキール効果を高める。伸縮性があり上側に倒したらキール自体がより刺さって40cm長くなる。船体とキールの付け根の金具はDMG MORIの精密機械で加工したもの
【食料】ドライフーズ、レトルト、インスタント麺、果物、ドライフルーツ、片手で食べれる軽食、等。フランス外洋ヨットの拠点、ロリアンには外洋セーラー向けのドライフーズ/レトルトの専門店があるほど需要は高い。甘党の國米はチョコは必需品
【セールロッカー】空っぽの写真を見ると、むき出しのカーボンが一目で分かる。パンチングすると波の音が響き渡る。セールを固定できるようにパッドアイが備え付けてある。船尾下の後部セールロッカーにはバックなどの保管場所にもなる
【ウォーターバラスト】船体真ん中の左右、スターンの左右、に合計4つのバラスト。容量は前バラスト120L、後ろバラスト80L。ギロチン式のハンドルが、シュノーケルとポンプに連動
【セキュリティバッグ・安全備品】レースコースの海図、イーパブ、消火器、アンカー、ロープ、発煙筒、等。ライフラフトに乗り込む際に、すぐ手に取れるGRAB-BAG(小型バッグ)には最低限のサバイバル備品が入ってる。バッグは視認性の高いオレンジ色
【メディカルバッグ・医療備品】薬や手術ができる様々な医療備品。痛み止め、抗生物質、添え木、包帯、メス、等。正しい使い方が分かるように医療教科書もルール上積まないといけない
【船内入り口】船内入り口付近が寝床。計器類も目の前にあって、トラブルの際にはすぐに、コックピットに出れる。レース中はタイマーをかけて20分の仮眠を分けてとる
【船内計器】風向、風速、低速が分かるセンサー類。緯度経度しか示さないGPS(プロッター機能無し。マップ表示はクラスルールで禁止されている)
【ロードブック】コミッティから発表されたレースコースの風予報、潮を確認して、事前に走るコースを想定
写真の驚いた表情はコミッティから禁止ゾーンの発表が分かった瞬間。既にルーティングに何時間もかけ、ロードブックを作成していたのでショックを受けている2人
【オートパイロット】白石康次郎のIMOCAやアメリカズカップの解析にも使われているMADINTEC社製のオートパイロットのコンピューター。Mini6.50艇に初めて取り入れたのは、DMG MORIセーリングアカデミーの2艇がはじめて
【燃料電池/EFOY】メタノールを使う発電装置(燃料電池)。これでリチウムバッテリーを充電。ソーラーパネルを使った太陽光発電も使うが天候に左右される。太陽光を使わないと1日で約1Lのメタノールを使う
【リチウムバッテリー】Seatronic製のOptimum Power(12v-100Ah)。ソケット部分はカーボンカバーで保護。ダイニーマで固定
【ライフラフト】ライフラフト。その奥にエスケープハッチ(非常脱出口)。トランサムから抜ける仕様。ライフラフトは15秒以内に船外へ出せることがルールで決められている
【応援メッセージ】1048艇のメインスイッチ横に「Cheeky tagada smile」とフランスで人気のグミfraise tagadaのかわいらしい絵と手書きメッセージ。アレクサンドルの彼女が書いてくれたらしい。「恥ずかしいから、詳しくは説明できない」と本人ははにかんで言う。愛はフランス人の原動力
【チームの集合写真】國米は1046艇の船内に、クルー全員が映っている写真を飾っている。独身の國米は、陸で支えてくれているチームを思ってがんばる。白石もIMOCAに同じ写真を飾っている
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