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【コラム】衝撃のスピード感覚。最新ビーカーモスV3がやってきた

 こんにちは、ワカコ・レーシングの和歌子です。先月のクラブ紹介記事でも軽く触れましたが、4月に最新のビーカーモスV3が届いたので紹介たいと思います。(レポート・写真/梶本和歌子 ワカコ・レーシング)

ビーカーV3でシドニー湾を飛ぶ和歌子。観光名所のオペラハウスとハーバーブリッジも直ぐそこです

◎価格は世界最高額レベル。しかし、説明書がないので組み立てに四苦八苦する

 昨年の今頃、そろそろモスが欲しいと思っていた頃にちょうどV3が発表されたので、すぐに注文を入れてしまいました。当初の話では1年後の今年7月に船が完成して8月に受け取る予定でしたが、昨年9月頃に2月製造のスロットが空いたということで、そちらに移動してもらいました。

 実際には船の製造が少し遅れて、3月末にニュージーランドから発送して4月10日に受け取りとなりました。費用はオプションや送料を含めたハルの値段が約700万円、リグとセールを含めた総額だと800万円を超えるのでシングルハンドのディンギーとしてはかなり高額な部類だと思います。余談ですが、担当セールスは470時代のライバルだったジョー・アレさんでした(ロンドン五輪470女子金メダル)。

 箱を開けて船を確認し、さっそく船の組み立てに取り掛かろうとしますが、説明書やマニュアルがないこともありかなり苦戦しました。

 モス経験はあるので、全く分からないという訳ではないのですが、コントロールロープの始まりのところにカニンガムやバングと書かれている他は何もなく、どのロープをどのようにして通して、その後にはスプライスをしてエンドレス加工する前提で船が用意されているのかなど、まずそれらを理解する所から始まります。

 また、ビームとウィングをどうやって付けるのか? ラダー・ガントリーを取り付けるスパナはどこからアクセスするのか? などなど、いちいち考えているとあっという間に時間が過ぎてしまいます。悪天候が続いたこともあるのですが、結局、受け取ってから進水するまで1カ月もかかってしまいました。

初めて箱を開けて中身を確認する。説明書もマニュアルもないので組み立てるまでに1カ月かかってしまいました

◎初めてV3に乗り、速すぎて背中がぞくっとするような感覚に襲われる

 初めて乗った感想はなんといっても乗る場所が狭いということにつきます。ウイングがそり立っているので、バランスを取るのも大変です。そしてフォイリングをしたら、あっという間に加速して、速すぎて背中がぞくっとするような感覚でした。

 それでも1週間程乗るとだいぶ船にも慣れてきて、沈を起こした時にどこに乗ったらバランスが取れるか、マニューバー時の船の挙動なんかもわかってきて、何とかコースを回れるようになってきました。

 そのあたりから、ウラーラ・セーリングクラブ(WSC)のウインターシリーズがスタートし、熱心なモス乗りによる早朝練習会も活発になってきて、私も混ぜてもらうようになりました。

 曜日に関係なく風が吹きそうな日にはWhatsApp(ワッツアップ)で連絡を取り合いながら、大抵は8時出艇を目処に予定が組まれます。私たちはクラブからちょっと離れたところに住んでいるので、5時半には起きて準備をしないと間に合いません。

 練習時間こそ短いものの、もはやオリンピック・クラスの選手たちとほぼ同じリズムで海に出るような感覚です。さすがはオーストラリアでも一番モスが盛んなクラブだけあり、モスのトレーニングをするにはこれ以上ないような環境です。

ウラーラ・セーリングクラブではモス仲間が集まり、朝8時からトレーニングしています

◎目指すはニュージーランドワールド女子優勝。週3〜5ペースでモス練習します

 若手の注目選手三人、ジャック・ファーガソン、ライアン・リトルチャイルド、オット・ヘンリーの3人も同じビーカーV3を保有、もしくは船が来るのを待っている状態なので、よく情報交換しています。

 他には、現ナショナルチャンピオンのハリー・プライス、ノースセールの開発担当のロブ・グリーンホージ、元ワールドチャンピオンのジョン・ハリスなどが週3、4日ペースで練習しています。

 また、葉山のワールドにも来ていたこともあり旧知のケーガン・ヨーク、レズ・ソープ、アンドリュー・シムといった他のクラブのセーラーもよく来てレースや練習会に参加しています。

 今年の年末から来年の年始にかけてニュージーランドのマンリーでワールドが開催されるので、みんなその大会を目標に練習しているようです。私も女子ワールドチャンピオンを目指して、みんなと一緒に週3〜5日程度のペースで年末まで練習して準備して行きたいと思っています。

今年12月にニュージーランドで開催されるモス世界選手権で女子優勝を目指してトレーニングします!

参考:ビーカーモスとは?
 ニュージーランドのマッカイボート製のモスで、設計はアメリカ人デザイナーのポール・ビーカーによるものです。現在はルナ・ロッサに所属するビーカー氏ですが、2017年にバミューダで開催された第35回アメリカズカップではオラクルのデザインチームに所属して、兄弟チームのソフトバンクも含めたスタッフ仲間と始めたプロジェクトがこのモスの始まりです。現在ビーカーの最新バージョンがV3です。詳しくはコラムで順を追って紹介していきます。(梶本恆平)

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