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インカレとeセーリング〜横国大ヨット部のeセーリング活用法

 いま多くの学生セーラーが注目しているeセーリング。オンラインゲームとしてだけなくトレーニングのひとつとしても使われているようです。横浜国立大学ヨット部に所属する古川悠航選手から「インカレとeセーリング」のレポートが届きました。古川選手は、昨年シンガポールで開催されたオリンピックeスポーツシリーズの日本代表選手です。横国大が練習に取り入れているeセーリングの活用法について紹介します。(BHM編集部)

ゴールデンウィークに開催された関東インカレ春季選手権でセーリング経験の浅いメンバーながらも健闘した横浜国立大ヨット部。普段の練習にeセーリング(この記事ではVirtual Regatta Inshore)を取り入れています

◎新チーム体制で挑んだ関東春インカレ

 私の所属する横浜国立大学ヨット部は、両クラスとも昨年と比べてレースメンバーがガラリと変わった新しいチームで春インカレに挑みました。(レポート/古川悠航 横浜国立大学ヨット部)

 スナイプの私は予選から出場しました。2、3番艇のスキッパーは初めてレギュラーとしてインカレに出場し、3番艇は半年ほどしか練習できていない未経験2年生スキッパーということで経験が浅い新しいチームで挑みました。

 結果として予選は1位通過を果たし、決勝ではスナイプは8位、470は7位に入り、部の目標としていた両クラスシード権獲得を達成しました。

 個人の振り返りとして、レース前は八景島という強豪校が少ない中、海面や風も汚い環境での練習と後輩育成に練習時間の多くを費やしました。葉山のライバルと比べると決してポジティブな状況とは言えず、去年と成長しているのか分からない状態でした。

 ですが、結果として予選と決勝を合わせてトップホーンを6回鳴らすことができ、自身の成長を実感できたレースとなりました。強風のボートスピードを活かして絶対に叩かない、リスクヘッジを重視したレース戦略や、細かな対他艇のタクティクスが功を奏したと考えています。

 私は、このインカレで目標を達成することができた理由には、eセーリングへの取り組みが関係していると分析しています。

実際のセーリングではレースコースを俯瞰(ふかん)で見ることはできません。eセーリングなら他艇との位置関係、コース全体を視覚的に考えながらレースできる利点があります

◎eセーリングとリアルセーリング

 eセーリングがリアルセーリングに活きていると実感することはたくさんあります。私はeセーリングが特にヨットを始めたばかりの人に絶大な効果があると考えています。

 また、eセーリングの世界ランキング上位にはリアルのワールドセーラーやオリンピアンも多いことから、リアルの中上級者にもこのツールを使うことで得られる新たな価値観や技術向上はあるのではないかと考えています。

 私の考えるeセーリングがリアルセーリングに活きると考える要素のうち、特に3つを今回紹介したいと思います。

(1)俯瞰した視点を養えること
 リアルでは船に乗っている視点からしかフリートを見ることができませんが、eセーリングでは俯瞰した視点からフリート全体を見ながらレースをします。これによって、風の振れに対する艇団の動き方、フリートの全体像をレース中にイメージしやすくなり、状況把握能力を向上させることができます。

(2)ルールの理解が深まること
 eセーリングではルールを違反した船は、10秒間、艇速が落ちるペナルティがあります。これにより、ルール違反をした瞬間に認識できます。実際のレースでは船をぶつけると大きな問題になるし、審問をした上で善悪が分かるので1件1件に時間を要しますが、eセーリングでは船をぶつけても10秒ペナルティが課せられるだけなので積極的に攻めた行動ができます。実際のレースの何倍ものケースが起こるのでルールについての理解も非常に効率よく深めることができます。

(3)ヨットの基本タクティクスを学べること
 eセーリングは風の振れが視覚的に分かるようになっているので、セオリーであるロングを走る(レグで長くなるタックを先に走る)、ブローに向かう、振れタック・ジャイブをはじめ、リフト、ヘッダー、スタートラインやゲートマークの有利不利などを視覚的にわかりやすく学ぶことができます。

横国大ヨット部が合宿所でeセーリングする様子。新入生の練習だけでなく、部内で競い合ったり、他大学と交流戦をおこなったり、公式大会に出場するなど積極的にeセーリングでトレーニングしています

◎横国ヨット部の普段の取り組み

 わたしたちはセーリング技術向上を目的に、部としてeセーリングに注力してきました。合宿の夜や、海上が荒れて出艇できない赤旗の日など、全部員でeセーリングを使って部内レースをしています。

 また、1年生は座学としても活用していて、リアルでレースに出れない技量でも実際にレースの雰囲気や進み方を知り、楽しむことができます。

 他にも部内ランキングを作成して競い合ったり、チームレースをしたり、他大学と合同練習をして親睦を深めたり、いろいろな楽しみ方をしています。

 470、スナイプ、クルー、スキッパーという普段戦えない「ポジション」に縛られず、また地域や年齢を超えて全国、世界の誰とでもレースができ、交流ができるのもeセーリングの大きな楽しみ方の1つであると言えます。

 また、学生王者決定戦という多額の賞金が出ている大型大会も年に2回開催されており、前回大会では個人、団体どちらも横国が連続優勝を達成し、日々の練習の成果を発揮することができました。

◎全国のヨット部に向けて

 eセーリングは学生大会だけでなく、世界選手権や国別対抗戦、昨年はオリンピックの種目にもなりました。規模としても年々拡大しており、世界中のセーラーからの注目を集めています。

 ヨットレース好きには非常に楽しめるし、ゲームが苦手な方はリアルの技術力向上という視点から始めても良いと思います。前述しましたが特に新人教育には本当に良いツールだと思います。

 この記事をご覧になって「部として」1日1レースでもeセーリングに取り組む機会がつくられ、みなさんが楽しめる機会が増えれば非常にうれしいです。

 そして今後、eセーリングが多くの人や団体をつなぎ、さらなるヨット競技の普及につながっていくことを楽しみにしています。

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