【コラム】セーラーが冬の練習基地に選ぶランサローテ島とは?
こんにちは、ワカコ・レーシングの和歌子です。バルクヘッドのコラムには初登場です。よろしくお願いします。今回は欧州遠征から帰ってきたので、その振り返りをしていきたいと思います(編注:ロンドン五輪470日本代表、SailGP日本に所属していた和歌子選手は、現在セーリングコーチを務めています)。(レポート/梶本和歌子 ワカコ・レーシング)
今回の遠征では、1月後半から大西洋に浮かぶスペイン領のカナリア諸島の中のひとつ、ランサローテ島にに滞在しました。
ランサローテの気候は、ほぼ雨が降ることがなく、基本的に晴れ、気温は平均20度と、朝晩以外はほぼ半袖半ズボンで生活できる、冬を忘れてしまうほどの暖かさです。暖かいを通り過ぎて暑い時もあり、宿ではエアコンが必要なほどでした。
ランサローテ島が冬のトレーニング地に選ばれる理由は、温暖な気候に加えて貿易風が強く吹く場所であるためです。日本チームが暖かさを求めて沖縄へ行くように、ヨーロッパの選手達がランサローテ島に行くような感じです。
中央の島がスペイン・ランサローテ島です。アフリカ・モロッコの西に位置しています
今回の遠征を振り返ると、周期はあれど、基本的には15ノット前後の風が吹いていました。風向によってうねりの方向は変わりますが、1月、2月は北西から東の風が多く、この風向の場合、陸近くだとフラットウォーター、遠くに行けば風も強く、うねりの入るコンディションも選べます。
ただし、西からのうねりの場合、ハーバーの入り口もスロープも共に西を向いているため、うねりが直接入ってきて出着艇がとても難しくなりました。
そういう時はハーバーを管理しているヨットクラブが連絡用のワッツアップ(世界で一般的に使われるメッセージアプリ)で注意を喚起する連絡があり、スロープにスタッフが常駐してくれて、3人がかりで海に浸かって出着艇を手伝ってくれます。
輸送、運搬のコストはスペインのカディスからアレシフェまで車とトレーラーで片道で20万円程と高価で、ヨーロッパの若手選手は費用的にもなかなか来れないそうです。
総じて言うと、ランサローテ島はスキー場のコースで例えると上級コースのような所で、ある程度のレベルに達した選手達がトレーニングに行くところと言った印象でした。
◎続々と決定する五輪代表。ランサローテでおこなわれた各国のオリンピック選考
次に、49er/49erFX/ナクラ17級のオリンピック選考の話をしたいと思います。オランダ、ハーグの2023年世界選手権、次にポルトガル・ビラモウラでヨーロッパ選手権があり、年明けには各国のオリンピック代表選手が決まって続々と発表がありました。
今回のランサローテ世界選手権が選考大会になっている国も結構あったようです。今回1番驚いたのは、ニュージーランドの有力候補だったローガン・ダニング・ベックが大会が始まる前日の練習で足の腓骨を折る怪我をしてしまい、選考大会に出場できずにキャンペーンが終わってしまったことです。
特に何か派手な沈などをしたわけではなく、足に荷重をかけ過ぎてしまいケガをしまったようです。私たちのチームとバースが近かったため、彼らが入念に船の整備をしていたのを見ていたし、突然片付け始めて大会を欠場してしまったことは非常に残念でした。
また、メダルレースが終り総合8位で大会を終えた49erFXカナダチームは、『私たちはオリンピックにいける!』と大声で叫んで、喜びを爆発させていました。
その喜びようは優勝したスウェーデンチームにも勝るものでした。私自身も選手として5回挑戦してきたので、何度も同じような光景を見てきていますが、子供の頃から何年も掛けてオリンピックへ切符を手にしたり出来なかった選手達を見ていると今でも心を動かされるものがあります。
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