強風の蒲郡でOPトレーニングレガッタ開催、第6回SAILFAST CUP
1月6〜8日、年明けからまだ間もない三連休、蒲郡の海に全国から小中学生のトップセーラーが集まった。「SAILFAST CUP」をこの時期にこの場所で開催するのは3年目となり、ありがたいことにジュニアヨット界では年始の恒例行事として認められつつある。(レポート/後藤浩紀 SAILFAST、写真/SAILFAST CUPレース委員会)
エントリー40艇のうち25艇は2月末に同地で開催されるJODAナショナルチーム選考会に参加する選手だ。OPといえども日本代表入りを目指す子供たちや保護者の方々は、真冬の寒さを吹き飛ばすほどの熱意を持っている。
そんなOPファミリーの想いが届いたのか、レガッタを通していかにも蒲郡らしい絶好のコンディションに恵まれた。寒くて熱い3日間をレポートしたい。
1月6日。風向はこの地で定番の300度だが、風速は5〜10ノット程度の軽風予報。いくら強風で知られる蒲郡でも、レガッタの1〜2日くらいは軽風が含まれることが多い。翌日から風が上がる予報のため、小柄なセーラーにとっては特に大事な初日になるだろう。
幸先良く第1レースを制したのは、先の全日本選手権で準優勝を果たした松永虎汰郎(中央区Jr)。父の鉄也氏は言わずと知れた北京五輪470代表であり、息子はまだ6年生ながら、鋭い風読みは父のそれを彷彿とさせるものがある。
少し風が上がった第2レースは地元のエース角森未岬(海陽海洋)が、続く第3レースは丁寧な振れタックで須永言葉(中央区Jr)がトップホーンを鳴らした。
フリートの緊張感がゆるんできたのか、第4レースではブラックフラッグにより大量13艇が失格。この大荒れのレースを落ち着いて制したのは、こちらも小学6年生の堀野 葵(兵庫Jr)。有力選手が初日から失格を抱える中、堀野が暫定トップで初日を終えた。
1月7日。朝から6度と気温が低く、沖には無数の白波が見える。こういう日の蒲郡は容赦がない。だがナショナルチームに入るためには、この風から逃げられないことを子供たちは良く分かっているのだ。
風向310度平均風速18ノットの中、予定通りに第5レースがスタートした。強風になると中学生が一気に元気になる。第1マークから全日本チャンピオンの藤田翔伊(兵庫Jr)が飛び出し、他の追随を許さないトップフィニッシュ。レース終了前後から風がさらに強まり、30ノットオーバーのガストが入り出したのでやむなくハーバーバックとなった。
午後からは安全のために海面を少し岸に寄せ、平均16ノット程度の風で2レースを消化した。この日の3レースをオールトップの藤田が暫定トップ。2位松永、3位堀野の順で最終日の朝を迎えることになった。
ここで閑話休題。SAILFAST CUPの大きな特長は、あくまで練習会だと割り切っていることである。選手たちはレガッタ中に道具を変えても構わないし、計測も実施しない。選考会に向けて道具を試す貴重な機会になるからだ。
その代わり運営はレースコースの設定や成績発表に強くこだわっている。しっかり風軸を捉えたフルサイズのコースを設定し、先頭艇フィニッシュと同時に成績の入力を始め、最終艇がフィニッシュするより先に暫定トップ3艇のビブスを交換している。
子供たちはレース毎に自分の暫定順位をコーチボートから聞き、前後との点差を確認することもできる。私が知る限り、ここまで成績が早く出るレガッタは世界のどこにもない。
1月8日。朝の気温はなんと2度。風向も風速も前日同様のザ・蒲郡なコンディションで、第8レースを制したのは我が次男の後藤晴人(中央区Jr)であった。強風のスピードには定評があるのだが、誰に似たのかコース取りが苦手で、沈も多く成績が安定しない。
しかし今回、強風で藤田翔伊に土をつけた唯一の選手となった。続く第9レースは藤田の圧勝。このあと、またもガストが30ノットを越えてハーバーバックとなり、そこから風は収まることなく、残念ながら最終日はこの2レースで大会終了となった。
優勝は下馬評通りの藤田翔伊。堀野と松永の小学生2名が同点で2位と3位を分けた。この上位3名には特製のトロフィーとZhik賞品、加えてワスプチャレンジへの参加権が与えられた。
続いて山本汐穏(高松Jr)、地元の角森、そして長堀 滉(中央区Jr)までが入賞を果たした。上記の選手のみならず思い通りのレースができなかった選手も、この経験を来月の選考会で目標を果たすための糧としてほしい。
そしてまだ選考会に届いていない選手も、蒲郡の強風の中でしっかりと時間内にフィニッシュできたことを誇りに、来年以降の日本代表入りを目指してくれればと願うばかりだ。
今回も多くの企業やサポーターのバックアップをいただいた。迅速かつ柔軟にコース設定できるマークセットボット。レースの振り返りだけでなく安全管理にも大きく寄与するTracTrac。最小人数で効率よく運営するために、これら最新の機器には大いに助けていただいた。
またスタッフ、ボランティアの能動的かつ献身的な働きにも感謝したい。今後もヨットの楽しさを凝縮したようなイベントを各地、各クラスで開催していきたいと考えている。