2023年バルクヘッドマガジン・セーラー・オブ・ザ・イヤー発表
みなさん、こんにちは。バルクヘッドマガジン編集長です。早いもので大みそかになりました。あっという間の1年でしたね。さあ、バルクヘッドマガジン年末恒例のセーラー・オブ・ザ・イヤーの発表がやってきました。(BHM編集部)
バルクヘッドマガジンによるセーラー・オブ・ザ・イヤーは2008年に始まりました。通称「ヨット馬鹿大賞」と呼ばれる日本でただひとつのセーラーに送られる賞です。
選定の基準は、単純に人に刺激を与える行動をしたか、簡単にまねのできない「すごい!」ことをしたかを重要視しています。
過去の受賞一覧を見ればお分かりになるでしょう。その年にセーリング界を大いににぎわせた選手/チームが受賞しています。気になる方は当時のバルクヘッドマガジン記事を検索してみてください。
これは編集長の希望ですが、この賞を受賞するセーラーには小・中・高校生の目標になる存在になってほしいし、セーリングだけでなく、普段の行動や言動、大袈裟に言えば生き方のような部分まで、子どもたちがあこがれる、そんなセーラーであってほしいと思います。
この賞にトロフィーや賞状はありません。それ以上に「彼はヨット馬鹿に選ばれた真のセーラーだ」という称号が与えられます。人から馬鹿と呼ばれるほどセーリングに打ち込んだとしたら、これほど名誉あることはないでしょう。
さあ、2023年度バルクヘッドマガジン・セーラーオブ・ザ・イヤーの発表します。
吉岡選手の活躍をご存知の方は多いことでしょう。東京五輪までは470女子で吉田 愛・吉岡美帆組で活動。2018年にデンマークで開催された470世界選手権で金メダルを獲得。リオ五輪5位、東京五輪7位。東京五輪後は岡田奎樹選手と470男女ペアを結成。2023年オランダ世界選手権で二度目の金メダルを獲得しました。
いま日本で五輪種目世界選手権の金メダルを2個持っているのは彼女だけです。言わずと知れた世界ナンバーワンのクルーであり、当然ながらパリ五輪での活躍を世界から注目されている存在です(※パリ五輪日本代表は2024年4月の代表選考で決定します)。
中学まではバレーボール。芦屋高校ヨット部でセーリングに出合い、立命館大でインカレを目標に活動。オリンピックの道に入ったのは大学4年になります。中村健次さん(東京五輪監督)の勧誘で日本セーリング連盟が企画したトライアルを経て、ロンドン五輪後の吉田 愛選手とコンビを結成しました。
当時のことはよく覚えています。たしか2013年にフランスで開催された470世界選手権が国際大会デビュー戦でした。よくも悪くも「大学生のヨットの乗り方」で、このままで大丈夫なのかな? と心配半分、期待半分で見ていました。
それからの彼女の活躍は目を見張るものがあります。吉田 愛、岡田奎樹という日本を代表するスキッパーとコンビを組んで日本のトップのみならず、世界でも頂点を極めました。吉田、岡田というスキッパーにけん引される形でタイトルを獲得できた、と思われている方がいるかもしれません。
でも、みなさん、世界のナンバーワンのスキッパーがクルーにどんなことを要求しているのか考えたことがあるでしょうか? 想像すれば当たり前のことですが、世界でいちばんになるために世界でいちばん厳しい要求をしているのです。
吉岡選手はセーラーとして恵まれた体格をいかしたパワフルなセーリングが特長的です。でも、世界には彼女以上に恵まれた体格の選手はたくさんいます。彼女が戦う舞台ではアドバンテージになりません。
では、どうして世界の頂点に登れたのか(それも2度も)といえば、スキッパーからの厳しい要求に応えてきたからで、人には見せない、ひたむきなトレーニングを積み重ねてきたからにほかなりません。これを継続できる力が彼女の本当の強さなのでしょう。
編集長は国際大会の風待ち中など、吉岡選手と話すのが好きで、彼女の頭のなかを探ろうといろいろ質問するのですが、話せば話すほどわからないことばかりで、それがおもしろい。
一度「コンビを組むって大変だと思うけれど、これまで本気でヨットをやめたくなったことはあるの?」と聞いたことがあります。吉岡選手は「あります。3回あります」と即答(笑)。みなさんが気になるその話の詳細は、今度聞いておきますね。
セーラー・オブ・ザ・イヤー受賞者一覧
第15回 2022年 外薗潤平(470、スナイプ両クラス全日本制覇)
第14回 2021年 霞ヶ浦セーリングチーム(高校多種目制覇)
第13回 2020年 松尾虎太郎(スキッパー、クルーで活躍)
第12回 2019年 鈴木晶友(ミニトランザットで大西洋横断)
第11回 2018年 京都大学ヨット部(全日本インカレ総合8位)
第10回 2017年 亀井直文(GC32コパ・デル・レイ優勝)
第9回 2016年 白石康次郎(4度目の世界一周に挑戦)
第8回 2015年 高山大智(日本初420ワールド優勝ほか)
第7回 2014年 土居一斗、愛実兄妹(アジア大会兄妹銀メダル)
第6回 2013年 テンクォーター(日本初トランスパック優勝)
第5回 2012年 近藤愛、田畑和歌子(世界ランキング1位)
第4回 2011年 後藤浩紀(モス級。日本最速記録達成)
第3回 2010年 慶應義塾大ヨット部(インカレ総合準優勝)
第2回 2009年 原田龍之介、吉田雄悟(470で相模湾一周)
第1回 2008年 山田 寛(プロセーラー)
※受賞理由詳細は下記リンク先の過去記事を御覧ください
※ヨット馬鹿(YB)エンブレムは、大坪明ヨット馬鹿デザイン事務所に制作していただきました。毎年ありがとうございます
- 【過去記事】バルクヘッドマガジン・セーラー・オブ・ザ・イヤーhttp://urx3.nu/eweg