美しく豪華なヨットが集うサントロペ・クラシックヨットの世界
わたしたちセーラーが想像する、ため息がでるほどの美しい景色とはどんなものでしょう。あざやかな日差し、透明度の高い海、風を受けて美しいヨットが波を切って走る。セーリングするヨットは風景の一部であり、まるで絵画のように見えるかもしれません。そんな風景を夏の終わりのフランス・サントロペに見ました。(BHM編集部)
9月28〜10月8日までフランス南東部、地中海に面したサントロペで「Le Voiles de Saint-Tropez」(レ・ヴォワール・ド・サントロペ)が開催されました。25回目を迎えるこのヨットレースは、クラシックヨット、マキシヨット、セーリングクルーザー(モダン)の3部門でおこなわれる「帆=Voiles」の祭典です。
Le Voiles de Saint-Tropezは、ヨットレースでありフェスティバルです。開催される10日間、サントロペの港には100フィート超えるマキシクラス、1800年代に建造された船も含まれるクラシックヨット、そして現代のプロダクション艇まで250艇が集まりました。
参加するのは出場選手だけではありません。この優雅で豪華で美しいヨットレースを見ようと、世界中から観光客が訪れるのです。海上では毎日11時からヨットレースが開催され、陸上では大型テントが立ち並び、夕方からは音楽ライブ、パーティがおこなわれます。
バルクヘッドマガジンが取材していて一番興奮したのは、日本では見られないトラディショナルクラスです。これらは主に1970年代までに建造されたクラシックヨットで、1958〜1987年までアメリカズカップで採用された12メートル級もこの部門に含まれます。
驚いたことに1800年代のヨットが5隻出場していて、どれも美しくレストアされ、セーリングする姿はまるで芸術作品のようです。今回エントリーしたヨットで最も古いものは1874年のヨットでした。
1800年代というと日本は明治時代。廃刀令が公布されたのが1876年とのことなので、町には刀をさした武士が歩いていた時代です。そんな時代に海外ではセーリング文化が育まれていたとは、なかなか想像できません。
また、クラシックヨットで目を見張ったのは〈ELENA OF LONDON〉です。ヘレショフ設計による全長180フィート/45メートル、全幅8.14メートル、喫水5.2メートルのスーパーヨットで、2本マストからメインセール、ジブセール、スピネーカーが展開される姿に圧倒されました。
美しく豪華なヨットが見られるのは、ヨットレースだけではありません。サントロペの港にはぎっしりと出場艇が横付けされるので港のまわりを歩けば、ヨットの細部をのぞき込むことができます。
サントロペの町がヨットで埋め尽くされた10日間。ヨットは乗り物という側面だけなく、その背景には長い年月をかけて育まれた文化があり、美しい芸術作品であることを再確認しました。Le Voiles de Saint-Tropezは、セーラーにとって夢のような世界であることに間違いありません。
- Le Voiles de Saint-Tropez(公式)https://www.lesvoilesdesaint-tropez.fr/
- BULKHEAD magazine Photo Galleryhttps://junhirai.photoshelter.com/gallery/2023-LES-VOILES-DE-SAINT-TROPEZ/G00002Z1YkLJUAMM/