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4年ぶりに開催、西日本医学生セーラーの熱い夏が帰ってきた!

 8月11日〜12日、「第75回西日本医科学生体育大会(西医体)ヨット部門が、滋賀県柳が崎ヨットハーバーで開催されました。(レポート/高蓋寿朗、写真提供/広島大学医学部ヨット部、西医体ヨット部門運営本部)

琵琶湖で開催された第75回西医体が4年ぶりに開催されました。この大会は西日本医大生のヨットレースです。今年は16校が参加しました

 西日本の医学生セーラーにとっては、最も大切なレースである西医体ヨット部門はコロナ禍の中、2020年から3回にわたり中止となりました。このため、西医体に出場することさえかなわないまま、夢を後輩に託して卒業していった学生も多くいました。 

 8月11日、西医体ヨット部門は、4年ぶりに琵琶湖柳が崎ヨットハーバーで開幕しました。選手にとっては、3年間にわたって、待ち望んだ大会であり、台風一過の快晴の天候のもと、2日間にわたって、予想通り“熱い”レースが繰り広げられました。

 この大会は、470級、スナイプ級各校1艇によって争われ、参加校は以前20校前後となった時期もありましたが、今年は参加校16校、そのうち両クラス参加して総合優勝を争ったのは11校のみとなっていました。医学生の講義、実習時間の増加に加えて、3年間のこの大会中止の影響はあまりに大きかったようです。

 しかし、レースに出場する選手はというと、以前と同様、医学生とは思えない日焼けした顔で、パステルカラーに髪を染め、不敵な笑みを浮かべて、大声を出しながらハーバーから出艇して行きました。その姿には、この大会のなかった3年間の苦しさと、一緒に練習した先輩たちの無念さを、このレースにぶつけるという彼らの思いがあふれていました。

広島大の出艇前の円陣
東京五輪ではフィン級で活動した西尾勇輝選手(和歌山医科大)

 11日、12日のレースは、琵琶湖特有の、微風から軽風、強弱が常に変化し、ふれまわる風をいかにとらえるかを競う神経戦となりました。

 両クラスともに、強さを見せたのは、ジュニアセーラーとしても活躍してきた選手たちの艇でした。和歌山医科大学(和医大)スナイプ級の西尾勇輝選手は東京オリンピック強化選手にしてSailGP Team Japanのメンバーに選出されたという経歴をもち、広島大学(広大)470級の前田海陽選手もOP級、レーザー4.7級のジュニア選手として国際大会にも出場経験があります。

 他の学生は大学入学後にはじめてヨットに乗ったという選手ばかりで、この2人はレベルが違いすぎると思いきや、彼らが、所属する大学だけでなく、大会全体のレベルも押し上げていることに驚かされました。

 もちろん、彼らは出場すれば、ほとんどのレースで、トップ集団を引っぱりますが、他の艇も湖面特有の風を必死でよんでくらいついていました。

 彼らの所属する2大学をみても、和医大は470級の赤松里彩選手も何度もトップフィニッシュし、広島大学470級では2日目に前田選手に変わって乗艇した首藤大地選手も6レース中3レースでトップフィニッシュするなどの活躍を見せました。

 この2校に加えて、地元京都府立医科大(京府医大)が、上位に食らいついて、総合優勝争いに加わりました。京府医大の堅実さは、トップフィニッシュ1回のみで、総合優勝をさらっていった2018年浜名湖での西医体の再現のようでもありました。

 1日目6レースを終えた段階で、この3校に加えて、この大会の古豪でもある神戸大学、京都大学、浜松医科大学が総合順位争いにからむ展開となっていました。また、クラス順位争いでは、残念ながら1クラスのみの出場となった、470級の滋賀医科大学(滋賀医大)とスナイプ級の香川大学がクラス優勝争いに加わって、意地を見せていました。

初日470級
2日目スナイプ級

 2日目も朝から快晴、4m前後の軽風が安定して吹く中、6レースが行われました。この日もスナイプ級は和医大が圧倒して、全レーストップフィニッシュ。470級は和医大と広大がトップを3レースずつでわけあいました。総合優勝争いは、和医大が独走し、スナイプ級も健闘した広大が2位を守り、両クラスで必ず上位に入った京府医大が3位を確実にしました。

 クラス別の成績は、470級では、広大1位、和医大2位は変わらず、この2校以外に2回のトップフィニッシュを奪った滋賀医大が3位を守りました。スナイプ級では、和医大1位、京府医2位は変わらず、広大が前日4位から順位を上げて3位に入りました。

 2つの大きな台風が日本を直撃する合間に、2日間で12レースが成立したということは、この大会にかける選手たちへの大きな贈り物であったような気もします。

 結果をみれば、ジュニアでの経験をもつ選手たちが所属する大学が各クラスで勝利をつかみましだが、当日のレースの様子を見ると、彼らの艇が、必ずしも「他艇をよせつけない」というわけではなく、他の選手たちの健闘も光っていたように思います。

 彼らのような実力のある選手の存在が、医学部セーラーのレベルを向上させ、部員確保に悩む各大学の活動も活性化するはずです。今大会の盛り上がりをきっかけに、以前の最盛期のような20校近くが参加する大会になっていくことを望むばかりです。

 さて、2024年の西医体ヨット部門は広島開催が予定されています。真夏の広島は、シーブリーズに恵まれる日が多く、レース海面はハーバーあるいは堤防といった観戦可能な場所のすぐ沖に設定される予定です(※)。選手にとっても、OB、OGを含む関係者にとっても、今年以上に熱い大会になることを期待しています。

※ 2014年OP級全日本(https://bulkhead.jp/2014/11/30262/)、2016年西医体、2022年ハンザ世界選手権でも「見せるヨットレース」が実施された海面です

第75回西医体 470成績
第75回西医体 スナイプ成績
第75回西医体 総合成績
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