そのスピードの理由は、船の全長に対して不釣り合いに見える巨大なセールです。セールから得られるパワーをダガーボードとカンティングキールで抑えこみスピードに変えています。〈DMG MORI SAILING ACADEMY〉の場合はマストを含めて全てカーボンで建造されているため、極めて軽量化されているのも特長です。
Mini6.50では一定のルールのもと、プロトタイプ(制限のないオリジナル艇)とシリーズ(制限あるプロダクション艇)に分けられます(単純な見分け方は、マストがカーボン/黒はプロトタイプでアルミ/銀はシリーズです)。プロトタイプではフォイル付きでIMOCAのように飛んで走るタイプも登場しています。ただし、外洋ヨットレースゆえフォイルの有利不利はコンディションに左右されるため、どちらが優れているか判断はむずかしいもの。ただし、船の進化という意味では注目に値します。〈DMG MORI SAILING ACADEMY〉はプロトタイプになりますスコウ形状のバウ。スコウとは幅広で平らになっている船体でプレーニングに適しています。ダウンウインドの走りが多い大西洋横断コースを意識していて、スピードが早く前方の波を乗り越えてしまうため、バウスプリットやバウが波に突き刺ささりにくくする意味もあります設計面や素材でも自由度の高いプロトタイプ。〈DMG MORI SAILING ACADEMY〉の船体はカーボンのサンドイッチ構造で極限まで軽量化して強度を保っています。マストもカーボン製です。セールは6枚積むことが許可されていて、メイン、ジブ、ストーム(荒天用)ジブ、それにスピン、ジェネカーが3枚。どのタイプのセールを選択するのかも勝敗を分ける重要なポイントです船体の全長に比べるとやたら長い印象がある(船体の半分ぐらいありそう)バウスプリット(カーボン製)。根本で折れ曲がる可変式タイプで未使用時はバウ側に折りたたまれています外洋航海ではオートパイロットや航海計器で使用するバッテリーが重要な役割を持ちます。〈DMG MORI SAILING ACADEMY〉の発電装置はEFOY(エフォイ)製でメタノール(写真左上)から発電するというもの。天候に左右される太陽光発電に比べて安定して電力を確保できる利点がありますオートパイロットはMADANTEC(マダンテック)製。ウインドモード、コンパスモードに加えて、ウインドモードにプラスされるヒールモードがあり、船がブローに入った場合など自動的にラダーを動かしてヒール角度をコントロールしてくれる優れもの。改良が重ねられトラブルが少なくなったことも好成績につながっています〈DMG MORI SAILING ACADEMY〉のカンティングキール。風上側にキールを倒すことでキール効果をより高めます。キールのコントロールは手動です。わかりにくいですが、キール部分は袋状の中にあり、、、袋を外してみると海水といっしょにキールのストラットがあらわれました。キールと船体との付け根にある金具はDMG MORIで制作したものですヒールをコントロールするためウオーターバラストを使用します。船体のミドル部分とスタン部分に海水が入るタンクがあり、それが両舷にありますミドル部分で約90リットル、スタン部分で約40リットル)。満タンになるまで3〜5分で窓枠(上写真)から水が入ってくるのが分かります。水を排出するには約10分掛かります