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沖縄座間味島から世界へ。HOPE育成プログラム冬季強化合宿

 1月、オリンピック強化委員会が未来の五輪選手を育てる「HOPE育成プログラム」が本格的に動き出しました。今年で3年目を迎えるHOPE育成プログラムは、世界トップクラスのセーラーを育てる日本独自のプログラムです。バルクヘッドマガジン編集部が、沖縄座間味島で開催された強化合宿を取材しました。(BHM編集部)

座間味島でおこなわれた第1回HOPE育成プログラムの参加者一同。選手たちは月に1回の強化合宿に参加して実力をつけ国際大会に挑戦します。結果がすぐに出ると限りませんが、集中しておこなうきびしい練習は必ず糧となるでしょう

 冬の名物トレーニングとなっている座間味島の強化合宿はこれまで何度か取材しています。記憶にあたらしいのは東京五輪前におこなっていた合宿で、日本代表を目指すトップチームだけでなく、スペイン、フランスのトップチームなどが合流して集中的にトレーニングしていました。この強化合宿で日本のレベルが向上し、代表選考の最終まで高いレベルで戦っていたのはご存じのとおりです。

 スペインから来日して合同練習していたジョルディ・シャマール(29歳)は、この合宿で強風域のセーリングが飛躍的に伸び(それまでは微軽風が速いという印象でした)、東京五輪で銅メダルを獲得。その後、SailGPスペインチームのヘルムスマンに抜てきされ、名実ともに世界のトップへ駆け上がりました。

 今回、バルクヘッドマガジンが座間味島のHOPE育成プログラムを取材撮影していて思ったのは、「良い意味で変わっていない」ということ。座間味島のトレーニングは想像以上にハードなものです。まさに“虎の穴”であり、きびしい環境で練習するのに座間味島はうってつけの特訓場といえます。

 座間味島で練習する利点は大きく2つあると考えています。真冬にも関わらず本島とは比べようもない高い気温でトレーニングできること(ケガをしにくい)。希望する風が吹き、海面を選べることで合理的なセーリング練習ができることです。

 この環境のなかで「HOPE育成プログラム」の具体的な要素を落とし込んでいきます。フィジカルやルール、気象、食事など各分野の専門家が担当することで、セーリングだけでなく成長期のからだ作りや知識が身につくなど、座間味島は選手を育成するのに最適な場所といえるでしょう。

 13〜22歳までが参加するHOPE育成プログラムは、今年から9名(第3期生)が加わり現在21名が在籍しています。選手の能力、結果にあわせて、レーシング(2名)、アドバンス(10名)、ベーシック(9名)に分けられ、それぞれ選手の経験、知識、体力にあわせたメニューが組まれています。

 それでは、座間味島の「HOPE育成プログラム」でどのようなトレーニングがおこなわれているのでしょうか? バルクヘッドマガジン編集部が撮影した写真とともに紹介します。

海上練習の拠点となる「座間味村歴史文化・健康づくりセンター」。日本オリンピック委員会のセーリング競技強化拠点でもある座間味村の協力で施設を使わせてもらっています
練習中は陸でも海でも専門トレーナーが2名以上帯同して選手個人の体をチェックします。写真は出艇前のストレッチ
年末におこなわれたHOPEプログラムでは470級クルーでパリ五輪を目指す木村直矢選手(ピアソンマリンジャパン)が参加。後輩となる選手たちに丁寧に指導しながら、若い選手たちから刺激を受けていました
出艇前のブリーフィングで練習内容を確認。ILCA、ダブルハンド(470、420)、iQFOiL、カイト、49er、FXにそれぞれコーチが付き、選手の実力にあわせて指導します
オリンピック強化委員会の中村健一コーチ。海上、陸上トレーニングではもちろん、合宿生活面でも細部に分かって目を配ります。合宿生活では当然ながら時間厳守。1秒でも遅れると中村コーチから厳しい指導が入ります
厳しい海環境の練習は強靭なセーラーを育ています。座間味名物ともいる大波強風は日本選手が苦手とされてきた強風を克服し、世界のトップと対等に戦える選手を育成してきました
経験の少ない選手が成長するにはハードコンディションでも攻めたセーリングが不可欠。合宿期間中は数え切れないほどの沈を繰り返します。沈をした数だけ選手は成長します
湾内で練習すればフラット海面を選べるのも座間味島のメリットです。フォイル艇やハイスピードボートは島と島の間の平水面で思う存分練習できます
毎日のランチはおにぎり。食事担当スタッフ(栄養士)、選手コーチが早起きして全員の食事を用意します。このほか練習中、練習後の補食も用意されます
セーリングには素晴らしい環境の座間味島ですが、当然ながら日本とは思えない美しい景色もあります。しかし、選手たちは景色を楽しんでいる余裕はないかもしれません。それだけセーリングに没頭しています
コーチボートから指導を受けるFX級の市橋愛生/後藤凛子(高校3年)。昨年29er世界選手権で銀メダルを獲得したチームですが、FXは乗り始めたばかりです。これでもか!というぐらい何度も沈をしていました
陸上シミュレーションもおこなわれます。海上練習前に手の位置、足の位置をシミュレーションで確認。ほとんどの選手はスキッパー、クルーどちらも練習します
帰着後は全員でフィジカルトレーニング。専属トレーナーの指導でメニューを変えながら選手にあわせて体力アップをはかります
ボールを使ってリクリエーションを混じえながらトレーニングすることもあります。チーム戦などは選手たちの性格があらわれる、おもしろいメニューです
座間味島の特長といえるランニングコース。7〜8キロほど距離ですが座間味はアップダウンの激しい山です(山頂は標高207m)。海からあがった後、毎日おこなわれるランニングはきついのひとことです。そして驚くべきは池田海人選手(写真)の体力。飛び抜けて早く、全員1周のところを、ひとりだけ2周走る強靭な脚力です
選手、コーチの生活拠点となる座間味村立児童生徒交流センター。ここで約2週間、缶詰状態となり朝から晩までセーリングのことだけに没頭します
交流センターにはローイングマシンが設置され、専門トレーナー指導のもとフィジカルトレーニングがおこなわれます
トレーニングのあとはたのしい食事の時間。食事の量は選手によって異なり、体重を増やしたい選手にとってはつらく思える大事な時間です
毎日の食事は栄養士が考案したセーリング選手向けのメニューが用意されます
20時からは毎日オンラインで英会話レッスン(30分程度)がおこなわれます。セーリング競技に英語力は不可欠です。英会話レッスンも選手の能力に応じてレベルアップがはかられています(オンラインの先生は教えるだけでなく、選手の成長過程を採点しています)。
合宿中は専門家による気象、ルール、メンタルなどの講習がおこなわれます。あたらしい第3期生(ベーシック)と内容が異なり、3年目となる第1期生はかなりの知識を身につけています
講習の後は抜き打ちでテストすることも。また、年間の最後には上のクラス(ベーシック→アドバンス→レーシング)へ進むための筆記試験もおこなわれます。セーリングの上達だけでなく、ルール、気象の知識も成長しなければ次へ進むことはできません
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