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未来のオリンピックセーラーを育てるJSAF HOPE育成プログラム

 みなさん、未来の五輪選手を育てる「HOPE育成プログラム」をご存知でしょうか。1年を通じておこなわれるこのプログラムは、日本セーリング連盟オリンピック強化委員会によるプロジェクトです。オリンピックを目標に掲げるユースセーラーが集まり、合宿形式でセーリング技術やヨットレースに必要な知識を徹底的に学びます。バルクヘッドマガジン編集長が、その特訓現場を取材しました。(BHM編集部)

オリンピック強化委員会がすすめるHOPE育成プログラムはユース選手がジュニアワールドやユースワールドで活躍し、オリンピックのメダル獲得を目標にするエリート選手を育成するプログラムです。写真は49er級に乗る嶋倉照晃(49erジュニアワールド40位)、後藤凛子(29erワールド2位、ユースワールド3位)

 だれがオリンピック代表に選ばれるのか? その答えを知っている人はだれもいません。しかし、日本代表になる選手は、強い意志を持って日々練習している選手であることは間違いありません。結果が出るまで時間の掛かることだし、続けていくための精神力も必要です。軽い気持ちではできないことです。

 4年周期で開催される夏季オリンピックは、2024年パリ五輪、2028年ロサンゼルス五輪、2032年ブリスベン五輪まで決まっています。それ以降も基本的には4年毎に繰り返される開催年は変更されることはありません。

 例えばいま15歳の選手は、パリ五輪で17歳、ロス五輪で21歳、ブリスベン五輪で25歳になっています。オリンピックイヤーになったとき、そしてオリンピック当日に選手の能力をどのように高めるのかが、日本のみならず世界各国の課題です。

 2021年にスタートしたHOPE育成プログラムは13〜23歳までの選手が対象です(2022年度の参加要件)。2022年度は21名が在籍し、和歌山ナショナルトレーニングセンター、沖縄座間味島を拠点に、月に一度一週間前後の強化合宿がおこなわれています。

HOPE育成プログラムの概要。3種類の選手カテゴリーにより講習内容が異なります。HOPE選手になるには参加条件(国内外大会の成績)を満たすほか、強い意志のある選手は12月に予定されているトライアルを受けることができます(詳しくは欄外リンク参照)

 講師にはオリンピック強化委員会のコーチをはじめ、各ジャンルのエキスパートが務めます。その内容は多岐におよび、技術や理論、戦術などを学ぶ実践トレーニングだけでなく、陸上でルール、気象、セール、種目別の身体能力向上を目的にしたフィジカル、レースでの感情を整理するメンタル、食事・栄養、英会話などなど。また、トップ選手の資質や行動規範を学ぶインテグリティ講習などが組み込まれています。

 日本セーリング連盟・オリンピック強化委員会の「早い年齢から段階的に世界で活躍する選手を育てる」という試みは過去になかったもので、これは短期で答えが出るものではなく、先の、またその先のオリンピックを目指した長期計画です。

 9月後半、和歌山でひたむきにトレーニングするHOPE選手の様子をお伝えします。

コーチから直接指導を受けられるのがHOPE育成プログラムの特長です。今春からリオ五輪代表の土居一斗(右から2番目)がオリ強スタッフに加入したことで一層実践的な講習がおこなわれるようになりました
朝7時に集合して身体の目を覚ますウォームアップ。ラジオ体操、紀三井寺の階段をダッシュであがるなど心拍数を高める運動をおこないます。毎日のメニューは専門トレーナーが考案します
気象講習では気象予報士でありセーラーでもある岡本治朗さんが、現状の天気図や概況、一般的に用いられる気象予報アプリを参考にして天気を読み解きます
出艇前に陸上で動作確認。トラピーズ・タッキングで効率よく移動するために、ジブシートの位置、手の動かし方、足の運び方など細かい指導を受けます
HOPE育成プログラムで扱う艇種は49er、FX、ILCA、420、フォーミュラカイトなどの五輪へつながる種目のほかマッチレース講習で使用するキールボートまで。海上練習は毎回テーマがあり9月合宿ではスタートを徹底的に練習しました
ルール講師をつとめる吉本昌弘さん。合宿テーマに沿ってスタート前におこりやすいインシデンスを例にあげて解説しました。単なるルール講習ではなく、レースで勝つためのルールを学びます
選手はグループに分かれてディスカッション。選手たちが両艇の立場になって可能性のあるRRS規則を考え、最後はスタッフがジュリー役をつめてて実践的な抗議、審問形式でおこなわれます
参加選手が目標とするのは日本ではなく世界です。ルール講習では海外大会を審問を想定して英語でジュリーとのやり取りをすすめるなど、よりリアルな講習がおこなわれます
海上ではギリギリのRRS42条(推進力)を学びます。ルール講師がRIBから選手の身体の使い方(違反の有無)を即時に判断して指導します。ルールを知るだけでなく、どこまでルールを利用してボートスピードを上げるのかを学びます
フィジカルトレーニングは専門トレーナーが選手・コーチと話し合い、基礎体力のほか、競技種目に必要な筋力をつけるためのトレーニングをおこないます
HOPE育成プログラムではオリピック選手や国際大会で活動してきたセーラーが実際に乗って指導します。写真は高校生選手と一緒に乗る土居一斗。高校生にとってこれ以上見本となる相手はいません
帰着後のブリーフィングで課題にしていたことができたかどうかを発表します。細かく自分の動作を振り返ることで、できること、できないことが明確になります。また、大勢の前で発表するプレゼン力も学びます
日没までトレーニングしたらハーバーから宿舎までランニング。毎夕食後は各部屋で英会話のレッスンがおこなわれます。選手たちは朝から夜までめいっぱいセーリング漬けの毎日を過ごします
日本セーリング連盟オリンピック強化委員会の宮本貴文委員長。自身もJ/24全日本選手権優勝、世界選手権出場など経験豊富なセーラーです。東京五輪が終わり2022年4月から新体制でオリンピックへ挑戦します
9月17〜25日まで和歌山でおこなわれた第2期HOPE育成プログラム(第8回目)参加メンバー
CATEGORY:  DINGHYINSHORENEWSOLYMPIC