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白石康次郎、ヴァンデ出場を目指してオフショアレース再開!

 2024年世界一周ヴァンデ・グローブを目指す白石康次郎(DMG MORI セーリングチーム)は、外洋ヨットレースの本場フランスで開催されるオフショアレースに戻ってきます。緒戦は5月8日にスタートする1200マイルのシングルハンド(ひとり人乗り)レース「グイアデール・バミューダ1000レース」に出場します。(BHM編集部)

2021年2月、アジア人ではじめて世界で最も過酷な世界一周ヨットレース「ヴァンデ・グローブ」を完走した白石康次郎選手。次大会では8位以内を目標に掲げています

 今年4月、バルクヘッドマガジン編集長はフランス・ロリアンを拠点に活動するDMG MORI セーリングチームを取材しました。昨年、ヴァンデ・グローブを完走して日本へ運ばれた〈DMG Mori Global One〉は、各地でお披露目されたあと再びフランスへ。

 船は今年2月からロリアンのチームヤードでメインテナンスがおこなわれ4月下旬に進水。テストセーリングを繰り返し、これから今年第1回目となるオフショアレースに出場するという状況です。

 今回はDMG MORI セーリングチームを取材した中から、次回ヴァンデ・グローブの変更点、DMG Mori Global Oneの改造計画、そして次回大会へ掛ける白石康次郎選手の意気込みなどを紹介します。

大西洋横断、世界一周を狙うオフショアレースチームの拠点となっているラ・バース(ロリアン)。第二次世界大戦で潜水艦基地だった場所を再開発した港です

◎ヴァンデ・グローブに出場するためにはマイルを貯めなければならない

 4年に一度開催されるヴァンデ・グローブは2024年11月10日にスタートします。この大会に出場するには多くのハードルがあり、それをクリアした選手だけがスタートラインに立つことができます。この出場資格を得るための戦いが2022年から始まるのです。

 まず、次回大会の大きな変更点として、出場艇数が40艇に増えたことがあげられます。これは前大会の成功を受けて新しい選手が参入すること。また、すでに建造が進んでいる新艇計画から参加艇増加が見込まれているからです。

 現在、あたらしく船を建造しているのは前大会優勝のヤニック・ベスタベンをはじめ14艇。これら「新艇組」にはヴァンデ・グローブ出場資格が与えられます。

 2019年建造のDMG Mori Global Oneは新艇でなくなるため、他選手と同様に大会主催者が規定する資格レースに出場する必要があります。この資格レースは次の通りで、このうち2つのレースに出場しなくてはなりません。

2022年 ヴァンデ・アークティック(3600マイル)
2022年 ルート・デュ・ラム(大西洋横断)
2023年 トランザット・ジャクヴァーブルのリターンレース(大西洋横断)
2024年 トランザットCIC(大西洋横断)
2024年 ニューヨーク・ヴァンデ・レサーブル(大西洋横断)

 8日にスタートする「グイアデール・バミューダ 1000レース」は、今年最大級のオフショアレース「ルート・デュ・ラム」の予選になっているため、ヴァンデを狙う多くの選手は「グイアデール・バミューダ 1000レース」に出場することになります。

 それではヴァンデ・グローブのエントリーが上限を超えてしまった場合はどうなるのでしょうか?(※正確には1つ主催者権限のワイルドカードがあるために上限39艇となります)

 その場合は指定大会で走行距離(マイル)をより多く獲得した順番に資格が与えられます。つまり、大会2年前ではありますが、マイルを確保するためにより多くのレースに出場する必要があるのです。

【グイアデール・バミューダ 1000レースとは?】IMOCA60によるシングルハンド・オフショアレース。フランス・ブレストをスタートしてアイルランド南西端のファストネット、大西洋のウェイポイント(ガリマード)を回航してブレストへ戻る1200マイルの大三角形コース。24艇がエントリーしています。フィニッシュは5月14日の予定
グイアデール・バミューダ 1000レースのプレイベント、スピードランに挑戦するDMG Mori Global One。本レースは5月8日現地時間14時にスタートします
DMG MORI セーリングチーム。ヤードの主要メンバーは、日本、フランス、イタリア、アルゼンチン、スペインといった多国籍で構成されていています。飛び交う言葉はフランス語と英語が中心

◎白石康次郎選手に聞いた世界一周ヴァンデ・グローブまでの道のり

「前回のヴァンデ・グローブと大きく変わるのは、ぼく自身のカラダだと思う。スタートの時には57歳になっている。ケガをすると回復に時間がかかるし、むかしと違って体の使い方を考えながらレースすることになる。レース中に作業する時は時間がかかってもしっかり安定した状態でやらないといけない。そのために今は食事を考え、ケガをしない体づくりをしています」(白石)

 前回のヴァンデ・グローブ直前、53歳の時に大動脈瘤(心臓)の大手術をしたこともあり、身体のメインテナンス、体づくりをおこたらない白石選手。実際にロリアンの宿舎にはトレーニングマシンがおかれ、専門のトレーナーによる週2回トレーニングをおこなっています。

 また、DMG Mori Global Oneの改造にしても安全にスピードをあげるための改造と作業の快適性を重視した内容が求められています。

 DMG MORI セーリングチームでは、今回からテクニカルディレクターの役職を設け、船にロードセンサー等の計測器を設けてデータを数値化。また、VPLP社のソフトを用いたシミュレーションで船のパフォーマンスをあげる計画が進んでいます。

 大きな改造のポイントとしては、第1にバウ形状の変更。これは波に叩かれやすい外洋のコンディションに対応したもので、バウ部分をぶった切って形状そのものを作り変えてしまうという大胆な計画です。

 もうひとつはフォイルの位置の変更。これも大掛かりな改造計画で、現状のフォイルを前方に移動されるというものです。いずれの改造も今年のレースでデータを取り、冬のドッグイン時期から改造を開始する予定とのこと。

 改造が終わる来年の夏、そして再来年のヴァンデ・グローブでは、あたらしく生まれ変わったDMG Mori Global Oneの走りが期待できそうです。

バウ形状、フォイル位置の変更など大改造が計画されているDMG Mori Global One。またコクピットまわりも白石選手が快適に動けるように変更する予定とのこと
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